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リース取引の会計処理とポイント

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今や企業の固定資産の調達に欠かせない手段のひとつであるリース取引は、リース会社(貸手)が、設備を調達したい会社(借手)に代わって希望する設備を新規購入し、合意された期間内で賃貸借する、という形式の取引です。

そのリース取引は、会計上「リース取引に関する会計基準」によって三種類に分けられ、それぞれに対して会計処理が定められています。

それでは三種類のリース取引はどのような基準で分けられ、そしてそれに対する会計処理はどのように行えばよいのでしょうか。これらについて説明していきます。

リース取引とは何か どんなメリットがあるのか?

コピー機や車、産業用機械から土木建設機械まで、今やリース取引は企業の固定資産の調達に欠かせない手段のひとつです。リース取引とは、リース会社(貸手)が、設備を調達したい会社(借手)に代わって希望する設備を新規購入し、合意された期間内で賃貸借する、という取引です(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」より)。原則として中途解約は不可(ノン・キャンセラブル)、また借手はリース物件の経済的利益を享受できる代わりにリース料や維持管理費といったコストを全て負担します(フルペイアウト)。リース取引は自社で購入するのに比べて初期費用が抑えられるほか、固定資産税の申告・納付など煩雑な事務手続きが必要なく、リース料が毎月一定額なのでコスト管理が容易などのメリットがあります。

リース取引における会計処理のパターン

「リース取引に関する会計基準」では、リース取引を「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に分け、それぞれ会計処理を定めています。またファイナンス・リース取引は、さらに「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に分かれます。この3種類のリース取引はそれぞれ会計処理が異なるので、しっかりと抑えておく必要があります。

ファイナンス・リース取引の会計処理

#所有権移転ファイナンス・リース取引

ファイナンス・リース取引は、その実態が金融機関から借入れをして新規に固定資産を導入したと見なされるリース取引のことです。ファイナンス・リース取引のなかでも、リース期間終了時にリース物件の所有権が借手に移転するリース取引を「所有権移転ファイナンス・リース取引」といいます。会計処理は、通常の売買取引に係る方法に準じて行われます。

所有権移転ファイナンス・リース取引の場合、リース取引開始時は、まず①リース物件の貸手の購入価額、②貸手の購入価額が明らかではない場合は、リース料総額の割引現在価値、または借手の見積現金購入価額のいずれか低い価額をリース資産として計上します。

(借方)リース資産×××(貸方)リース債務×××

リース料支払時は、借入金の返済と同じようにリース債務を減額します。また支払リース料のなかには元本相当額の返済部分のほか、利息相当額部分が含まれているのでこれを支払利息として費用計上します。支払利息は、リース債務の未返済元本残高に利率を乗じて求めます。

(借方)リース債務×××(貸方)現金預金×××
    支払利息×××

所有権移転ファイナンス・リース取引では、リース期間終了時にリース物件の所有権が移転するので、決算時は他の固定資産と同様に、経済的耐用年数をもとに減価償却を行います。

(借方)減価償却費×××(貸方)減価償却累計額×××

#所有権移転外ファイナンス・リース取引

所有権移転外ファイナンス・リース取引はリース期間が終了しても、リース物件の所有権が借手に移転しません。しかしその実態は固定資産の導入と変わらないので、会計処理は通常の売買取引に係る方法に準じて行います。所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合、リース取引開始時は、まず①リース物件の貸手の購入価額が明らかな場合はリース料総額の割引現在価値と比べていずれか低い価額、②リース物件の貸手の購入価額が明らかでない場合は、リース料総額の割引現在価値、または借手の見積現金購入価額のいずれか低い価額をリース資産として計上します。

(借方)リース資産×××(貸方)リース債務×××

リース料支払時は、所有権移転ファイナンス・リース取引と同様の仕訳を切ります。

(借方)リース債務×××(貸方)現金預金×××
    支払利息×××

所有権移転外ファイナンス・リース取引は所有権が借手に移転しないので、決算時はリース期間を耐用年数として減価償却を行います(リース期間定額法、残存価額はゼロ)。

(借方)減価償却費×××(貸方)減価償却累計額×××

オペレーティング・リース取引の会計処理

オペレーティング・リース取引とはファイナンス・リース取引以外のリース取引で、実態はレンタル取引とほぼ変わらない取引です。したがって会計処理も通常の賃貸借処理と同様の処理を行います。ファイナンス・リース取引のようにリース契約開始時にリース資産を資産計上することも、決算時に減価償却費の計算もありません。リース料支払時のみ、請求書の金額に従って以下の仕訳を切ります。
(借方)支払リース料×××(貸方)現金預金×××

