更新日:2019/10/01
仕事上当たり前のものであるがゆえに、意外と詳しく知らない方が多い休憩時間。休憩時間は労働で消耗した体力を回復し、従業員のパフォーマンスを維持するためにも重要な時間です。ところが、内容によっては私たちが仕事上何気なく取っていた休憩時間が、法律に違反している可能性があります。
当たり前であるからこそ詳しい内容を知り、適切に休憩時間が取れるようになるのが会社側としても、労働者側としても望ましい職場環境です。今回は労働基準法での労働時間と休憩時間の違いや時間外労働が含まれた場合の休憩時間に関する注意点、そして会社と労働者双方がトラブル回避のために休憩時間について押さえておきたいポイントについてご紹介します。「適切な休憩時間とは何か知りたい」という方はぜひご覧ください。
労働基準法は、「適切な労働が行えるように、その基準などについて定めた法律」です。
労働基準法において労働時間とは「労働者が会社に拘束され、労働を行う時間」と定義されています。それに対して休憩時間とは「労働者が会社に拘束されず、自由に休息が取れる時間」と定義されています。
労働基準法では、労働時間に対する細かい休憩時間の取り方についても定義されています。
それによると会社は労働者へ、
と規定されています。また休憩時間は、所定労働時間内に与えなくてはなりません(労働基準法34条1項)。
休憩時間については労働時間に対して付与されるものであり、雇用形態とはまったく関係ありません。そのため正社員でもパート・アルバイトでも、会社で働いている労働者には、会社は上記の条件に合致する休憩時間を与える必要があります。
例えば、会社で定めた拘束時間が8時30分~18時だったとします。この場合、12~13時に1時間休憩時間を設ければ、実働時間は9時間30分-1時間=8時間30分になり、会社は1時間休憩時間を与えればよいので違法にはなりません。
ただし同じ労働時間で休憩時間が12時~12時45分までだった場合、実働時間は9時間30分-45分=8時間45分となり、1時間以上休憩と取らないといけないのにも関わらず45分しか休憩を与えていないので、違法となります。
また1時間休憩を設けていたとしても、休憩時間を労働終了後の17時~18時に設定していると、実働時間8時間内で休憩時間をまったく設けていない状態になり、違法になります。
会社が労働基準法に違反していると、通常まず政府から是正勧告が出されます。そして職場環境が改善されない場合は、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金の刑罰に課される危険性があります(労働基準法119条1号)。
明確に実働時間が決まっており、その中で休憩時間もきっちり取れるのであれば、理想的な職場環境ではあります。ですが実際仕事というのはそんなに単純なものではありません。ここでは休憩時間に関して、特に注意しておきたい点をご紹介します。
会社で働く上で必ずといっていいほど発生するのが、残業です。特に残業が多い職場の場合、休憩時間については細心の注意を払わないといけません。
労働基準法第36条では労使協定を行い、会社がその旨を行政官庁に届けた場合は、1日8時間を超える時間外労働、つまり残業設定が可能になります。ただし36条では残業は臨時的なもので、必要最小限にとどめなければならないと規定されており、厚生労働省が紹介している「時間外労働の限度に関する基準」に合致している必要があります。
以上が残業に関する基準です。
残業は、時間外労働と呼ばれる特殊な扱いですが、まぎれもなく労働時間の一部です。そのため既定の時間を超えて従業員に残業をさせる場合は、会社側はその残業時間も含めて休憩時間を付与する必要があります。
例えば9時~17時45分までが拘束時間で、実働時間内に45分休憩時間を設けている場合は8時間45分‐45分=8時間の労働時間となり、違法にはなりません。しかし社員が急遽1時間残業しなければならなくなったとします。すると実働時間は8+1=9時間となり、1時間以上休憩時間を取らないと違法になってしまいます。
特に残業時間が多い職場の場合は、休憩時間を労働基準合致のぎりぎりで設けていると残業発生時に違法状態となる可能性があります。「残業が多いが、休憩時間は気にしていなかった」という方は、一度自社が残業に対して適切な休憩時間を設定できているかをチェックしてください。
コールセンターなど、休憩時間中の対応の必要性が出てくる職種も数多くあります。このような場合も休憩時間に関して注意が必要です。
休憩時間というのは、基本会社に拘束されずに従業員が自由に使えます。しかし会社側の都合で拘束が発生する場合、その時間分はたとえ休憩時間中であっても労働時間とみなされます。つまり休憩時間に急な対応をした後、対応時間に対して追加で休憩時間が設けられない場合、会社は労働基準法に違反した状態になります。
休憩時間中の応対はありがちなケースで、短い時間だと「少ししか削っていないから追加で休憩を要求しなくても大丈夫だろう」などと思ってしまうかもしれません。しかし労働基準法では1分でも休憩時間が合致していないと違法になるので、こういった考え方は本来避けたほうがよい、ということになります。
労働基準法では、例えば1時間の休憩であれば1回目休憩45分、2回目休憩15分と、細切れに休憩時間を設ける方法も認められています。ただし余りにも細切れにするのはよくありません。
例えば極端な話、労働時間中に5分の休憩を12回入れるような行為は、従業員が合理的に休めない体系になっているとして違法になる可能性があります。また従業員から「自社の休憩時間分割の方法には合理性に欠けている」との声が多数あれば、会社側としては従業員と改善に関する話し合いを行う必要性が出てきます。
ここからは、会社と労働者間でトラブルにならないように、休憩時間について押さえておきたいポイントを解説します。
会社側としては、急な残業にも備えられるよう、はじめから従業員の休憩時間を少し余分に設定しておくと安心です。
例えば拘束時間を9~18時、12~13時までの1時間休憩としている会社も多いですが、そこには「万が一少し残業が発生して実働時間が8時間を超えても、基本拘束時間内で1時間休憩を取らせて違法にならないようにしておく」という会社側の考えも影響しているのです。
従業員としてはもし休憩時間がぎりぎりだと思う場合、「残業も考えて、最初から少し休憩時間を増やす体制にした方がよい」として上司に相談してみるのもよいかもしれません。
当たり前のように感じるかもしれませんが、労働者の方では休憩時間中しっかり休むことが重要です。
「5分くらいだから休憩時間を延ばす必要はない」などと思わずに、担当者に「5分間延長して休みます」などとはっきり言えるのが本当はよい方法だと言えます。後々会社が労働基準法に違反しているとして是正勧告を受けないためにも、労働者も休憩時間に対してはしっかり気を配っておきましょう。
休憩中に仕事することになり、休憩時間の管理が煩雑にならないようにするにはシフト制などの導入も重要です。シフト制であれば例えば12時~13時と13~14時休憩など、休憩のパターンを従業員ごとに変更したりできます。どの時間帯でも誰かがきっちり対応できるような体制にすれば、休憩時間中各従業員はしっかり休みを取れます。
シフト制などを導入するには、会社側と従業員が労使協定を結び、その旨を行政官庁に届け出る必要があります。会社側としては休憩時間の管理が煩雑にならないように、労使協定を利用した確実な休憩時間の取り方を模索しておきたいものです。
今回は労働基準法における休憩時間の考え方や注意点、そして会社と労働者双方がトラブルを起こさないための休憩時間に関するポイントをご紹介しました。
休憩時間に対してどうしても会社側で改善がなされない場合は、労働者は労働基準監督署や弁護士などに相談して状況を改善する必要が出てきます。そういった事態になる前に、きちんと適切な休憩時間が取れる職場環境が整うよう、会社側も従業員側も注意しておきたいものです。
ぜひ正しい休憩時間の取り方を理解して、気持ちよい環境で仕事できるようにしておきましょう。