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労災保険とは? 労災保険料の計算方法と、申告方法について

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企業の労働者に対する責務でもある労災保険料の支払い。職種などで計算方法も異なり、いろいろと難しい面もあります。今回は労災保険とはそもそも何か、そしてその計算方法や申告方法などを、分かりやすく解説していきます。

就業中、いつ労働者が災害に見舞われるか分かりません。会社側は万が一、労働者が就業中もしくは通勤中の病気やケガなどの被害にあった場合、補償を行う義務があります。そしてその義務を保険という形で制度化したのが「労災保険(労働者災害補償保険)」です。

労災保険は業種ごとに計算方法が異なり、ややこしい面があります。しかし正しく労災保険やその計算方法などについて理解することは、労災保険料を払う企業にとって重要です。

今回は労災保険とはそもそも何か、そしてその計算方法や申告方法などを、分かりやすく解説していきます。「労災保険の概要や、計算方法などを詳しく知っておきたい」という方は、ぜひご覧ください。

労災保険とは

労災保険とは、労災が発生して労働者が被害を受けたときに、確実に補償が行われるように設けられている保険制度です。

企業は労災保険料として保険金を積み立てておくことで、万が一労働者が労災に見舞われても、かかる費用を保険金として支払えます。労災保険は企業の義務であり、1人でも労働者を雇用している場合は加入する必要があります。また事業主は事業開始後10日以内に「保険関係成立届」を、管轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

労災保険は労働保険の一種であり、労働保険にはもう一つ「雇用保険」という保険制度があります。

雇用保険とは、一定期間以上の雇用や労働時間を条件に働いている従業員が雇用を失ったときに、再就職の間にかかる費用を補償する意味合いで設けられている保険制度です。具体的には基本手当(失業手当)や訓練等給付費など、雇用を失った方をサポートするための手当がいくつか用意されています。雇用保険は分担型であり、企業が保険料の3分の2、従業員が保険料の3分の1をそれぞれ負担します。

これに対し労災保険は、企業が被害回復にかかる費用を補填するために用意されている保険制度です。そのため労災保険は労災発生の原因を作る企業が全額を負担する必要があり、労働者は保険料を負担する必要はありません。

ちなみに事業主や法人役員などは労働者とみなされず、労災保険に加入できません。ただし中小企業の事業主で労働者と同じように働く場面が多いなど、一定の条件をクリアしている場合は労災保険の特別加入制度が摘要されます。

なお保険料を納付しないと督促状が届きます。企業は督促状指定の納付期限以内に必ず労災保険料を納めなければいけません。納めない場合は延滞金や、最悪の場合保険料額の10%を追徴金として支払わなければならないので、労災保険料はスムーズに納付してください。

労災保険料の計算方法について

ここからは、労災保険料の計算方法についてご紹介します。

1.賃金総額を算出する

2.自社の労災保険料率を確認する

3.賃金総額に労災保険料を掛ける

1.賃金総額を算出する

賃金総額とは労働者に払った賃金の総額のことで、該当年4月1日~翌年3月31日の期間をもとに出していきます。通常の給与だけでなく

・賞与(ボーナス)
・通勤手当、残業手当など各種特別手当

も含めて計算を行っていきます。ただし

・退職金(賞与や給与などに前もって退職金を入れ込んだ場合は賃金総額の対象)
・役員報酬
・出張・宿泊費

などは賃金総額に含まれないので、注意してください。

派遣労働者の場合は派遣元事業所が労災保険料を支払うので、計算に入れる必要はありません。他社に出向している社員がいるときは、職場を提供している出向先企業が労災保険料を支払います。こういった点にも注意して賃金総額を算出しましょう。

ちなみに請負による建設の事業では特例として、「発注者から受け取る請負金額合計×労務費率」の計算方式で賃金総額を算出します。

労務費率は、以下のように、事業ごとに細かくパーセンテージが決まっています。

・水力発電施設、ずい道等新設事業 ・・・19%
・道路新設事業・・・ 19%
・舗装工事業・・・ 17%
・鉄道又は軌道新設事業 ・・・24%
・建築事業(既設建築物設備工事業を除く。)・・・ 23%
・既設建築物設備工事業・・・ 23%
・機械装置の組立て又は据付けの事業
  組立て又は取付けに関するもの・・・ 38%
  その他のもの・・・ 21%
・その他の建設事業 ・・・24%

