更新日:2026/08/20
この記事では、ストレスチェックにおける紙とWebそれぞれのメリット・デメリット、コストや業務負担の違いを徹底比較します。記事を読むことで、自社に最適な実施方法が明確になり、Web化へのスムーズな移行手順も分かります。結論として、担当者の手間削減やセキュリティ向上、受検率アップの観点からWeb実施への移行がおすすめですが、PCを持たない従業員がいる企業では「紙とWebの併用」ができる代行サービスを選ぶことが成功の鍵となります。実施方法に悩む人事・労務担当者の方はぜひ最後までご覧ください。

年1回以上の実施が必要なストレスチェック。このストレスチェックの実施方法には、大きく分けて「紙」による方法と「Web(システム・アプリ)」による方法の2種類が存在します。
実施にあたっては、厚生労働省が公表しているストレスチェック制度導入マニュアルに示されている「職業性ストレス簡易調査票」などの標準的な質問票を用いるのが一般的です。企業は自社の職場環境や従業員の働き方に合わせて、紙のマークシートや質問票を配布・回収する方式か、PCやスマートフォンからアクセスして回答するWeb方式かを選択、あるいは併用して運用することになります。
それぞれの実施方法には明確な特徴があり、自社の従業員のITリテラシーや労働環境に最適な方法を選択することが、受検率の向上や円滑な運用につながります。ここでは、紙とWebそれぞれの基本的な特徴について解説します。
紙によるストレスチェックは、印刷された質問票やマークシートを従業員に直接配布し、手書きで回答してもらった後に回収・集計する従来からある方法です。
最大の特徴は、PCやスマートフォンなどのIT端末を持たない従業員や、機器の操作に不慣れな従業員でも迷わず簡単に受検できる点にあります。例えば、製造業の工場勤務者、建設業の現場作業員、店舗での接客スタッフなど、業務中に1人1台のPC環境が割り当てられていない職場において、非常に有効な手段となります。
一方で、実施事務従事者や人事担当者にとっては、質問票の印刷・封入・配布から、未提出者への督促、回収した回答用紙のデータ入力や読み取り(OCR処理)、産業医への結果提供など、物理的な作業が多く発生するという側面を持っています。また、従業員が回答する際に、記入漏れやマークミスといったヒューマンエラーが起こりやすい点も紙ならではの特徴です。
Webによるストレスチェックは、クラウド型のシステムや社内イントラネットを利用し、従業員が自身のPCやスマートフォン、タブレット端末から専用画面にアクセスして回答する方法です。
この方法の大きな特徴は、質問票の配布・回収の手間が省け、回答データがリアルタイムかつ自動的に集計されるため、担当者の業務負担を大幅に削減できる点です。システム上で必須項目を設定できるため、記入漏れなどのエラーを未然に防ぐことも可能です。
また、従業員側にとっても、場所や時間を選ばず、通勤時間や休憩中など自身の都合の良いタイミングで受検できるというメリットがあります。さらに、受検後すぐに自身のストレスプロフィールや判定結果を画面上で確認できるシステムが多く、セルフケアへの意識づけがスムーズに行えるのもWeb方式ならではの強みです。リモートワーク(テレワーク)を導入している企業や、全従業員にPCやスマートフォンが貸与されているオフィスワーク中心の企業に特に適しています。
紙とWebの基本的な特徴を以下の表に整理しました。具体的なコストや業務負担の比較については、次章以降で詳しく解説します。
| 実施方法 | 主な回答媒体 | 特徴・適した環境 | 担当者の集計作業 |
|---|---|---|---|
| 紙 | マークシート、印刷された質問票 | IT機器がない現場や操作に不慣れな従業員が多い職場に適している | 手動入力や専用機器での読み取りが必要 |
| Web | PC、スマートフォン、タブレット | テレワーク導入企業や、1人1台の端末がある職場に適している | システム上で自動的に集計される |

ストレスチェックを導入・運用するにあたり、実施方法を「紙(マークシートなどの調査票)」にするか「Web(クラウドシステムやアプリ)」にするかは、担当者にとって非常に重要な選択です。それぞれの方法には明確な違いがあり、企業の規模や従業員の働き方によって最適な選択肢は異なります。
まずは、紙とWebの違いを一目で把握できるよう、主要な比較項目を表にまとめました。
| 比較項目 | 紙(調査票・マークシート) | Web(システム・アプリ) |
|---|---|---|
| 実施コスト | 印刷代、郵送費、データ入力費が人数分発生 | 初期費用+システム利用料(定額制や従量課金) |
