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管理会計と財務会計の違いについて
自社の経営状態を可視化して健全な運営ができるようにするために必要なのが、会計作業です。会計作業は主に2つに分かれ、
・管理会計
・財務会計
とそれぞれ呼ばれます。
上記の2つの会計は性質が大きく異なりますが、経理担当になったばかりの方には違いがわかりにくいかもしれません。
そこで今回は初心者にもわかりやすく、管理会計と財務会計の違いを関連事項と合わせてご紹介していきます。
管理会計とは
管理会計は「自社の経営状況を確認するために必要な会計」を指します。
費用や収益など、会社を運営しているとお金に関する指標が目まぐるしく動きます。経営者にとって自社の経営状況を、指標をもとに判断できない状況は、適切な経営戦略を立てられず倒産にもつながりかねない致命的な問題です。
そこで管理会計により自社の経営状況を細かく把握し、「来期は売上を20%伸ばして収益を改善する必要がある」など経営判断を行えるようにします。管理会計は法律的に必須ではありませんが、健全な会社運営をするためには、できるだけ行っておくべき事柄であると言えます。
管理会計においては、
- 将来収益はどうなるか
- 資金面は安全か
- 効率的に業務が回っているか
- 部門別の成果はどうか
などを見ていきます。
将来収益はどうなるか
将来の収益まで含めて把握することで経営は現在のままでよいか、施策を追加して収益改善を行った方がよいかの判断ができます。
将来の収益を分析する管理会計は、予算作成や中期経営計画の作成などがあります。
資金面は安全か
利益がでており表面上黒字の場合でも、資金繰りが上手く行かず従業員への給料や債務を返済できない企業も存在します。こういった課題が発生するのは、資金の入出金時期が可視化できていないからです。
会社の資金繰りを把握するには、資金繰り表の作成が必要不可欠です。営業収支、投資収支、財務収支など、お金の出入りを区分管理し、現在の資金残高、将来の入出金予定を把握できるようにしておきましょう。
また、安全性分析を行うことも重要です。安全性分析とは企業の支払能力に関する分析のことで、短期安全性と長期安全性の2種類に分けられます。
資金繰りに関しては短期安全性分析を行うのが大切です。短期安全性分析は、短期的な支払い能力について分析を行い、流動比率、当座比率などを用いて分析を行います。流動比率、当座比率の算出方法は以下の通りです。
・流動比率=流動資産÷流動負債×100%
流動負債に充てることができる流動資産をどれくらい持っているかを示す比率で、200%以上あることが好ましいとされています。
・当座比率=当座試算÷流動負債×100%
企業の短期的な支払能力を示す比率で、100%を超えていれば安全性が高いと考えられます。
効率的に業務が回っているか
業績を向上させるには、自社の生産性・効率性がどうなっているかもきちんと見極めなければいけません。生産性・効率性が悪ければ、それだけ企業の成長に悪影響を与えるからです。
そこで管理会計により、効率的に業務が回っているかを可視化し経営判断に役立てます。
- 労働分配率の計算
- 費用増加と収益増加の関連性の分析
- 社員一人当たりの売上計算
こういった作業で自社の生産性・効率性などを計測します。
部門別の成果はどうか
管理会計は事業や部門ごとに分解して実施していくことが重要です。管理会計は定まった形式がありませんので、企業によっては「会社全体の売上」などの数字だけ算出していることもあるかもしれません。または、経営者が一人で判断するケースもあるでしょう。そのようなケースでは会社経営を正常に行うために必要な情報が得られなかったり、会計が客観性に欠く、もしくは経営が属人化したりするリスクがあります。
事業や部門ごとに分解し管理会計を行うことで、より細かな経営状況を把握できるようになります。
ここまで、代表的な管理会計の事例をご紹介してきましたが、管理会計は特に法律などで定められているわけではありません。自社の状況に応じて作業を追加したり、わかりやすいようにフォーマットを変えたりと柔軟な対応が可能です。
ただし経営判断が迅速に行えるよう、正確性とともにスピーディーな作業が必要になります。
財務会計とは
管理会計と同じく、財務会計も企業にとても重要です。管理会計と財務会計は、その目的が大きく異なります。
管理会計はあくまで意思決定やマネジメント・現場層の動機付け目的のために行われますが、財務会計は投資家や金融機関など外部の利害関係者に自社の業績を提示するために行われます。
財務会計は管理会計と違い、法律上作成が義務付けられています。財務会計は「企業会計原則」等のルールに準じて作成する必要があります。企業会計原則は「企業会計制度対策調査会」が1949年公表した会計の基準であり、
- 真実性の原則・・・報告内容は正しいか
- 正規の簿記の原則・・・正式な簿記で作業が行われているか
- 資本利益区別の原則・・・資本取引と損益取引を区別できているか
- 明瞭性の原則・・・誤解が発生しないわかりやすい報告かどうか
- 継続性の原則・・・処理や手続きは勝手に変更されていないか
- 保守主義の原則・・・保守的で慎重な会計処理ができているか
- 単一性の原則・・・財務諸表の内容は一つの会計帳簿に基づいて作成されているか
などを定めています。
また、財務会計は企業会計原則だけに則って作ればいいわけではありません。企業会計原則以外にも、会社法、金融商品取引法、法人税法など、さまざまな法律が関わってきます。それらに対応する書類を作成するのが、財務会計における大きな業務のひとつとなります。
まとめ
今回は管理会計と財務会計の違いなどを、関連の事項とともにご紹介してきました。
管理会計は主として意思決定やマネジメント・現場層の動機付け目的、財務会計は外部ステークホルダーへの情報開示や利害調整のために作られるものと、性質が違います。しかしどちらも、長期間健全な会社運営を行うためには必要不可欠な会計です。
※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。