更新日:2022/04/15
ストレスチェック後の努力義務となっているのが、職場環境改善の実行です。しかし、具体的にどのように改善策を出せばよいのか、またどのように実施していけばよいのか悩む経営者や人事労務担当者は少なくありません。このようなときに役立つのが厚生労働省の作成した「職場環境改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)」です。この記事は職場環境改善のためのヒント集とは何か、活用方法、職場環境改善までの手順、流れを解説します。
ストレスに関する質問票を従業員に配って回答してもらう「ストレスチェック」は、2015年の労働安全衛生法の改正によって、労働者が50人以上いる事業所で義務になりました。そして、このストレスチェックの集計、分析結果をもとに職場環境を改善することは、事業者の努力義務となっています。従業員の仕事に関するストレスを減らしてメンタルヘルス不調を予防する重要性については、程度の差こそあれ、認識していない経営者や人事労務担当者はいないことでしょう。しかしながら、産業保健スタッフの手厚いサポートがある企業を除いて、「何からどうやって職場環境改善に取り組んでよいのかわからない」「やっても大した効果はなく、職場環境は変わらないのではないか」という場合も多いのではないでしょうか。
そのようなときに活用したいのが、「職場環境改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)」です。職場環境改善のためのヒント集は、職場環境改善の成功事例を集めてツールとして役立つようにチェックリスト化したもので、いわば職場環境改善の「虎の巻」です。それでは次項から、職場環境改善のためのヒント集の内容、活用方法について詳しく解説していきます。
厚生労働省が作成した職場環境改善のためのヒント集とは、職場における従業員の心の健康を守り増進するために、従業員の参加のもと、職場環境改善のアイデアを出して実施していくためのツールです。チェックリストに回答することで、従業員が職場の問題、課題に気付いて行動できる仕組みになっていることから、「メンタルヘルスアクションチェックリスト」と呼ばれることもあります。「職場環境改善のためのヒント集」の特徴は、企業の成功事例がベースになっているため、具体的な対策につなげやすいことです。また、長時間残業や人事評価の公平性、受動喫煙の対策、パワハラ防止、定期的なストレスチェックの実施など、職場の改善項目を多角的に扱っていることも特徴です。多くの企業事例を集約しているため、自社あるいは職場と関連付けて考えられる内容がきっとみつかることでしょう。
「職場環境改善のためのヒント集」は、「作業計画への参加と情報の共有」「勤務時間と作業編成」「円滑な作業手順」「作業場環境」「職場内の相互支援」「安心できる職場のしくみ」の6領域に分類され、合計30項目のチェックリストにまとめられています。回答者となる従業員は、各項目に対して「提案する」「提案しない」の選択性で答え、優先順位が高いと思われる項目にチェックを付ける仕組みです。また、1行程度の簡易的なものですが、必要に応じて自由形式で記述するスペースも設けられています。これらは職場環境の不備を漏れや抜けなくチェックすることではない点に注意しておきましょう。職場に応じて、重要だと考える領域だけ選んでもよいですし、特定の項目を職場や業務の実態に合わせてアレンジしてもかまいません。つまり、職場改善のためのヒント集、ツールとして、主体的に利用するスタンスが大事です。
ここでは職場環境改善のためのヒント集を活用した改善ステップを、9つに分けて解説します。
最初のステップは職場環境改善のためのヒント集を活用して討議形式で改善アイデアを出し、改善を実施していきたい旨を従業員に伝えて合意を得ることです。職場環境改善のためのヒント集は、従業員が参加して職場改善に取り組むことが前提になっています。経営層がリーダーシップを発揮したり、人事労務担当者が説明会を開いたりするなどして準備を進めましょう。
職場環境改善のためのヒント集を作成して従業員に配布し、回答してもらいます。実施の仕方にもよりますが、討議前に回答を済ませてもらったほうが集まる時間を短縮でき、本業への支障を少なくできるでしょう。
1グループ5~8人程度に分け、各グループに進行役、記録係、発表係を選びます。この役割を担うのは、通常、職場の管理監督者または産業保健スタッフです。
従業員に対して伝えておきたい情報があれば、討議を始める前に説明しておきましょう。例えば、事業拡大によって残業時間が増加傾向にある、近い将来に敷地内を全面禁煙にする計画がある、などです。ただし、自由な討議を妨げないように長くても10~15分ほどで簡潔に事実を伝え、それに対する見解はなるべく挟まないようにします。
職場環境改善のためのヒント集を参考にしながら、最低30分以上、討議を実施します。そして、各グループで優先的に取り組むべき項目またはすぐに実施できる改善策を3つ出すのが一般的です。併せて、発表会で知らせたい意見やアイデアなども記録しておきましょう。
各グループの発表係がグループで出した改善項目や改善策を発表し、また役に立ちそうな意見やアイデアを伝えます。
職場の管理監督者または産業保健スタッフは、発表会の内容をまとめて改善計画を立てます。内容によっては従業員や各部署の責任者の了解を得なければならないため、独断で実施項目を決めないように注意しましょう。
職場改善計画に従って、改善策を実施します。このステップで重要になるのは、誰を実行責任者にするかです。多くの場合は職場の管理監督者や人事労務担当者がなりますが、現場の責任者に委任したほうがよいケースもあります。例えば業務ローテーションの管理やパワハラ、モラハラの監視などは、常に職場に在籍する人に任せたほうがよいでしょう。
目安としては四半期や1年ごとにフォローアップを実施し、職場改善の実施の有無と成果を検証します。実施内容によっては主観的な評価になりかねないため、必要に応じて従業員へのアンケート、ヒアリングも行いましょう。
ストレスチェック後に実施しなければならない職場環境の改善では、「職場環境改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)」を活用しましょう。企業の成功事例をもとに作成しているため、従業員の参加のもと、具体的な改善策を出して実施できます。企業が抱える課題や問題はさまざまですが、本記事で解説した改善ステップに従って進めていけば、優先的に取り組むべき職場環境のポイントがみえてくるはずです。必要に応じて産業保健スタッフのサポートも受けながら、従業員の心の健康を守っていきましょう。