更新日:2023/06/26
職場環境の改善などを担う組織「衛生委員会」。どんな目的で設置され、どのような活動をしているのでしょうか?また、「安全委員会」「安全衛生委員会」との違いも説明します。
「衛生委員会」とは、企業に設置される、職場環境の改善や労働者の身体面・精神面の健康維持や増進などについて議論を行う組織です。衛生委員会は、定められた条件を満たした場合に、法律で設置が義務付けられているため、義務的に設置しているという企業も多いのではないでしょうか。しかしながら、近年、リモートワークの増加などによる職場環境の変化に伴い「ウェルビーイング経営」や「健康経営」の重要性が再認識され、衛生委員会の存在意義や運営方法を見直す企業もでてきています。
働きやすい環境を作るため、ストレスチェックなどを活用する企業も増えており、このようなメンタルヘルス対策をスムーズに導入するためにも、衛生委員会は非常に重要な存在と言えるでしょう。
衛生委員会はなぜ設置するのでしょうか。また、どのような活動を行っているのか解説します。
労働安全衛生法により、労働者が50人以上の事業場の場合、業種に関係なく衛生委員会を設置することが義務付けられています。そして、月1回以上の開催、議論の内容を事業者へ報告すること、重要なものに係る事項を記録・3年間の保管義務が法律で定められています。
労働者が50人未満の事業場の場合、衛生委員会の設置義務はありませんが、厚生労働省によって設置が推奨されています。
設置することで、労働者が心身共に健康で、働きやすく、生産性のある明るい職場づくりの実現に繋がります。
衛生委員会は、企業内で労使がともに労働災害防止のための活動をする目的で設置される組織です。労使とは「労働者」と「使用者」と定義されています。これをよりわかりやすく表すと、「一般の従業員(労働者)」と「人事権を有する管理職以上(使用者)」となります。
組織のメンバー構成は下記のようになります。
補足すると、衛生委員会を構成するメンバーの人数について、上限の規定は特にありません。そのため、会社の規模などに基づいて適宜決定するものとされています。そして、議事はこのメンバーで月に1回以上開催されます。そこでは、企業全体の衛生に関する議題についての課題、改善策や解決策などを話し合います。議題は幅広く、ハラスメント問題、業務内容の課題、職場環境改善のために行うメンタルヘルス対策(ストレスチェック他)、企業内で決められたテーマなどについて話し合われます。
「衛生委員会」の他に、「安全委員会」「安全衛生委員会」が存在します。各委員会の違いについて解説します。
「安全委員会」とは、労働者の危険を取り除き、安全を守るための組織です。安全に関わる規定や安全計画、労働災害の原因の特定や再発防止策、安全教育などについて議論が行われます。安全委員会は設置義務が生じる従業員数が業種により異なるなど、衛生委員会よりも、より細かい設置条件が定められているのが特徴と言えます。
衛生委員会と同じく、月1回以上の開催、議論の内容を事業者へ報告すること、重要なものに係る事項を記録・3年間の保管義務が法律で定められています。
「安全衛生委員会」とは、労働者の安全を守るための「安全委員会」と、労働者の健康を守るための「衛生委員会」、両方の機能を合わせた組織です。
安全委員会、衛生委員会と同じく、月1回以上の開催、議論の内容を事業者へ報告すること、重要なものに係る事項を記録・3年間の保管義務が法律で定められています。
「衛生委員会」「安全委員会」「安全衛生委員会」の違いをまとめます。それぞれの役割を改めて確認してみましょう。
【共通事項】月1回以上の開催、議論の内容を事業者へ報告すること、重要なものに係る事項を記録・3年間の保管義務が法律で定められている。
「衛生委員会」について、また、「衛生委員会」「安全委員会」「安全衛生委員会」の違いを解説しました。どの組織も労働者にとってより良い環境を整え、企業を成長させるために非常に重要な存在です。「衛生委員会」が十分に機能すれば、労働者の意欲の向上に繋がり、生産性を高め、結果として企業の成長に繋がります。衛生委員会を通して、ストレスチェックなどのメンタルヘルス対策を導入することも、労働者にとってプラスにはたらく要素の一つと考えられます。企業側は、「ウェルビーイング経営」や「健康経営」が注目される今だからこそ、組織の存在意義を改めて見直すことが必要とされているのではないでしょうか。労働者の方も、この記事をきっかけに組織の存在や重要性を再認識し、自らの職場環境などについて振り返る機会になれば幸いです。