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売掛金の残高が合わない原因と対策

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フリーランスの経理部長が答える!経理のお悩み相談室

さまざまな会社を見てきた「フリーランスの経理部長」が、日常的によくある経理社員のお悩みについて相談を解決

経理を担当していると売掛金と入金が合わないことがあります。通常は取引先が月末締翌月末払いであれば、前月の売掛金残高は月末に入金されます。前月の売掛金は消込みされ、売掛金残高は当月請求した分だけになるはずです。
しかし実務では売掛金の残高が合わないことがしばしば発生します。

売掛金が合わない原因はさまざまですが、自社だけでなく取引先の処理により差異が生じることもあります。入金が売掛金より少なければ検収遅れのように感じられるかもしれませんが、反対に入金が多いというケースもあり、場合によっては売掛金がないのに入金されることもあります。

今回は売掛金の残高が合わない原因と処理方法、対策法について詳しく解説します。

売掛金とは

売掛金とは商品の販売やサービスの提供などの営業取引から発生する未収金で、1年以内に回収が見込まれるものをいいます。会社同士の信用に基づき将来の支払いを約束された取引です。

商品を納品したと同時に現金を受け取れば発生しない勘定科目で、「掛け」や「掛け売り」の場合に発生します。簡単にいうと「販売代金を受け取る権利」を売掛金という勘定科目で管理するイメージです。

よく似た勘定科目に未収入金があります。こちらは営業活動以外の取引に基づいて発生した未収金で明確に分けて管理します。

売掛金が合わないときは?原因は?

売掛金が合わないときは必ず原因を確認して対応しましょう。できれば月次単位で処理していくのがベストです。

対応が早ければ長期に未回収となることを避けられますし、場合によっては売掛金と入金の不一致から取引先の経営状況の悪化に気づくこともできます。

月々対処していけば、決算時に監査法人が取引先に送付する残高確認書で自社の売掛金と取引先の買掛金の数字が合わず、監査法人から差異に対する質問を受けて慌てることがなくなるからです。

売掛金が合わない原因にはいくつかのパターンがありますので、わかりやすく説明していきます。

原因1:売上の計上漏れ

営業取引による売上が正しく計上されていない場合は売掛金の計上漏れとなり、取引先からの入金が多くなります。
月末日に商品を納品して翌日に売上処理する場合に起きやすく、売上計上の基準日を納品日ではなく誤って処理日にしてしまうパターンです。

原因2:請求間違い

請求書の転記ミスや分割請求する場合の計算ミスにより発生します。取引先に指定請求書があり請求書を作り変えるときは要注意です。同月に複数枚に分割して請求書を発行する場合で合計額と売上額の検算をしていないときに起きやすい間違いです。

原因3:取引先の検収漏れ

入金が少ない場合は取引先の検収漏れが考えられます。月遅れで入金してもらえればよいのですが、請求書の紛失や内容の誤りにより支払いに回らないことも考えられます。入金が遅れていることを営業担当にフィードバックしておきましょう。営業が取引先から入金遅れの理由の連絡を受けているかもしれません。

原因4:売掛金の入金時の消込み間違い

売掛金は請求書単位で振込まれてきません。月締めでまとめて入金されます。売掛金と入金が一致していれば問題ないのですが、合わない場合はどの請求書が未入金なのか特定する必要があります。間違えて売掛金を消込むと、翌月以降に売掛金が合わなくなります。

たとえば前月10万円(27日請求)・20万円(28日請求)・30万円(3日請求)の3通の請求をしているとします。

当月入金が30万円であったため10万円・20万円を消込します。今月35万円(20日請求)の1通の請求をします。

翌月入金が55万円であったなら、売掛金の残高明細は30万円と35万円で消込むことができず消込み間違いがわかります。同時に10万円の売掛金が2カ月も回収できていないことも発覚します。原因3の取引先の検収漏れの疑いです。

売掛金の消込みを誤ると他の原因を隠してしまいます。請求日を考慮し、支払明細書がある場合は支払内訳を確認しながら慎重に処理しましょう。

原因5:消費税の端数の処理方法による差異

消費税の端数によって差異が生じることがあります。消費税の端数の差異は円未満を切上げ・切捨て・四捨五入など端数処理の方法によって変動します。これは自社と取引先の消費税の計算方法の違いによる差異なので仕方ありません。入金処理時に相殺処理します。

