バックオフィス業務のお悩みや、PCAの業務ソフトをお使いの皆様の
お悩み解決を提供する総合サイト

第11回 経理の特性を活かしてメンターを目指す

『メンターになる人、老害になる人。』~人材不足の時代に求められる令和の経理マネジメントとは~

更新日:2025/12/23

先輩・後輩

「経理」という仕事の特性

「経理」という仕事は、職種柄、「メンターになりやすい」か、それとも「老害になりやすい」か、皆さんはどちらだと思うでしょうか。私は「ある1点」を除いては、経理はメンターになりやすく、老害になりにくい職種ではないかと思います。
経理という仕事は、いきなり経理業務が発生するものではなく、常に「何か」があって、それに対応する仕事です。たとえば誰かが「起業をしたい」と考えたら「誰か経理をやってくれる人を探さなければ」となり、初めて経理が登場します。起業した後も、営業部門がモノやサービスをたくさん売れば売るほど、入金管理をする人が必要となり、売上に比例して経理社員を増員します。常に「何か主体的なものがあり、それに応じて経理が必要となる」ので、経理が主役というシチュエーションが少なく、「主役である相手に合わせる」という役回りが中心となります。そのため、経理を長年真面目に取り組んでいれば、おのずと主役を立てて自分は言うべきときは言うが、下がるところは下がる、という人間形成ができ、仲間にとっての「数字やお金に関するメンター」となるのではないかと思います。

実績のある人が放つ「上から目線」の言動ほど、誰も止められない

それを裏付けるように、私の周囲の方達に「職場で老害をする人はどのような人ですか」と調査をしたところ、多くの人がその特徴の一つに「どんなことでも自分を主役にしたがる」という回答をしています。つまり職務上、主役の立場になりやすい社長、役員、営業などの方達は、たとえ人格者であっても、主役になりやすい「中心的立ち位置」のせいで、老害になりやすいリスクを抱えているので常に気を付けていなければいけないということです。たとえば人格者のメンターの営業部長でしたら「経理を含め皆さんのサポートがあって私たちは良い仕事ができているよ」と、普段は周囲を立てた謙虚な発言をするところを、本当に予算を達成することが大変で営業部長一人が孤軍奮闘されていたら、つい油断をすると「いつも私一人だけが頑張って、部下たちや経理などの売上を持たない人達を養ってあげているんだからさ…」と、上から目線で、自分を主語とした発言をしてしまうことがあるということです。これが事実でなければ「営業部長は何を言ってるんだか…」と苦笑いして聞き流すことができるのですが、実際に営業部長がそれだけ稼いでいる事実がある場合、誰もその発言に逆らえず「おっしゃる通りですね」と言わざるをえなくなり、それに対して営業部長も「そうだろう!もっと感謝しろよ!」と、どんどんエスカレートしていき「老害への道」へと暴走していきかねないということです。

経理が老害化しないよう気を付けるべきポイントとは

一方、経理にはそのようなシチュエーションは全くないかといったら、1点あります。それは「お金や数字に詳しい」という点です。
昨年、老害に関する本を出版した際、読んでいただいた周囲の年長者の方達から「うちのマンションの理事長がまさにこの本に出てくる老害の人そのものだよ」と5、6人の人たちから口々に言われました。皆さん別々のマンションの住人です。聞くところによると、マンションの理事として理事会に出席すると、理事長が会計報告の説明の際に、「何であなたたちは理事のくせにこんな簡単な会計報告の数字の見方もわからないんですか」と叱責され、いつも理事長が私を馬鹿にしてくる、というのです。そしてそれぞれのマンションの理事長の方達は全員、元金融機関出身で華々しい経歴をお持ちの方だそうです。

そもそもマンションの理事長という面倒な仕事もたくさんありますので、普通の住人は「できれば引き受けたくない」人のほうが多いのではないでしょうか。そのような役割を引き受けてくれるということは「面倒見のいい」「責任感のある」「正義感の強い」方のはずです。しかもある程度、数字の知識もないといけませんから、おのずと金融系の企業のご出身の真面目で計数感覚に長けた方が就任しがちになるということなのでしょう。しかし、マンションのほかの理事の住人たちは、そこまで会計知識に富む方は少ないでしょうし、何より「マンションの理事会は大企業の取締役会じゃないのだから、もう少し和気あいあいとやりましょうよ」というつもりで理事会に出席している方も多いはずです。

そのような様子を見ていて、理事長が「あなたたちがそんな風にのんびりしているから、修繕積立金が足らなくなって今困っているんですよ!どうして私一人がこんなに考えなきゃいけないんですか!」と危機感を持って皆に怒っているのではないのだろうか、と想像してしまうのです。そのような流れで理事会が終わると、理事たちは「理事長って、少し自分が頭がいいからって私達のことを小馬鹿にしてね…」となっているのだろうなと思うのです。

冒頭で触れた「経理が老害になる可能性がある1点」とは、経理が現場社員に「どうしてこんな簡単な経理処理一つできないんですか」と、なじったり、直接は言わなくても経理部内で「本当にうちの会社の人たちって数字のことわかってないよね」と愚痴ったり、そのように「上から目線」で「批評」してしまう恐れがあるということです。これは経理という仕事が「チェック機能」を備えた職種だからともいえます。日頃から人をチェックするような職業、職種の人は、意識して気を付けていないと、職業病で人への批評癖、批判癖、上から目線な言動が顔を覗かせます。経理という仕事をやっていれば、数字に詳しくなり、そして得意になるのは当たり前のことで、そうでなかったら逆に困ります。当たり前のことなのに「自分たちは優秀で、相手は劣っている」という視点を持つこと、これがまさに老害の特徴です。私達経理は数字のプロとして、そのような言動をすることなく、会社のお金に関する知見を、仲間のために活用し、支えていくメンターとしてこれからも活躍していきましょう。

この記事の執筆者
前田 康二郎
前田 康二郎(まえだ こうじろう)

流創株式会社代表取締役
エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。