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パワハラをしやすい上司の特徴とパワハラを取り巻く環境の変化
企業のパワハラに対する取り組みが大きく変わりつつあります。パワハラ防止法が成立したことで、パワハラ行為の禁止だけではなく相談窓口の設置や再発防止といった措置を講じることが義務付けられたからです。パワハラを防止するポイントは、啓発活動と体制の整備と考えられます。今回は、啓発活動の中でも注目されるパワハラをしやすい上司の特徴とパワハラ防止法の概要について解説しています。パワハラへの対応を進める際の参考にしてください。
パワハラ防止措置を義務付けたパワハラ防止法
厚生労働省が2020年に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年以内にパワハラを経験したと回答した人の割合は31.4%です。このような状況を受け、2019年の通常国会でパワハラ防止法(正式名称・改正労働施策総合推進法)が成立しました。この法律により大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から、職場におけるパワハラの防止措置を講じることが義務付けられました。必要な措置を講じない場合、助言・指導・勧告のほか企業名を公表される場合があります。
パワハラの定義
パワハラ防止法は、職場におけるパワハラの定義も行っています。具体的には、次の3つの要素を満たすものを職場におけるパワハラと定義しています。
【パワハラの定義】
- 優越的な関係を利用した言動
- 適正な業務の範囲を超えている
- 労働者の就業環境が悪くなる
ここでいう職場は労働者が業務を行う場所、労働者は事業主が雇用するすべての労働者です。
事業主が講ずべき防止措置
パワハラを防ぐため、事業主は防止措置を講じなければなりません。具体的には、以下の防止措置などを求められます。
【事業主が講ずべき防止措置】
- パワハラを防ぐ社内方針の明確化と啓発・周知
- 相談窓口・窓口担当者の設置などの体制整備
- 事実関係の迅速な調査と被害者・行為者に対する措置
- 相談者のプライバシーを守るための措置
パワハラ防止法では、相談したことを理由に不利益な扱いをすることも禁じられています。
パワハラを行いやすい上司の特徴
パワハラの定義を見てわかるように、パワハラは基本的に上司が部下に対して行うものです。パワハラを行いやすい上司には、どのような特徴があるのでしょうか。
感情をコントロールできない上司
自分の感情をコントロールできない上司は、部下に対してパワハラをしやすいといえます。思い通りにならないときに、怒りに任せて部下を激しく叱責してしまうことが考えられるからです。必要以上に激しく叱責する、あるいは他の労働者の前で何度も激しい叱責を繰り返すとパワハラに該当する恐れがあります。突発的に怒ってしまう上司には注意が必要です。
公私の区別がつかない上司
公私の区別がつかない上司も、パワハラをしてしまうことがあります。業務時間外まで部下をコントロールしようとすることやプライベートな事情に立ち入ろうとすることがあるからです。本人にパワハラの意図はなくても、これらの行為はパワハラにあたる恐れがあります。上司が業務内、業務外の区別をつけられるようにしておくべきといえるでしょう。
暴力的な上司
当たり前ですが、暴力的な上司もパワハラをしやすい傾向があります。部下との間で問題が生じたときに、暴力をふるってしまうことがあるからです。職場で行われる暴力的な行為もパワハラに該当する恐れがあります。問題を解決する選択肢に暴力がある上司には、気を付けなければなりません。
部下の好き嫌いを仕事に持ち込む上司
好きな部下と嫌いな部下で対応を変える上司もパワハラをしやすいといえます。部下の能力ではなく、自分の好みで業務内容や業務量を決定することがあるからです。例えば、嫌いという理由だけで、特定の部下に業務を割り振らないなどはパワハラに該当する恐れがあります。外からは業務の割り振りまで見えにくいため注意が必要です。
差別的な考えをもっている上司
差別的な考えをもっている上司もパワハラをしやすいといえます。部下の属性に基づき侮辱的な発言や侮辱的な扱いをしてしまうことがあるからです。例えば、外国人という理由だけで、重要な業務を割り振らないなどはパワハラに該当する恐れがあります。社内研修などで、差別的な考えを改める必要があるといえるでしょう。
自身の立場や影響力に自覚のない上司
パワハラは上記のような単なる言動・思考の強さ以外にも、上司のおかれた立場や社会的影響力の強弱によっても生じます。たとえば、「これからもこの職場で働き続けられそうか」という言動でも、上の立場の人間から言われれば、雇用に直接かかわるものとしてとらえられてしまう恐れがあります。このように上司がかかわるという時点で何かしらの影響を与えています。日ごろの人間関係の構築が重要であると言えるでしょう。
パワハラに該当する恐れがある行為
職場のパワハラを防ぎたい場合、パワハラに該当する恐れがある行為を理解しておく必要があります。代表的な行為は次の6つです。
【パワハラに該当する恐れがある行為】
- 身体的攻撃
- 精神的攻撃
- 人間関係の切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
それぞれの行為について解説します。ただし、個別の事情により判断が異なることもあります。
身体的攻撃
部下を殴る、蹴る、部下にモノを投げつけるなどが該当します。暴行、傷害と考えればよいでしょう。目につきやすいものなので、周囲の人間も気づいていることが多いものです。
精神的攻撃
人格を否定する言動や長時間の叱責、被害者を貶め罵倒するメッセージの一斉送信などが該当します。大きな問題を起こした部下に対し、ある程度、厳しく叱責することはパワハラにあたらないと考えられます。目につきにくく、閉ざされた環境で生じているため、発覚しにくいほか、両者で意見が食い違うため、判断の難しいものです。
人間関係の切り離し
特定の部下を職場で孤立させる、不当に別室に隔離するなどが該当します。別室で行う研修などは、パワハラにあたらないといえるでしょう。職場から孤立をするため、発覚のしにくいものです。
過大な要求
絶対に達成できない目標を設定して失敗を激しく叱責するなどが該当します。部下を成長させるため達成がやや難しい目標を設定することは、パワハラにあたらない可能性が高いといえます。業務量や目標など形のあるものなので、周囲の人間も気づいている場合が多いです。
過小な要求
業務とは無関係の雑用を無理やり行わせる、反りが合わない部下に仕事を与えない、能力・経験とも十分な部下を退職に追い込むため簡単な雑用しか命じないなどが該当します。部下の能力に合わせて業務を割り振ることは、パワハラにあたらないと考えられます。業務量や目標など形のあるものなので、周囲の人間も気づいている場合が多いです。
個の侵害
部下の了解を得ず誰にも知られたくない個人情報を職場で話す、部下の私生活にやたらと踏み込む、職場外でも部下を監視するなどが該当します。部下の了解を得て個人情報について話すケースは、パワハラにあたらないといえるでしょう。
パワハラ防止の取り組みを始めましょう
パワハラ防止法が成立したことで、企業にはパワハラを防ぐ措置が求められます。パワハラを行いやすい特徴を備えている上司が在籍している企業は、特に注意が必要です。必要に応じて啓発活動などを行うべきでしょう。また、パワハラ対策サービスなどを活用して、パワハラを防ぐ体制を整えることも重要です。活用できるサービスについても調べてみてはいかがでしょうか。
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