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ストレスチェックにおける高ストレス者判定基準と対応方法
平成27年に「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が施行されたことにより、常時50人以上の従業員を使用する事業所はストレスチェックの実施を義務づけられました。ストレスチェックは、ストレスに関する質問票を用いて従業員のストレス状態を調べる検査です。この記事では、ストレスチェックにおける高ストレス者の判定基準と高ストレス者への対応方法を解説します。
ストレスチェックの流れと準備
ストレスチェックの目的は、従業員のストレス状態を把握して適切に対処しメンタルヘルスの不調を防ぐことです。基本的な流れは次のようになります。
- ストレスチェックの導入準備
- ストレスチェックの実施
- 高ストレス者と判定され、医師面接を希望する従業員に面接指導を実施
- 医師の面接指導の意見書に基づき、必要に応じて業務上の措置を実施
3と4も事業者の義務です。以上に加え、集団分析を行い職場環境の改善をすすめることも求められています。
導入準備のポイント
ストレスチェック導入のポイントは、事業所内の衛生委員会などで実施方法を決定して社内規定として明文化することです。実施体制・役割分担を決定することも欠かせません。具体的には、ストレスチェック全体の管理者、ストレスチェック実施者(医師・保健師・厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士など)、ストレスチェック実施事務従事者、面接指導担当医師を決定します。ストレスチェック実施者とストレスチェック実施事務者は外部委託も可能です。
ストレスチェックの実施と高ストレス者の判定基準
ストレスチェックでは、従業員が回答した質問票をもとにストレス状態を評価して、医師による面接指導の要否判定を行います。面接指導が必要とされるのは、一定の数値基準を超え、ストレスチェック実施者が必要性を認めた従業員です。質問内容は、基本的に以下の3項目にわかれます。
- ストレスの要因・原因に関係する項目
- ストレスによる心身の自覚症状に関係する項目
- 従業員に対するサポートに関係する項目
例えば、「ストレスによる心身の自覚症状に関係する項目」であれば、「疲労感」の質問に対し「低い・やや低い・普通・やや高い・高い」から当てはまるものを従業員に選択してもらいます。ストレスが低い選択肢を1点、ストレスが高い選択肢を4点などのように採点していきます。評価を行うのは、ストレスチェック実施者です。結果をもとに、高ストレスで医師による面接指導が必要な従業員を判定します。ストレスチェックの結果は、本人だけに通知されます。(事業所には通知されません)
高ストレス者の判定基準
基本的には、以下のいずれかに該当する従業員を高ストレス者と判定します。
- 「ストレスによる心身の自覚症状に関係する項目」の点数が高いもの
- 「ストレスによる心身の自覚症状に関係する項目」の点数が一定以上で、「ストレスの要因・原因に関係する項目」「従業員に対するサポートに関係する項目」の点数の合計が著しく高いもの
優先的に判定するべきは、ストレスで心身の自覚症状が現れている可能性が高い従業員です。ただし、この点だけに注目すると、自覚症状は現れていないものの仕事で大きなストレスがかかっている従業員や、事業所で孤立していると感じている従業員を見逃してしまう恐れがあるため、「ストレスの要因・原因に関係する項目」「従業員に対するサポートに関係する項目」の点数にも注意しなければなりません。
メンタルヘルス不調は様々な要因が影響を与えることから、様々な要因に注目しないと、不調を抱えている従業員を見落としてしまう可能性があるからです。具体的な判定基準は、用いる質問表などで異なります。ただし、事業所の状況に応じて判定基準を設定できます。
高ストレス者への対応方法
ストレスチェックで医師による面接指導が必要と判定された従業員から申出を受けた場合、事業所は医師による面接指導を実施します。したがって、結果通知に合わせて面接指導の申出窓口、申出方法を周知しておく必要があります。面接指導は、従業員の申出を受けてから遅滞なく(概ね1カ月以内)行わなければなりません。面接指導の申出を行わない従業員に対しては、基本的にストレスチェック実施者が申出の勧奨を行います。
面接指導の実施
従業員から面接指導の申出を受けた事業所は、面接指導対象者であることを確かめてから、面接指導を実施する医師・場所・日時を決定します。面接指導対象者に該当するかどうかは、当該従業員の提出したストレスチェックの結果、ストレスチェック実施者への結果の確認のいずれかです。
面接指導の内容
面接指導では、事業所から提供された勤務状況情報と本人の語るストレスの要因を医師が総合的に勘案して対応を検討することになります。基本的には、本人へ指導・助言を行うとともに、職場内で実施できる対応を検討するケースが多いでしょう。これにより、ストレスに上手く対処できるようにサポートすることやストレスが健康に与える影響を軽減することを目指します。いずれにせよ、第一の選択肢として専門医の受診を勧めるものではありません。なお、医師による面接指導の費用は事業者負担です。
医師からの意見聴取
面接指導実施後、事業者は医師から必要な措置の有無と必要な措置の内容などを遅滞なく(概ね1カ月以内)聴取します。具体的には、就業区分(通常勤務・就業制限・要休業)や職場環境改善に関する意見などを聴取します。職場環境改善に関する意見は、人事労務管理と関係するケースが多いでしょう。したがって、これらの担当者と連携して対応することが重要です。また、就業上の措置を実施する場合、当該従業員からも意見を聞いて了解を得る必要があります。当然ながら、当該従業員にとって不利益な扱いにならないように注意しなければなりません。当該従業員のプライバシーに配慮しつつ、職場の管理者から理解を得ておくことも重要です。以上の措置を実施してからストレス状態が改善した場合、産業医などの意見をもとに通常の就業区分に戻すなどの措置を実施します。
高ストレス者への対応を理解したうえでストレスチェックを実施しましょう
常時50人以上の従業員を使用する事業所はストレスチェックの実施が義務づけられています。ストレスチェックで高ストレス者と判定されて面接指導が必要と認められた従業員が希望する場合、事業所は医師による面接指導を実施しなければなりません。高ストレス者への対応を理解したうえで、ストレスチェックの準備を進めましょう。
※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。
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