リース取引の判定基準について

#ファイナンス・リースの判定基準

とあるリース取引が、3種類あるリース取引のうちどの取引に該当するのかは、リース契約上の諸条件と実態に合わせて判定しなければなりません。ファイナンス・リースの判定基準としては「中途解約不能」かつ「フルペイアウト」なリース取引であれば「ファイナンス・リース取引」、それ以外であれば「オペレーティング・リース取引」と判定します。具体的には以下の2つの基準のいずれかを満たした場合にファイナンス・リース取引と判定されます。

1.現在価値基準

解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、借手が当該物件を現金で購入したと仮定した場合の見積金額の概ね90%以上であること(現在価値基準の判定にあたっては、リース物件にかかる固定資産税や保険料など維持管理費用相当額はリース料総額から控除)。リース料総額の現在価値は、貸手の計算利子率(これを知り得ない場合は借手の追加借入利子率)を用いてリース料総額を現在価値に割り引き、これを算定します。

例えば、解約不能のリース期間を3年、経済的耐用年数は5年、リース料は年10000円(リース料総額は30000円)、借手の見積現金購入価額を26000円、借手の追加借入利子率を8%(借手は貸手の計算利子率を知り得ない)とすると、現在価値基準の判定は以下のようになります。

・10000/(1+0.08)+10000/(1+0.08)²+10000/(1+0.08)³=25770円
・25770円(リース料総額の現在価値)/26000円(借手の見積現金購入価額)=99.1%≧90%※当該リース取引は現在価値基準を満たす

2.経済的耐用年数基準

解約不能のリース期間がリース物件の経済的耐用年数の概ね75%であること。上記の例を用いると、経済的耐用年数基準の判定は以下のようになります。

・3年(解約不能のリース期間)/5年(経済的耐用年数)=60%<75%※当該リース取引は経済的耐用年数基準を満たさない

上記の例の場合、現在価値基準と経済的耐用年数基準、2つの基準のうち現在価値基準を満たしているので、ファイナンス・リース取引であると判定されます。

#所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引の判定基準

ファイナンス・リース取引は「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に分類されます。具体的には、以下の3つのリース取引のうち、いずれかに該当すれば所有権移転ファイナンス・リース取引に、それ以外であれば所有権移転外ファイナンス・リース取引になります。

1.譲渡条件付(所有権移転条項付)リース取引

リース期間終了時または中途において、貸手の所有権が借手に移転すると契約で定められたリース取引

2.割安購入選択権付リース取引

リース期間終了時または中途において、名目的な価額またはその権利を行使した時点のリース物件の価額に比べて著しく有利な価額で買い取ることができる権利を付されたリース取引

3.特別仕様物件のリース取引

リース物件が借手の用途や設置場所の状況にあわせた特別仕様になっているため借手以外の第三者にリースまたは売却することが困難なリース取引


所有権移転ファイナンス・リース取引は原則として売買処理を行います。ただし、①リース期間が1年以内、または②少額資産のリース取引のいずれかに該当する場合は賃貸借処理を行うことができます。所有権移転外ファイナンス・リースの場合も原則として売買処理を行いますが、①、②に加えて③リース料総額が300万円以下で重要性が乏しいリース取引、のいずれかに該当すれば賃貸借処理が認められます。なお、オペレーティング・リース取引は原則として賃貸借処理を行います。

さらに、所有権移転外ファイナンス・リースの場合、有形および無形固定資産における未経過リース料の期末残高割合が10%未満であれば、①支払リース料から利息相当額部分を控除せずに計上する、または②利息相当額の総額をリース期間中に定額で配分する、といった簡便な会計処理が認められます。

新リース会計基準について

2019年1月1日から、IFRS(国際会計基準)と米国会計基準において「新リース会計基準」の強制適用が開始されました。新リース会計基準ではファイナンス・リースとオペレーティング・リースという区分は廃止され、原則として全てのリース取引が資産計上されます(少額、または短期のリース取引をのぞく)。日本の会計基準に導入されるのはまだ先ですが、今後の動向に注意する必要があります。

自社のリース取引を今一度見直してみよう

リース取引の判定基準は大変複雑なので、ファイナンス・リース取引の判定が甘めになってしまうこともたびたびあります。ファイナンス・リース取引に当たるのかオペレーティング・リース取引になるのか不明な場合は、早めに監査法人や顧問会計事務所と相談することをおすすめします。また、新リース会計基準が導入されることを見込んで自社のリース取引を今一度洗い出しておきましょう。早めに対策を立てておくことで、いざ導入されても混乱が最小限で済みます。

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