下請けを複数通して行われる建設事業では、下請けに雇用されている分まで含めて、元請負人が全従業員の賃金総額を把握して計算するのは困難です。そこで特別に労務費率を用いた賃金総額計算が認められています。

2.自社の労災保険料率を確認する

賃金総額を算出した後は、自社の労災保険料率を確認します。

労災保険料率は、厚生労働省が発表している労災保険料率表をもとに確認します。各業種で労災が起こった場合の危険度が異なるため、労災保険料率も業種ごとに異なります。
実際に労災保険料率を見ていくと、例えば卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業であれば3、輸送用機械器具製造業であれば4、木材又は木製品製造業は14と、業種ごとに大きな差があります。

ここで注意したいのが、労災保険料率の分母は100でないことです。通常パーセンテージ計算というとつい分母は100と思いがちですが、労災保険で使うパーセンテージ系の指標はすべて1000が基本になります。例えば卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業の実際の保険料率は1000分の3となり、0.3%です。

桁数がずれてしまわないように、労災保険の計算を行うときは分母が基本1000分の1単位となるのを忘れないようにしておきましょう。また計算上端数が出る場合がありますが、小数点はすべて切り捨てで計算するのでよく覚えておきましょう。

ちなみに保険料率は3年に1度見直しが行われるので、毎年同じ率になるとは限りません。次回は2021年に改定が予定されているので、今後労災保険料を払うときは要注意です。

3.賃金総額に労災保険料を掛ける

最後にこれまでの手順で算出した賃金総額に、労災保険料率を掛け合わせ、納付すべき労災保険料を算出します。

例えば自社が飲食業であり、正社員が5人で月給30万円、パート・アルバイトが4人で月給15万円だとします。ボーナスなど他要素を考えないでよければこの場合、

・(5×30万円+4×15万円)×12×0.003=7万5600円

が労災保険料となります。

労災保険はどうやって申告する?

労災保険は、前述した雇用保険と合わせて1年に1度納付を行います(年度更新)。ただし一部の業種は労災保険と雇用保険を別々に納付します。

5月下旬に労働局から申告書が届くので、それに合わせて申告作業を行います。まず確定保険料と概算保険料の計算を行います。確定保険料では前年度4月1日から3月31日までの賃金総額を、概算保険料では今年度4月1日から3月31日までに予定される賃金総額をもとにして、労災保険料と雇用保険料を計算していきます。


労働保険とは前払い制で、昨年度支払った労働保険料が、今年度の確定保険料とどのくらい差額があるかによって、下記のように対応が変わってきます。

・前年支払った労働保険料より確定保険料が多い→前年度不足額と今年度労働保険料を合算
・前年支払った労働保険料より確定保険料が少ない→余剰額を今年度労働保険料に充当
・余剰額があまりにも多く、充当しても余る→還付請求を行う

実際に支払う額は、上記に加えて「一般拠出金」を追加することで決定します。一般拠出金とはアスベストの被害を受けた方の救済手当として使われるお金で、各企業が労働保険料納付の際にいっしょに負担します。一般拠出金は、「賃金総額×1000分の0.02」で算出できます。

計算が終わり申告書への記入もすべて完了したら、所轄労基署・労働局、金融機関へ申告書と労働保険料を送付し、労働保険料を納付します。申告及び納付期間は毎年6月から7月10日です。

ちなみに今年度概算保険料が40万円以上になると、3回分納も可能です。まとめて支払えないという場合は分納も検討しましょう。

まとめ

今回は労災保険の概要や計算方法、そして申告方法を解説しました。

企業の労働者に対する責務でもある労災保険料の支払い。職種などで計算方法も異なり、いろいろと難しい面もありますが、慣れてくればスムーズに計算できるようになるはずです。

ぜひ計算方法も理解して、余裕を持った納付ができるように準備してください。