更新日:2023/10/18
「マインドフルネス研修」という言葉を聞いたことがありますか。マインドフルネス研修は、GoogleやYahoo!、Appleなどの世界的企業が導入し、実際に一定の効果が見られるということで認知が広がった研修です。また、メルカリやSansanなどの日本企業でも研修プログラムとして取り入れるようになり、ビジネスシーンにおいて有効であると注目が高まっています。今回は、この「マインドフルネス研修」とはどのようなものか、実施するメリットや実施方法の例などをご紹介したいと思います。
そもそもマインドフルネスとは、呼吸や五感など現在の自分の体や心に意識を向け、その瞬間の自分に集中する状態のことを言います。マインドフルネスになるために瞑想を行うことが多いため、マインドフルネス=瞑想とイメージされることもありますが、瞑想はあくまでマインドフルネスな状態になるための手段であり、瞑想や呼吸法などによって過去や未来への思考を取り払い、今のありのままの自分を認知し受け入れることがマインドフルネスです。元々は、仏教の教えに由来する思想であり、東洋では瞑想による歴史があるとされていますが、近年西洋において宗教色が排除され、ビジネスシーンで用いられるスキルとして広まりました。
マインドフルネス研修は、このマインドフルネスを企業の研修として導入したものであり、内容や実施方法は様々ですが、座学や実践を通してマインドフルネスを習得していきます。マインドフルネス研修は1回で終了するものではなく、長期的に継続して行うことで身につけるものとされています。前項でも述べた通り、このマインドフルネス研修は有名企業が従業員のパフォーマンス向上や人材育成の手段として導入していますが、その始まりはGoogleがエンジニア向けに独自プログラムを作成し実施し始めたことで注目されるようになったと言われています。
マインドフルネス研修への注目が高まっている背景として、多くの企業が抱える課題やストレス社会とも呼ばれる昨今の労働環境の問題などが挙げられます。労働人口が減少している現代において、人材不足は多くの企業が頭を悩ませている問題でもあり、少ない働き手で高い成果を上げる為に、業務の効率化や生産性の向上が求められているでしょう。しかし、生産性向上への対策は単純なものではなく、従業員のパフォーマンスを上げることも難しい課題です。また、個人の業務負担が増えると、過度な残業や休日出勤など労働環境が悪化し、ストレスの増大やメンタルヘルスの不調にも繋がり、結果として生産性の低下や離職に繋がる恐れもあります。このような問題を防止し、心身の健康を維持しながら仕事に取り組むことが出来るよう、心の調子を整えるアプローチであるマインドフルネス研修が注目されるようになりました。
では、マインドフルネス研修を実施することで、企業ではどのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは、マインドフルネスによる主な3つのメリットを挙げてみたいと思います。
人間は普段何気なく生活している時にも、実は過去や未来のことを常に考えているものです。皆さんも、仕事をしている最中に次の会議の事が気になっていたり、帰宅後するべき家事の手順を考えていたりと、頭の中では違うことを考えているという経験があるのではないでしょうか。仕事をする上では、常に締め切りに追われていたり複数の案件を同時に進行しなくてはいけないことが往々にしてあります。特に、不安や後悔などネガティブなことほど頭の中に占める時間が長くなり、それにより自分でストレスを増大させることになっています。マインドフルネスでは、このような過去や未来の思考を捨て、今だけに集中する精神状態にしていくことで、これらのストレスにとらわれず平常心を保つことが出来るようになります。
マインドフルネスを行うことにより、ありのままの自分を受け入れ心をフラットな状態に保つことで、感情に左右されない冷静で客観的な判断ができ、目の前の仕事に集中して取り組むことが出来るようになります。また、マインドフルネス研修によって意識的に集中した状態をつくりだす為、継続することで集中力が高まり生産性の向上にも繋がります。
マインドフルネスで自身の内面に向き合うことによって自己認識力が高まります。そのため、自分が今どのような感情でいるのか、何に不安を感じるのかなどを冷静に認知できるようになり、自身の感情をコントロールすることもできるようになる、つまり自分自身をマネジメントできるようになるとも言われています。その結果、仕事でストレスを抱えメンタルヘルス不調に陥ることも防止できるようになるのです。
次に、マインドフルネスで行われる具体的な方法についても解説していきます。企業で導入されるマインドフルネス研修については、規模や目的によって内容は異なってきますが、ここでは主な実践方法の例について説明します。
マインドフルネスの基本的な手段は瞑想です。具体的なやり方としてはまず、床や椅子に胡坐などリラックスした状態で座って姿勢を正します。目は軽く瞑るか伏し目にすることで集中しやすくします。そのまま複式呼吸を意識してゆっくりと呼吸をします。4秒ほどで鼻から息を吸い込み6秒ほどかけて口から吐き出すイメージが良いでしょう。この時意識を呼吸に集中させ、意識が逸れたら呼吸に戻すことを心掛けます。これを心が落ち着くまで繰り返します。一見簡単な手順のように感じますが、一つ一つの動作を丁寧に行いしっかりと呼吸に集中していなければ効果が期待できません。1~15分程度でよいので毎日継続して行い、心をフラットにし自分の内面に集中する状態をつくることが重要となります。
瞑想の他に、自身の全身状態に敏感になり自己認識力を高めるボディスキャンという手法があります。ボディスキャンでは、あおむけになって深くゆっくりと呼吸をしながら自分の意識を足先から頭に順番に向けていきます。普段あまり意識しない足の甲や耳などの細部にまで意識を向け、自分の体本来の状態をしっかりと観察します。
与えられたテーマに沿って思いついたことを紙に書き続けるジャーナリングという手法もあります。瞑想やボディスキャンなどを行う場所や時間を確保できない場合でも、デスク上で紙とペンを使用して手軽に実践できる方法です。ジャーナリングは、「自分の長所は」「自分が今日感じたことは」といった自身の内面を掘り下げることが出来るポジティブなテーマを設定し、一定時間深く考えることなく思いついたことや事実だけを手書きで書き続けます。書いた内容を見返し分析することで、自己認識を高め客観的に自分を見つめ直すことが出来るとされています。
今回は、マインドフルネス研修について解説してきました。既に多くの企業で導入実績もあり、実際に集中力の向上やストレス軽減に一定の効果があるとされている研修です。内容自体は難しいものではなく、継続して実施することで誰でも身に着けることが出来るスキルでもあります。自分自身に向き合い、感情をコントロールし集中力を高めることが出来るとして、ビジネスではこれからますます求められるスキルとなっていくことでしょう。