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産業保健師とは?役割や仕事内容を産業医との違いを交えて解説

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働き方改革の推進やメンタルヘルスへの関心の高まりなどを受けて、健康経営に取り組む企業も増えてきており、産業保健師という職業も徐々に注目されるようになってきました。しかし、企業内で設置が義務付けられている産業医に比べ設置義務のない産業保健師はまだまだ馴染みが薄いのが実情であり、「産業医と何が違うのか」「産業保健師を導入することでどのようなメリットがあるのか」と疑問に思われる方も少なくないかもしれません。そこで今回は、産業保健師の仕事内容や企業内での役割について、産業医との違いを交えながらご紹介したいと思います。

産業保健師とは

そもそも保健師とは、「保健師助産師看護師法」によって定められた看護職の一つで、国家資格である看護師と保健師の資格を取得することで従事出来ます。既に病気やケガを患った人に対応する看護師などと違い、怪我や病気にならないよう「予防」を専門とすることが保健師の大きな特徴といえます。保健師は働く場所によって「学校保健師」「病院保健師」「行政保健師」「産業保健師」という4つの種類があり、このうち企業内で働く保健師のことを産業保健師といいます。産業保健師は、企業で働く従業員の健康や安全をサポートすることが役割となります。

産業保健師の仕事内容

産業保健師は、従業員の健康維持増進に関わる幅広い業務に携わっていますが、ここでは主な5つの仕事内容をみていきたいと思います。

1.健康相談、メンタルヘルス支援

従業員が心身の健康に支障をきたすことがないよう、健康相談を行うことは産業保健師の仕事となります。相談の内容は生活習慣病や健康改善といったものはもちろん、近年はハラスメントや過重労働といった労働環境による職場ストレスも大きな問題であることから、メンタルヘルスに関する相談も重視されています。また、メンタルヘルスの事前対策として、従業員向けのセミナーや勉強会を開催することもあります。その他、心身の不調などで休職していた従業員が復職する際に、面談の実施や継続した観察などの復職支援も行います。

2.定期健康診断に関する業務

多くの企業では定期的な健康診断を実施しており、産業保健師は対象となる従業員が適切な健診を受けることが出来るよう、企画から準備、結果のデータ管理やフィードバックなどの多くの業務に関与します。健診結果の内容に基づき、必要性があると診断した従業員へ保健指導を行う場合もあります。

3.ストレスチェック

労働安全衛生法の改正により50人以上の労働者がいる事業所でのストレスチェックが義務化されましたが、このストレスチェックの実施者は法令で定められた資格者に限定されており、産業保健師もストレスチェック実施者となります。

4.職場巡視

従業員の心身の健康維持のため職場内の作業環境を定期的にチェックする職場巡視も産業保健師の役割です。職場巡視は産業医の必須事項であり産業保健師に義務付けられた業務ではありませんが、産業保健師が同行することで衛生上の問題がないか確認ができる他、専門家の立場から改善点やアドバイスなどをもらうことも可能です。また、実際に従業員が働く環境を観察することで従業員のより細かな健康状態を把握することもできます。

5. 衛生委員会・安全衛生委員会への参加

衛生委員会とは、職場の安全や健康の保持増進を目的として一定の基準に該当する事業所において設置が義務付けられているものです。産業保健師の出席は義務付けられてはいませんが、産業保健師が参加することによって保健分野の情報発信を行ったり、現場のリアルな状況を共有してもらうことが出来ます。

産業保健師と産業医との違い

ここまで産業保健師の役割と仕事内容について述べてきましたが、一見すると産業医と同じではないかと感じる方もいるかもしれません。確かに、従業員の健康保持という目的は産業医と同様であり業務内容としては似通っている部分も多くありますが、産業保健師と産業医は立場が異なるため、以下のような違いがあります。

1.設置義務

産業医は、従業員が50人以上の事業所において1人以上選任する法的義務があります。一方で、産業保健師には法的な選任義務はなくあくまで企業の任意で設置することとなります。

2.必要な資格

産業医は、医師免許を取得したうえで、厚生労働省が定める一定の要件を満たした者が従事することが出来ます。産業保健師は、先述の通り保健師免許と看護師免許の国家資格を取得している必要があります。産業医は企業の医者、産業保健師は企業で働く保健室の先生というとイメージがしやすいかもしれません。

3.業務範囲

産業医は、医師として専門的な知見を基に従業員への指導助言や就労判定を行います。そのため、産業医の職務は法令によって定められており、前項で述べた健康相談やストレスチェックの実施、衛生委員会への出席や職場巡視は産業医の必須事項となっております。それに対して産業保健師は保健師の立場から従業員への指導やアドバイスを行うことが主となります。また、産業保健師の業務に関する法的義務はない為、産業保健師は産業医の業務サポートという立場となることが多いです。

4.勤務体制

産業医は、「専属産業医」と「嘱託産業医」の2種類があります。常勤の専属産業医に対し、非常勤となる嘱託産業医は他の医療機関で勤務しながら、月に1回など定期的に職場を訪問する形で勤務することとなります。対して産業保健師は企業から直接雇用される常勤体制がほとんどであり、企業内の医務室や保健室などに常駐しています。また、勤務体制も週に数回、何時~何時といったフレキシブルな対応を取るケースもあるようです。

産業保健師を設置するメリット

これまで述べてきたように、産業保健師は企業内での設置義務はなく業務内容も産業医の補助サポートという役割が多いです。しかし、産業保健師を設置することの大きなメリットは、現場へのより細かなフォローができるという点にあります。定期的な訪問に留まる非常勤の産業医では従業員個人の健康状態を把握することが難しくなることもあります。それに対し産業保健師は企業に常駐している場合が多く、職場環境や従業員に日常的に接することが出来るので、従業員のよりリアルな健康状態を把握し、異変を察知した際に迅速に対応できることで、職場内の健康管理が徹底されるようになります。

また、産業医が担うべき業務のうち、ストレスチェックや健康相談など医師資格が必要でないものについては、産業保健師が担うことが可能なため、産業医の負担を減らしよりスムーズな業務遂行が可能となります。常勤の産業保健師が非常勤の産業医や企業の人事担当者と適切な連携を行うことで、健康経営に大きく寄与することが出来るといえるでしょう。

まとめ

今回は、産業保健師の役割や仕事内容について、混同されやすい産業医との比較を交えてご紹介しました。産業保健師は産業医や人事担当者だけでなく、従業員とのパイプ役にもなる立場であり、産業保健師の存在によって従業員の心身の不調を未然に防ぎ、企業の発展にも貢献することができます。ストレス社会とも呼ばれる現代において従業員へのメンタルヘルスケアが重要視される今、企業の状況に鑑みて、産業医はもちろん産業保健師の設置も検討すると良いでしょう。

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