| 担当者の業務負担 | 配布・回収・集計の手間が大きく負担が重い | 自動化機能が多く負担を大幅に削減可能 |
| 受検率・回答しやすさ | PCやスマホを持たない従業員でも回答しやすい | 端末があればいつでもどこでも手軽に回答可能 |
| セキュリティ・情報保護 | 紛失・盗難・誤配布などの物理的リスクがある | アクセス制限やデータ暗号化により安全性が高い |
ストレスチェックの実施にかかるコストは、紙とWebで料金体系の構造が大きく異なります。
紙による実施の場合、調査票の印刷代、各拠点への郵送費、回収後のデータ入力費など、従業員の人数に比例して変動費が増加していくのが特徴です。また、未受検者への再配布や封筒の準備など、目に見えにくい雑費もかさむ傾向にあります。
一方、Webによる実施では、システムの初期導入費用と月額または年額の利用料(ライセンス費用)が主なコストとなります。近年はクラウド型のサービスが主流となっており、1ユーザーあたり数百円程度で利用できるものも増えています。小規模な企業では紙の方が安価に済むケースもありますが、従業員数が数十名〜数百名規模になると、Webシステムを導入した方がトータルコストを安く抑えられる可能性が高くなります。
ストレスチェックの実施において、最も大きな違いが出るのが人事や総務などの担当者の業務負担です。
紙で実施する場合、調査票の印刷・封入・配布から始まり、回収状況のチェック、未受検者への督促、マークシートの読み取りやデータ化など、膨大な手作業が発生します。さらに、集団分析のレポート作成や、労働基準監督署へ提出する報告書の作成にも手間がかかります。
対してWebシステムを利用する場合、従業員への一斉メール配信で受検案内が完了します。回答状況はリアルタイムでシステム上に反映され、未受検者への督促メールも自動で送信できるため、担当者の業務負担を劇的に削減できます。また、高ストレス者の判定や集団分析の結果も即座にグラフ化されるため、産業医との連携や職場環境の改善に向けたアクションへスムーズに移行できます。
ストレスチェックは、高い受検率を維持することが推奨されています。受検率を高めるためには、従業員にとっての「回答のしやすさ」が鍵となります。
紙の調査票は、工場や建設現場、店舗の販売員など、一人一台のパソコンや社用スマートフォンを支給されていない従業員が多い職場で強みを発揮します。IT機器の操作に不慣れな従業員であっても、直感的に回答できる点がメリットです。
一方、Webでの実施は、オフィスワーカーやテレワーク(リモートワーク)中心の企業に最適です。パソコンや個人のスマートフォンから、通勤時間や休憩中などのすき間時間を利用していつでも回答できるため、従業員の心理的・時間的なハードルが下がり、結果として受検率の向上につながりやすくなります。
ストレスチェックの結果は機微な個人情報であり、厳格な取り扱いが求められます。
紙媒体の場合、最大の懸念点は物理的なリスクです。配布時や回収時に別の従業員の調査票が混ざってしまう誤配布のリスクや、回収ボックスからの盗難、郵送中の紛失といったヒューマンエラーによる情報漏えいの危険性が伴います。施錠できるキャビネットの用意など、保管場所の確保も必要です。
Webシステムの場合、データはクラウド上の堅牢なサーバーで保管されます。通信の暗号化や二段階認証、閲覧権限の厳格な設定により、第三者による不正アクセスや情報漏えいのリスクを最小限に抑えることができます。実施事務従事者や産業医など、限られた権限を持つ人物だけが安全にデータへアクセスできるため、コンプライアンスの観点からもWebの方が優れていると言えます。
【関連記事:ストレスチェックは意味ない?形骸化する原因と意味のあるものに変える方法】
ストレスチェックを従来の紙媒体からWebシステム(クラウドサービスなど)へ移行することには、業務効率化をはじめとする多くの利点があります。一方で、従業員の就業環境によっては注意すべき点も存在します。ここでは、Web化に伴うメリットとデメリットを詳しく解説します。
| 比較項目 | Web化のメリット | Web化のデメリットと注意点 |
|---|---|---|
| 業務負担 | 質問票の配布・回収・集計が自動化され、担当者の負担が激減する | 導入初期のシステム設定や、操作方法の問い合わせ対応が発生する |
| コスト・管理 | 印刷代や郵送費が削減され、5年間の結果保存スペースが不要になる | システムの初期導入費用や月額・年額の利用料金がかかる |
| 受検者対応 | スマートフォン等でいつでも回答でき、結果も即時確認できる | PCやスマートフォンを持たない従業員への代替措置が必要になる |
