公開日:2024/10/04
最近では、障害年金についてご自身もしくはご家族の方が申請の手続きをされるケースも多いようです。しかし制度が複雑なうえ準備しなければならない書類も多く、時間もかかるのが一般的です。
そこで今回は、障害年金に関してよくいただくご質問とその回答についてご紹介したいと思います。ご自身で手続きをされる際の参考にしていただければと思います。
ここで紹介させていただくのはあくまでも一般的なケースです。ご不安な方は当事務所までご相談ください。
質問:指定難病で治療中ですが、障害年金は受給できるのでしょうか?
回答:病名だけで決まるわけではありません
障害年金が受給できるかどうかは、病名や病気や怪我の種類等だけで判断されるわけではありません。
国民年金(厚生年金)の保険料の納付状況にもよりますし、病気や怪我の状態(程度)、それらの病気や怪我が日常生活にどのような影響があるか、どのくらい不便な点があるかを総合的に判断されて、受給できるかどうか、受給できる場合は等級(1級~3級)が決まります。
質問:子供の頃に発症して今も病気が続いているのですが障害年金は受給できますか?
回答:20歳前障害による請求を行います。
20歳前の年金に未加入であった期間に初診日のある傷病により一定の障害の状態にある方が、20歳に達した日(障害認定日が20歳以降の場合はその障害認定日)に障害等級の2級以上に該当する場合に、障害年金を受給することができます。
この場合、年金加入は原則20歳からなので、20歳前障害の場合は、保険料納付要件は問われません。
また、20歳前障害の障害年金は、本人の所得が一定額を超える場合、その年の8月から翌年の7月まで、その全額又は2分の1相当額が停止されます。
20前障害の申請において難しい点は、初診日が幼少時にあるなど、時間が相当経過しており、初診日の証明(受診状況等証明書)を取得するのが困難であることです。
質問:障害の状態や程度が、1級、2級、3級(障害厚生年金のみ)にも該当しない場合には、障害年金は受給できないのでしょうか?
回答:障害手当金を受給できる場合があります。
「障害手当金」とは、障害の状態や程度が障害厚生年金3級に達しない場合に、年金ではなく一時金として支給されるものです。
初診日に厚生年金に加入していることが必要で、初診日から5年以内に障害が「治った」場合(症状固定した状態も含む)に、その治った(症状固定)日から5年以内に請求する必要があります。
受給額は、3級の障害厚生年金の2年分で、最低保障額が現在約115万円です。
質問:障害年金は働いていてももらうことができますか?
回答:はい、もらうことができます。
働きながら障害年金を受給することは可能です。
厚生労働省の「令和元年障害年金受給者実態調査」によると、障害年金を受給している方のうち就労している方は、約34%となっています。ただし、障害の種類によっては審査に影響することもあります。
例えば、肢体等の外部障害は、その状態や程度が数値で表されることがありますが、そのような場合は一定の基準を満たしていれば実際に働いているか否かに関わらず障害年金を受給できるケースが多いようです。
一方、うつ病等、数値で表しにくい精神の障害等の場合は、働いていることにより障害の程度が軽いと判断されることもあります。
しかし、どのような働き方かによって、例えばフルタイムで毎日働くのは難しいが、週に数回、数時間、周囲のサポートを受けながら、等であれば障害年金を受給できる可能性は十分あります。
実際どのように働いているのか、働くうえでどのようなことに困っているのかを客観的、具体的に申立書に示すことが大切です。
質問:障害者手帳を持っていないのですが、障害年金はもらえないのでしょうか?
回答:障害年金と障害者手帳は、関係ありません
よく、障害者手帳の級が〇級だから、障害年金も同じ〇級がもらえますか?といったご質問をいただきますが、障害者手帳と障害年金は、直接は関係がありません。
障害者手帳の級と障害年金の級もつながりや関係はありません。ですので、障害者手帳を持っているが障害年金を受給できないケースもありますし、逆に障害者手帳を持っていないけれど障害年金を受給している方もいらっしゃいます。
質問:傷病手当金を受給しているのですが、障害年金ももらうことはできますか?
