更新日:2026/07/09
「ストレスチェックの費用は企業と従業員のどちらが負担するの?」とお悩みではありませんか。
労働安全衛生法に基づき、ストレスチェックの実施や医師による面接指導にかかる費用はすべて企業(事業者)が負担する義務があり、従業員負担は認められていません。本記事では、派遣社員など雇用形態別の負担ルールのほか、システム導入や外部委託にかかる関連コスト、見えない人件費まで徹底解説します。発生する費用全体を正確に把握し、コストを最適化しながら職場環境を改善しましょう。
企業がストレスチェック制度を導入・運用する際、「発生する費用は誰が負担すべきなのか」という疑問を抱く人事労務担当者は少なくありません。結論から言えば、ストレスチェックの実施にかかる費用は、すべて企業(事業者)が負担しなければなりません。ここでは、法律に基づく費用負担の原則や、従業員への請求の可否、雇用形態ごとの取り扱いについてくわしく解説します。
ストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10に基づく企業の法定義務です。年1回の実施が義務付けられています。
この制度の実施にかかる費用について、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」では、ストレスチェックおよび高ストレス者に対する医師の面接指導の費用は、事業者が負担すべきものと明確に定められています。これは、労働者のメンタルヘルス不調の一次予防を目的とした安全衛生管理の一環として行われるためです。
したがって、検査用紙の購入費、システムの利用料、外部委託費用、産業医や実施者への報酬など、制度の運用に直接関わる費用はすべて企業が拠出する必要があります。
前述のとおり、企業には費用負担の義務があるため、ストレスチェックの受検費用や面接指導の費用を従業員(労働者)に自己負担させることは違法となります。給与から天引きすることや、一部の費用を請求することも認められていません。
ただし、例外として従業員が費用を負担するケースが一つだけ存在します。それは、企業が指定した医師(産業医など)による面接指導ではなく、従業員自身が個人的に希望して外部の心療内科や精神科などの専門医を受診した場合です。この場合、企業が提供する法定の面接指導の枠組みから外れるため、受診にかかる診察料や交通費は従業員の自己負担(健康保険の適用)となります。
ストレスチェックの実施対象となるのは、正社員だけではありません。契約期間や労働時間の条件(契約期間が1年以上、かつ週の所定労働時間が正社員の4分の3以上)を満たす契約社員やパートタイム労働者も対象となり、その費用は直接雇用している企業が負担します。
一方で、対応に迷いやすいのが「派遣社員」の扱いです。派遣社員の場合、雇用契約を結んでいる「派遣元企業」と、実際に業務を行う「派遣先企業」が存在しますが、法律上の実施義務と費用負担の責任を負うのは雇用主である「派遣元企業」です。
雇用形態別の費用負担と実施義務について、以下の表に整理しました。
| 雇用形態 | 実施義務・費用負担者 | 対象となる条件・備考 |
|---|---|---|
| 正社員 | 雇用している企業 | すべての正社員が対象 |
| 契約社員・パート・アルバイト | 雇用している企業 | 契約期間が1年以上(見込み含む)、かつ週の労働時間が正社員の4分の3以上の場合 |
| 派遣社員 | 派遣元企業 | 派遣先企業には法的な実施義務はないが、職場環境改善の観点から集団分析を含めた実施が推奨される |
派遣先企業には派遣社員に対するストレスチェックの実施義務はありませんが、職場のストレス要因を正確に把握するためには、同じ職場で働く派遣社員も含めて集団分析を行うことが望ましいとされています。もし派遣先企業が独自の判断で派遣社員にもストレスチェックを実施する場合、その実施にかかる費用は派遣先企業が負担することになります。

ストレスチェックを企業で実施する際には、外部の業者に支払う目に見える費用だけでなく、社内で発生する見えないコストも考慮する必要があります。ここでは、ストレスチェックに関連して発生する主なコストを3つの視点からくわしく解説します。
ストレスチェックの実施にあたり、多くの企業は専門の外部機関に委託したり、専用のITシステムを導入したりします。外部委託やシステム導入にかかる費用は、受検者数やサポートを依頼する業務の範囲によって大きく変動します。一般的な費用の相場は以下のとおりです。
| 費用の種類 | 相場(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 紙媒体での実施(外部委託) | 1人あたり500円〜1,000円程度 | 質問票の印刷、配布、回収、データ入力などの作業が含まれます。 |
| Webシステムでの実施 | 1人あたり300円〜800円程度 | 初期費用が別途かかる場合がありますが、ペーパーレス化により集計や分析が容易になります。 |