原因6:売掛金と売上外の入り繰り

売掛金と売上外の債権が入り繰りすることがあります。販売リベートなど明らかに雑収入とわかるものは問題ないのですが、取引先指定の研修で費用は取引先負担だが申込は自社で行い立替金が発生している場合などです。
この場合は同じ取引先に売掛金と立替金を請求することになり、立替金を誤って売上と認識して売上計上してしまうことがありますので注意が必要です。

原因7:締日の違いによる差異

締日の違いにより売掛金と入金額に差異が発生することがあります。これは個々の会社で締日が決められるので仕方のないことです。そもそも売掛金が合わないというのは自社の認識で、取引先は締日で正しく処理しているからです。


売掛金の残高が合わない原因は以上のようなことが考えられます。続いて対処方法を説明していきます。


売掛金が合わない場合の対処方法

売掛金が合わない原因によっては自社で対処しなければならない場合があります。具体的な処理方法と仕訳例を解説します。

消費税の端数の処理方法

消費税の端数は入金処理時に仮受消費税で相殺して処理します。

【入金が少ない場合の仕訳例】

借方 貸方
預金
仮受消費税
299,999
1
売掛金
 
300,000
 
【入金が多い場合の仕訳例】
借方 貸方
預金
仮受消費税
300,001
▲1
売掛金
 
300,000
 

売掛金と売上外の債権が入り繰りしていた場合の処理方法

わかった時点で正しい勘定科目に振替します。決算までには必ず解消しましょう。

【売掛金が少ない場合の仕訳例】

売掛金を増やし未収入金を減らします

借方 貸方
売掛金 10,000 未収入金 10,000
【誤って立替金を売掛金として処理した場合の仕訳例】

立替金を増やし売掛金を減らします

借方 貸方
立替金 10,000 売掛金 10,000

売掛金・未収入金でもない入金の処理方法

まれにですが売掛金でも未収入金でもない入金があります。多くは売上計上漏れなどの事務処理誤りですが、取引先の支払い間違いの場合もあります。

内容の確認できない入金は安易に売掛金として処理するのではなく仮受金として処理し、確認後に売掛金に充当する、取引先に返金する、などの処理をしましょう。

【仮受金の仕訳例】

借方 貸方
預金 30,000 仮受金 30,000
【仮受金を売掛金に充当する仕訳例】
借方 貸方
仮受金 30,000 売掛金 30,000
【仮受金を取引先に返金する仕訳例】
借方 貸方
仮受金 30,000 預金 30,000

売掛金残高に差異がでないようにするには

対策法1:売上計上の基準を周知する

売掛金の残高が合わない理由のひとつに社内に売上計上基準が周知されていないケースがあります。売上は「実現主義」と呼ばれる原則を用います。

出荷基準・納品基準・検収基準・引渡基準などや建設業などでは独特の基準もあります。自社の基準を周知することは売上計上漏れを防ぐ第一歩です。

対策法2:請求書の提出日と取引先締日について認識する

売掛金の残高が合わなくて大変なのは監査法人が確認する決算数字であって、月次の実務では取引先の締日と回収条件がわかれば、請求日が締日の前後か判断して回収月を調整して回収予定を立てます。

回収予定した売掛金と入金が合わない場合は、その原因を探して対応します。回収予定を立てるのは資金繰りを考えるためにも必要なことです。手作業で行うには煩雑な作業であるため、会計ソフトの導入を検討してみるのもよいかもしれません。

対策法3:ヒューマンエラーを減らす

経理の残高の誤りはヒューマンエラーによっても起こります。差異が発生したときのチェック方法をいくつかご紹介します。

・差異額と同じ金額の伝票を探す
単純な処理漏れであれば見つかります。

・差異額を2で割って同じ金額の伝票を探す
二重入力の場合は伝票が特定できます。

・差異額を9で割る
桁が間違っていたり位の入れ替わっていた場合は割り切れます。

・同じ差額がある勘定科目を探す
両方の科目が記載されている伝票が原因だと特定できます。

ヒューマンエラーを完全になくすのは難しいものです。ミスをなくすのではなく、ミスの起きない状況を作るという考え方を持つことも大切です。

まとめ

経理担当者にとって売掛金の消込作業は日々の業務です。各種の原因で残高が合わないこともあり、営業に確認したり経理担当が自分で問い合わせしたりと大きな負担になるでしょう。

しかし、正しい決算は日常の業務を礎としていますから、残高が合わないとわかればすぐに対処しなければなりません。

ヒューマンエラーを少なくするためには、手作業を減らし会計ソフトを導入するのも選択肢のひとつです。会計業務に必要な基本的な機能を搭載したクラウドソフトもあり、クラウドであれば初期投資も抑えられます。

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