紙からWebへ移行することで、実施事務従事者(人事労務担当者など)と受検者(従業員)の双方に大きなメリットをもたらします。
紙によるストレスチェックでは、質問票の印刷、封入、配布、回収、そしてデータ入力といった膨大な手作業が発生します。Web化することでこれらの工程はすべてシステム上で完結し、集計や集団分析の自動化により担当者の業務負担を劇的に削減できるのが最大のメリットです。また、労働基準監督署へ提出する報告書の作成や、高ストレス者に対する産業医面接指導の対象者抽出もスムーズに行えます。
従業員数が多い企業ほど、紙の印刷代や事業所間での郵送費といった物理的なコストが膨らみます。Webシステムを導入すれば、これらの費用を大幅にカットできます。事業者にストレスチェック結果の5年間保存が義務付けられていますが、Webシステムであれば物理的な保管スペースや施錠管理の手間が不要になり、情報漏えいリスクの低減にもつながります。
従業員にとっても、Web受検は大きな利点があります。スマートフォンやパソコンから隙間時間を利用して簡単に回答できるため、受検率の向上が期待できます。また、回答完了と同時にシステム上で自身のストレスプロフィール(結果)を確認できるため、従業員自身のセルフケア意識を迅速に高める効果が期待できます。
多くのメリットがある一方で、企業の環境によってはWeb移行に伴うハードルも存在します。導入前に以下のデメリットや注意点を把握しておくことが重要です。
各従業員の私用スマートフォンでの回答を許可すれば問題は軽減されますが、工場での製造業務や店舗での接客業務など、一人一台のパソコンや社用スマートフォンが貸与されていない職場環境では、Webでの一斉受検が困難になる場合があります。また、IT機器の操作に不慣れな従業員にとっては、ログイン操作自体がストレスとなり、受検率が低下する恐れがあります。こうした環境では、共有PCの設置や、一部のみ紙での実施を残すなどの工夫が求められます。
Webシステムを新たに導入する際、従業員のメールアドレスや所属部署などのマスタデータ登録、システムの初期設定を行う手間が発生します。また、従業員に対して新しい受検方法やログイン手順を分かりやすく周知する期間と労力が必要です。パスワード忘れなどの問い合わせ対応が一時的に増加する可能性も考慮し、事前にマニュアルを整備しておくことが大切です。
【関連記事:ストレスチェックの実施状況を徹底解説|最新データから見る課題と企業の対策】

ストレスチェックの実施方法として、紙とWebのどちらを採用すべきかは、企業の規模や従業員の受検環境、ITリテラシーによって大きく異なります。自社の働き方やインフラ環境に合わせた最適な実施方法を選択することが、受検率の向上や実施事務従事者の円滑な運用につながります。ここでは、それぞれの方法がどのような企業に向いているのかを詳しく解説します。
紙によるストレスチェックは、主に1人1台のPCや社用スマートフォンが支給されていない環境に適しています。例えば、製造業の工場ラインで働く方や、建設現場の作業員、小売業・飲食業の店舗スタッフなど、業務中にデジタルデバイスに触れる機会が少ない従業員が多い企業が該当します。
また、従業員の年齢層が高く、Webシステムの操作や画面上での入力に不安を感じる方が多い場合も、直感的に回答できる紙のマークシート方式が安心です。
すべての従業員が負担なくストレスチェックを受検できる環境を整えることが制度の趣旨として重要です。そのため、社内のITインフラが未整備な場合は無理にWebへ一本化せず、紙での実施を選択肢として残すのが賢明です。
Webによるストレスチェックは、従業員の大半が日常業務でPCやスマートフォンを使用している企業に最適です。特に、IT企業やオフィスワーク中心の企業、リモートワーク(テレワーク)を積極的に導入している企業では、場所や時間を問わずに受検できるWeb実施の強みを最大限に活かすことができます。
さらに、従業員数が多い大企業や、全国に複数の拠点・支店を持つ企業にとっても、Webシステムは非常に有効です。紙の配布や回収といった物理的なやり取りが発生しないため、未受検者の把握や管理が容易になります。社内でペーパーレス化やデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している企業方針とも合致するため、インフラが整っている場合はWebでの実施が強く推奨されます。
以下の表は、企業の特徴や従業員の受検環境をもとに、紙とWebのどちらが適しているかの基準を整理したものです。自社の現在の状況と照らし合わせて、実施方法を検討する際の参考にしてください。