| 集団分析レポート作成費用 | 1集団あたり10,000円〜50,000円程度 | 部署や年代別の傾向を分析し、職場環境改善に役立てるためのオプション費用として発生することが多いです。 |
自社の従業員数や、どこまでの業務を外部に任せるかによって最適なプランを選択することが、コストを適正化するための鍵となります。
ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定され、本人が希望した場合には、医師による面接指導を実施することが法律で義務付けられています。この面接指導にかかる費用も原則として企業が負担します。
自社で選任している産業医に依頼する場合、通常の顧問料の範囲内で対応してもらえることもありますが、別途費用が発生する契約になっているケースもあります。外部の医師にスポットで依頼する場合、1回あたり30,000~50,000円程度の面接指導費用が発生するのが一般的です。
面接指導を受ける従業員の受診時間中の賃金について、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」では、法律上当然には事業者の負担すべきものではないとされています。しかし同時に、従業員の健康確保の観点から、受診に要した時間の賃金を支払うことが望ましいと明記されています。そのため、多くの企業では就業時間内に面接指導を実施し、その間の賃金を通常どおり支払う運用を行っています。
ストレスチェックの実施には、外部に支払う費用だけでなく、社内で対応する担当者の人件費という「見えないコスト」も発生します。
実施事務従事者(人事・労務担当者や衛生管理者など)は、以下のような多岐にわたる業務を行う必要があります。
これらの事務作業にかかる担当者の労働時間は、企業にとって決して無視できない内部コストです。特に紙媒体で実施する場合や、従業員数が多い企業では、配布や回収、集計作業に膨大な時間がかかります。そのため、システムの導入費用がかかったとしても、結果的に事務作業が大幅に効率化され、組織全体でのトータルコストを抑えられるケースも少なくありません。
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ストレスチェックの実施には一定の費用負担が伴いますが、単なる法的義務の消化と捉えるのではなく、組織の課題解決に向けた投資として活用することが重要です。ここでは、費用対効果を高め、ストレスチェックを賢く運用するためのポイントを解説します。
ストレスチェックを自社内で、特に紙の調査票を用いて実施する場合、外部委託費用などの直接的な出費は抑えられるように見えます。しかし、調査票の印刷・配布・回収から、システムへのデータ入力、未受検者への受検勧奨に至るまで膨大な事務作業が発生し、人事労務担当者の人件費という見えないコストが大きく膨らむ点に注意が必要です。
以下の表は、紙ベースでの実施とクラウドシステム等を導入した場合のコストや手間の違いを比較したものです。
| 実施方法 | 直接的な費用(見えるコスト) | 事務作業の手間(見えないコスト) | 集団分析の容易さ |
|---|---|---|---|
| 紙ベース(自社実施) | 用紙代、印刷代のみで比較的安価 | 配布・回収・データ入力に多大な時間がかかる | 手作業での集計が必要となり非常に困難 |
| システム導入・外部委託 | システム利用料や委託費用が発生 | 自動集計や一斉メール配信により大幅に削減 | システム上で即座に自動生成され容易 |
長期的な視点で見ると、ITツールや外部の専門機関を適切に活用する方が、実施事務従事者の業務負担を軽減し、トータルでの費用負担を抑えられるケースが多くあります。
ストレスチェックの本来の目的は、メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)です。個人のストレス状況を把握するだけでなく、実施後に得られる「集団分析」の結果を職場環境の改善に活かすことが、組織全体のコスト最適化につながります。
部署や年代ごとのストレス傾向を可視化する集団分析を行うことで、業務負荷が偏っている部署や、コミュニケーションなどのサポート体制が不足しているチームを特定できます。職場環境を改善して従業員のメンタルヘルス不調を防ぐことは、休職者の発生や離職率の低下に直結し、結果として新たな人材の採用コストや代替要員の教育コストを大幅に削減することにつながります。従業員が健康で働きやすい環境を整えることは、中長期的な生産性向上と利益をもたらします。

ストレスチェックの実施にかかる費用は、労働安全衛生法に基づき、原則として企業(事業者)が全額負担する義務があります。従業員に費用を負担させることは法律上認められておらず、派遣社員の場合は派遣元企業に実施と費用負担の義務があります。
また、システムの外部委託費用や医師による面接指導費用だけでなく、社内の実施事務従事者の人件費といった見えないコストにも注意が必要です。単なる法令遵守にとどまらず、システムの活用で事務負担を軽減し、集団分析を通じた職場環境の改善を行うことで、結果的に組織全体の生産性向上とコスト最適化につながります。