回答:同一の傷病か否か、障害基礎年金か障害厚生かによって異なります。
傷病手当金は健康保険の制度で、療養のため労務に服することができないとき、支給開始から通算して1年6カ月を限度に支給されるものです。
この傷病手当金と障害年金の関係は以下のようになっています。
(1)障害「厚生」年金を受給している人が、同一の傷病により傷病手当金を受給できるときは、障害厚生年金が優先支給され、傷病手当金は支給停止されます。
(2)ただし、受給する障害厚生年金の額(障害基礎年金の支給を受けることができるときは、障害厚生年金の額と障害基礎年金の額との合計額)を360で除して得た額が傷病手当金の1日当たりの額より少ないときは、その差額が傷病手当金として支給されます。
(3)障害「基礎」年金と傷病手当金は、同一の傷病であっても両方が支給されます。
(4)障害年金と傷病手当金の支給事由が異なる(同一傷病でない)場合は、両方が支給されます。
質問:失業保険を受給していますが、障害年金も受給できるのですか?
回答:失業保険を受給していても、障害年金の受給は可能です。
失業保険(基本手当)は雇用保険の制度です。働く意思や能力があるのに就職できない(失業の状態)方に支給されるものです。
失業保険は失業という状態に対し支給されるものであるのに対し、障害年金は障害によって日常生活が困難であるという状況に対して支給されるものです。
つまり、それぞれの制度の趣旨が異なりますので、両方を受給することは可能です。
質問:国民年金の保険料を1年間滞納していますが、障害年金は申請できますか?
回答:保険料の納付要件を確認する必要があります。
障害年金が受給できるかどうかの要件のひとつに、「保険料納付要件」というものがあります。
(1)初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が2/3以上であること。
この(1)を満たさない場合でも、
(2)初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの1年間のうちに、保険料納付済期間と保険料免除期間以外の期間(滞納期間)がないこと。
この(2)の要件を満たせば、保険料納付要件はクリアしています。
大事なポイントとして、保険料の納付が「免除」されているのか?それとも「滞納」しているのか?ということがあります。
本来、払わないといけない保険料を払わずに、何もせずそのままにしていたら「滞納」となり、障害年金を受給するための要件の期間には含まれません。
ですので、例えば経済的な事情等で保険料を払うことができないときは、保険料免除の手続きをすることがとても大事です。
これは障害年金だけではなく、老齢年金についても言えることです。
質問:現在、障害年金を受給しています。更新に当たって気を付けるべきことは何でしょうか?
回答:医師に状況をきちんと伝えることが大切です。
初めに障害年金の申請をしたときと同じように、病状等を正確に医師に伝えることが大切です。最初に申請をしてから時間が経っていたりすると、担当医が変わっていることもあります。
過去に作ってもらった診断書のコピーがあれば、それを医師に確認いただくなどして、病状についてお伝えしましょう。
質問:初めて病院に行ったのが10年以上前のことで、どこの病院かも覚えていませんが、障害年金は申請できるでしょうか?
回答:初診日をあきらかにするための資料を探す等の準備が必要です。
障害年金を請求するには、初診日を明らかにする書類(受診状況証明書)が必要です。この書類は医療機関で作成してもらうのですが、当時の診療録(カルテ)に基づいて事実を証明する必要があります。しかし、終診(転医)から5年を経過していると、当時のカルテが破棄されていることがあります。あるいは初診の病院がすでに廃院してしまっていることもあります。
そうした場合、2番目に受診した医療機関の受診状況の証明書と、初診日を合理的に推定できる具体的な参考資料により、本人が申し立てた日を初診日と認められる場合があります。
~具体的な参考資料の例~
① 身体障害者手帳・療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
② 身体障害者手帳等の申請時の診断書
③ 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
④ 交通事故証明書
⑤ 労災の事故証明書
⑥ 事業所等の健康診断の記録
⑦ インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー
⑧ 健康保険の給付記録(健康保険組合や健康保険協会等)
⑨ 次の受診医療機関への紹介状
⑩ 電子カルテ等の記録(氏名、日付、傷病名、診療科等が確認されたもの)
⑪ お薬手帳、糖尿病手帳、領収書、診察券(可能な限り診察日や診療科が分かるもの)
⑫ 第三者証明
⑬ その他(例えば、交通事故による請求で事故証明が取得できない場合、事故のことが掲
載されている新聞記事を添付するなど)
社会保険労務士法人 東京労務グループ。
平成25年社会保険労務士登録。
東京、福岡、熊本を中心に企業の労務顧問として経営者のサポートを行っている。
企業内の労務管理セミナーや勉強会など幅広く活動中。
障害年金の申請代行実績も多数あり。
URL:https://www.tokyokaikeigroup.com