| 企業の特徴・受検環境 | 紙での実施が向いているケース | Webでの実施が向いているケース |
|---|---|---|
| PC・スマートフォンの支給状況 | 共有PCのみ、またはデバイスが未支給 | 従業員1人につき1台支給されている |
| 主な業務形態と働き方 | 工場での製造、現場作業、店舗での接客業務など | オフィスワーク、リモートワーク(テレワーク) |
| 従業員のITリテラシー | PC操作やWebシステムに不慣れな従業員が多い | 日常業務でチャットツールやシステムを利用している |
| 拠点数・従業員規模 | 単一拠点、または小規模で手渡しが容易 | 複数拠点に分散、または中〜大規模で配布・回収が困難 |

これまで紙で実施していたストレスチェックをWebへ移行する際、スムーズに運用を切り替えるためにはいくつか押さえておくべき重要なポイントがあります。事前の準備不足は、受検率の低下や担当者の業務負担の増加を招く恐れがあるため注意が必要です。
Web化を進めるにあたって、すべての従業員を一斉にWeb受検へ切り替えるのではなく、紙とWebを併用できるサービスを選ぶことが最大の成功要因となります。企業には、PCやスマートフォンを日常的に使用するデスクワークの従業員だけでなく、工場や店舗勤務などで一人一台の端末を持たない従業員も在籍していることが多いからです。
また、ITツールの操作に不慣れな従業員に対して無理にWeb受検を強要すると、回答への心理的ハードルが上がり、結果として全体の受検率が低下するリスクがあります。そのため、まずはWeb受検を基本としつつも、希望者や特定の部署には紙の調査票を配布できる柔軟なシステムや代行会社を選定することが重要です。
紙からWebへの移行初年度は、システムの選定や初期設定、従業員データの登録などに時間がかかります。実施予定月の3〜4ヶ月前には準備を開始し、余裕を持ったスケジュールを組むことが不可欠です。以下に、一般的な移行スケジュールの目安をまとめました。
| 時期 | 実施事項 | 具体的な作業内容 |
|---|---|---|
| 3〜4ヶ月前 | システム・代行会社の選定 | 複数社の相見積もり、機能比較、デモ画面の確認、契約手続き |
| 2ヶ月前 | 初期設定とデータ整備 | 従業員名簿(社員マスタ)の作成、組織階層の設定、システムの初期設定 |
| 1ヶ月前 | 従業員への周知・テスト | 実施期間や受検方法の案内、ログインテスト、マニュアルの配布 |
| 実施月 | ストレスチェックの実施 | 受検案内メールの一斉送信、未受検者へのリマインド配信 |
Web受検への移行に伴い、従業員への丁寧な周知徹底が求められます。特にログインIDやパスワードの取り扱い、システムへのアクセス方法については、誰もが迷わず操作できるよう、わかりやすいマニュアルを配布することが大切です。
また、個人情報の取り扱いに関する不安を取り除くことも重要です。「Web上で回答した内容が直接上司に閲覧されることはない」「結果は産業医や実施事務従事者のみが取り扱う」というセキュリティ面の安全性を明確に伝えることで、従業員は安心してありのままの回答ができるようになります。社内ポータルサイトへの掲示や、朝礼での説明、案内メールの複数回送信などを組み合わせて周知を図りましょう。
ストレスチェックのWebシステムや代行会社は数多く存在するため、自社の課題や目的に合ったサービスを見極める必要があります。単に価格の安さだけで選ぶのではなく、以下の基準を満たしているかを確認してください。
特に、英語や中国語など多言語対応が必要な外国人労働者がいる場合や、紙での受検を併用させたい場合には、それらのオプション機能の有無も重要な選定基準となります。自社の運用体制にフィットするシステムを選ぶことで、担当者の業務負担は劇的に軽減されます。

ストレスチェックの実施方法には紙とWebがあり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。コスト削減や担当者の業務負担軽減、強固なセキュリティ対策を重視する企業には、Webでの実施が圧倒的におすすめです。一方で、PCやスマートフォンを持たない従業員が多い現場などでは、紙での実施が適しています。
これからWeb化を進める企業にとって最大のポイントは、紙とWebを併用できるストレスチェックシステムや代行サービスを選ぶことです。自社の職場環境や従業員のITリテラシーに合わせて柔軟な対応ができるサービスを導入し、無理のないスケジュールでスムーズな移行を進めていきましょう。