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ラインケアとは?職場でのメンタルヘルス対策としての必要性と対応
社員のメンタル不調は業務に影響を及ぼしやすいものです。本人だけではなく、職場全体の問題として早めに対応することが求められます。従業員の健康を気づかう具体的な方法として厚生労働省が推進しているのが「ラインケア」です。この記事では、ラインケアの概要や必要性、社員のメンタルヘルスを管理するうえで管理監督者に求められる対応などを紹介していきます。
ラインケアとは?
ラインケアとは、管理監督者が従業員の健康状態を把握し、必要に応じて適度なケアを行うことです。管理監督者とは、部長や課長といった管理職のことを指します。管理監督者には、事業主などに代わって従業員に直接指揮したり命令したりする権限が与えられています。業務に当たっての評価も任されていますが、健康管理を行うことも重要な役割の一つです。
従業員のメンタルヘルスが重視されるようになった背景には、過労死やパワハラによる自殺などが多発し、社会問題となっていることがあげられます。こうした事態を重く受け止め、厚生労働省は2015年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の改正を実施しました。企業向けに「15分でわかるラインによるケア」をWeb上で公開するなど、従業員のラインケアを推進しています。
職場でラインケアを必要とする理由
ラインケアを必要とする理由としては、先述したように過労死やハラスメントの問題があげられます。その他にも、どのような理由があるのか紹介していきます。
雇用者には「安全配慮義務」がある
事業主には、従業員を業務に従事させる際、過度の疲労や心理的負担によって心身健康を損わせないよう配慮する義務があります。これが「安全配慮義務」です。「安全配慮義務」は労働契約法の第5条に明記されており、部下を管理監督する権限を持っている管理監督者も責任を負うことになっています。これまで従業員のメンタルヘルスを重視してこなかった会社は特に、管理監督者を対象にラインケアの研修を実施するなどの対策が必要です。
健全なコミュニケーションの構築
従業員がストレスを抱え、メンタル不調に陥る要因にはさまざまなものがあります。どのような要因であっても、メンタル不調を抱えてしまうと健全なコミュニケーションは難しくなります。その結果、生産性の低下につながることもあるでしょう。また、大切な従業員がストレスを抱えていることに気づけないのは、会社にとってもマイナスでしかありません。職場全体の生産性を上げ、健全なコミュニケーションを維持するためにラインケアは必要です。
具体的にはどのような対応をすべきか?
では、実際に管理監督者はどのようにラインケアを行えばいいのか、具体的な対応について紹介していきます。
部下の相談に対応する
まず、管理監督者として部下の話を聞きましょう。部下の相談を受けるには、日頃から話しやすいと感じてもらう雰囲気づくりも重要です。そのためには、部下の話にじっくり耳を傾け、聞き役に回る姿勢が求められます。アドバイスをするにしても、まず本人の言い分や考えをしっかり聞き、理解を示してから自分なりの意見を伝えることです。ふだんから信頼関係を築いておき、部下が何か相談をしてきたときは相手の立場になって話を聞いてあげましょう。相談を受けるときは、批判的な態度をとってはいけません。
ストレス要因の把握と改善
部下がどのようなことで悩み、ストレスになっているのか要因を把握します。そして、要因が理解できたら具体的に環境の改善を行っていきます。従業員が職場でストレスを受けやすい要因は、人間関係や作業環境、仕事の負荷などです。部下の相談に耳を傾けるときは、これらの要因をどのように調整していけばいいのか考えながら聞く必要があります。
必要に応じて産業医に相談する
管理監督者は従業員の異変に気づくという重要な役割を持っています。そして、必要だと感じたら産業医への相談を促します。もしくは、部下に代わって産業医に相談に行くことも管理監督者の役割です。保健師や看護師、公認心理師、衛生管理者、産業カウンセラー、臨床心理士などの事業場内産業保健スタッフを置くことで、産業医との仲介を行うという方法もあります。
職場復帰した部下への配慮
ンタル不調を感じながら無理に仕事を続けることで、思わぬ結果になっては大変です。産業医と相談するなど、状況によっては一定期間療養を必要とすることもあるでしょう。職場に復帰してからの部下への配慮も管理監督者の役割です。様子を見ながら仕事配分を考えていくだけでなく、理解を示して相談しやすい存在でいることが求められます。
ラインケアを行うときに押さえておきたいポイント
最後に、ラインケアを行う際に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
従業員の異変に早めに気づく
何より心がけたいのは、従業員の異変に早めに気づくことです。遅刻や休みが目立つなど行動や態度が以前と違うと感じたら、仕事で何らかのストレスを受けている可能性を疑ってみましょう。タイミングに配慮しながら、自然に話せるような機会を設けることも必要です。元気なようにふるまっていても、メンタル不調を抱えていることもあります。異変に気づき、隠れた病気があるか確認することも管理監督者の務めです。
個人情報保護の配慮
従業員から相談を受けたときに知り得た情報は、決して口外してはいけません。管理監督者には、従業員の個人情報を保護することはもちろん、本人の意思を尊重することが求められます。ラインケアを行ううえで得た健康情報だけでなく、個人的に抱えている事情なども漏らすことのないよう留意しましょう。情報の収集や使用、管理についても本人の確認を必ず取ることが必要です。
無理強いはせず本人の意思を優先する
産業医への相談が必要だと感じても、無理強いはいけません。メンタル不調に陥っているときは、本人にとってつらいものです。周囲に気づかれたくないという人もいるでしょう。心配だからといって「すぐ産業医に相談してこい」「相談したら報告しなさい」などと命令するのは逆効果です。本人の気が進まないときは「それなら、代わりに相談してみるよ」などと、やわらかく接するようにしましょう。
ラインケアで従業員のメンタル不調を防ぐのは管理監督者の役割の一つ
従業員を業務に従事させるには、さまざまな問題に対応できるよう準備しておく必要があります。事業者は、目に見えるケガだけではなく、従業員のメンタルヘルスにも注意をはらわなければなりません。そして、ラインケアを行うのは従業員に指導・管理する権限を持つ管理監督者の役割です。日頃から部下との信頼関係を築き、ストレスの早期発見など適切な対策に努めましょう。
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