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「消費税」総額表示の義務付けに関する取扱い

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消費税法における総額表示義務とは?

総額表示とは、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者(消費税を納める義務がある者)が値札やチラシなどにおいて、その販売価格を表示するときは消費税(地方消費税を含む)を含めた価格で表示することをいいます。

対象となる取引はあくまで消費者に対してと定められています。
よって小売段階において、総額表示義務が生じてくるので、事業者間(卸売段階)では総額表示の義務がないのです。

また、免税事業者(消費税を納める義務がない者)は総額表示義務を負うことが規定されていませんが、これは消費税法において免税事業者は取引に課される消費税が無いと考えられているためです。

それでも免税事業者の方が販売価格に消費税を上乗せして請求することはよくあることです。(免税事業者の方が消費税を上乗せして代金を請求することは、現在の法令で違法とされていません。)

総額表示の義務がないとはいえ、消費税を上乗せした価格で消費者の方に代金を請求するのであれば、消費税を含めた総額で販売価格を表示した方が親切だと考えられますね。


価格の表示方法について(10%課税のみの場合)

具体的な価格表示について、触れていきます。

本体価格を10,000円、消費税を1,000円(税率10%)とした場合、次に掲げるように価格表示をすると総額表示の義務を満たすこととなります。

  1. 11,000円
  2. 11,000円(税込)
  3. 11,000円(税抜価格10,000円)
  4. 11,000円(うち消費税額等1,000円)
  5. 11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
  6. 10,000円(税込11,000円)

これらを踏まえると、支払総額である11,000円が表示されていればOKで、参考までに税抜金額や消費税額等が表示されていても問題が無いものとされています。



価格の表示方法について(10%課税と軽減税率課税が混同する場合)

ここまでは単純に販売した商品について、10%課税のみが適用される場合を前提として価格の表示方法に触れましたが、イートインスペースがあるコンビニやテイクアウトを行っている飲食店など軽減税率課税と10%課税の双方が発生する可能性のある商品(飲食物)については、次のように表示をしなければなりません。

1.異なる税込価格を設定する場合(軽減税率用の販売価格と10%税率用の販売価格を設定するとき)

①テイクアウトと店内飲食両方の税込価格を表示する方法

例えば100円のパンを販売する場合は、

テイクアウト 108円 店内飲食 110円 と別々に表示する必要があります。

②店内掲示等を行うことを前提に、どちらか一方のみの税込価格を表示する方法

こちらの方法を採用する場合には、店内に貼り紙などで「店内飲食される場合、価格が異なります」と消費者に注意喚起をしなければなりません。

取引の前提を①と同様に100円のパンを販売する場合、店内飲食をすると価格が異なることを消費者に注意喚起しているので、軽減税率用の販売価格108円のみを表示すればよいこととされています。

2.税込価格を統一する場合(持ち帰りでも店内飲食でも販売価格を同一とするとき)

こちらの方法を採用する場合の表示方法はシンプルで、販売価格をテイクアウトでも店内飲食でも100円のパンを110円で販売するのであれば、110円とだけ表示をすれば良いこととされています。

軽減税率が絡むと価格表示の方法に手間がかかりますが、消費者に誤解を与えないようしっかりと価格表示することを心がけましょう。

総額表示義務の特例について

消費税の税率は平成26年4月1日より5%から8%に増税され、令和元年10月1日より8%から10%に増税される事となりました。この短期間で税率の改正が行われたことにより、事業者のレジ入れ替え作業や値札の張り替え作業等の事務負担が重くなることを国は憂慮しています。

そこで、総額表示義務の特例として平成25年10月1日から令和3年3月31日までの間、「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」を講じていれば税込価格を表示することを要しないこととされています。これにより、総額表示の義務を負う者であっても、誤認防止措置を講じていれば、税抜価格のみの表示を行うことができます。

なお、この特例を受けられる場合であっても、総額表示(税込表示)に対応することができる事業者は消費者の利便性に配慮する観点からできるだけ速やかに総額表示に対応するよう努めなければならないとしています。

また、「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」とは具体的に次のような価格表示をすることが求められています。(10,000円の商品を前提とします)

  1. 10,000円(税抜価格)
  2. 10,000円(本体価格)
  3. 10,000円+消費税
  4. 10,000円(税別価格)
  5. 値札等に10,000円と税抜価格のみを表示し、別途、店内の消費者が商品等を選択する際に目につきやすい場所に、「当店の価格は全て税抜価格表示となっています。」といった掲示を行う。

増税に伴う価格表示の変更に対応ができていない課税事業者の方又は免税事業者から課税事業者になられた方で、すぐに価格表示の変更に対応ができない方は、期間限定の措置ではありますが、事務負担を一旦軽減するためにも、こちらの措置の導入の検討をされてみてはいかがでしょうか。


まとめ

今回は消費税の総額表示義務について、取り上げました。

税法には税金の計算方法のみでなく、総額表示義務のような事務的なことも規定がされています。
近年では消費税率の改正が多々行われ、日本の現在の財政状態を考えると今後も消費税が増税される可能性は十分あると思われます。

その都度、このような事務負担が生じることは事業者にとって悩みの種だと思いますが、そのようなときこそ税理士という専門家にご連絡を頂ければと思います。

税理士は税金の計算だけでなく、経営管理・現場でのお悩みごとも親身になって対応致します。
この度は最後まで当記事をお読みいただきまして、誠に有難う御座いました。


参考文書

国税庁より
No.6902 「総額表示」の義務付け
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6902.htm


筆者プロフィール

伊藤 大輝(いとう たいき)

出身地:神奈川県
出身校:大原簿記情報ビジネス専門学校横浜校卒
勤務履歴:2016年9月 辻・本郷税理士法人入社

主な業務:法人顧問担当を主として、法人の株価評価に基づく資本政策も経験し、毎年の確定申告は勿論のこと、相続税申告業務にも携わっています。

URL:NEXTA(https://nexta-pro.com/
URL:https://www.ht-tax.or.jp/

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