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第10回 「自責思考」でメンター経理を目指す

『メンターになる人、老害になる人。』~人材不足の時代に求められる令和の経理マネジメントとは~

更新日:2025/11/25

先輩・後輩

何でも他責する経理の部下

皆さんには一緒に仕事をしていて「苦手だなあ」と思うタイプの人はいるでしょうか?私は「何でも他責する人」が得意ではありません。会社員時代、私は「他責する部下」との人間関係の構築にとても苦労しました。

ある日、他責する部下のAさんが「自分の仕事量が多すぎて終わらないから、私のためのサブの担当者を採用してほしい」と言ってきました。Aさんの言い分としては「自分はちゃんとやっているのに、会社の設備環境が悪い、現場の社員が申請を出してくるのが遅い、それから…」と、とにかく自分は悪くない、もっと良い環境なら自分はデキるのだから、自分をサポートする人を入れてほしいと言うのです。もし私がAさんと同じ立場でしたら、まず自分の経理業務のやり方や、現場社員とのコミュニケ―ションを改善して、それでもなお業務が回らない場合は人を入れてほしい、と言うだろうと思い、私はAさんに、これまでそのような試みはしたのか尋ねたところ、口ごもってしまいました。そのため、その場では「一旦今私が言ったようなことを改善してみて、それでも難しかったら人を入れることを検討するので報告してください」と伝えてその場は終わりました。

翌日、Aさんの喫煙仲間のBさんが私の席に来ました。「Aさんが前田さんの悪口を喫煙室で言いふらしていましたけど、大丈夫ですか?」と言いに来たのです。喫煙者の方達の中には、煙草を吸わない社員は、喫煙所で誰がどのような話をしているかなどわからないだろうと思って非喫煙者の社員や役員の愚痴を言っている人がいるのですが、実は大間違いです。非喫煙者でも普通に喫煙者とのコミュニケーションはありますので、「あ、前田さんは煙草吸わないからこのこと教えてあげなきゃ」とわざわざ私のところにまで教えに来てくれる喫煙者はいるということなのです。経理という部署も似たようなところがあるのではないでしょうか。経理社員は、周囲から見ると上層部や現場などの最新情報からは一見遠い位置にいるように見えるので、「前田さんは経理だから聞いてないだろうけどさ、今度こういうことがあるらしいよ…」と皆がこぞって「知らないだろうから」と私や私の経理の部下たちに親切に教えてくれるので、結果的に経理社員は意外と社内の情報通になってしまうことがあります。

話を戻しますが、Aさんは私の部下でしたが、私より年上でした。そのことも私が上司としてAさんには「前田は上司として未熟だ」という不満を募らせたようです。私も当時まだ若かったので、Aさんに対して円満に対処する方法が見つけられず、これ以上私とAさんが不仲になって周囲に悪影響が出てもいけないと思い、私のほうが折れて私が全て求人や採用面談などの段取りをしてCさんという社員を採用しました。

他責する部下の言う通りにして良いことは「ない」

ところが今度は「前田さんが採用した社員が使えない!」「私に嫌がらせをするためにこんな社員を採用した!」とAさんが騒ぎ始めました。新たに採用したCさんの名誉のために補足をしますと、Cさんは簿記の資格もあり、社会人経験もあるのですが、それまでは現場部門しか経験がなく、経理の実務は今回初めてという社員でした。だから社内の日常的なルールを一通り教えてあげれば、経理の仕訳入力なども問題なくでき、私も問題なくCさんと仕事はできていました。ところがAさんは、Cさんを「こんな用語も知らない」「気が利かない」「理解が遅い」「世話する時間がかかって余計大変になった」と、全てを他責し「自分は悪くない」という態度を最後まで改めませんでした。

私はしばらくしてその会社を退職しましたので、今Aさんがどうされているかは存じませんが、Aさんを見て気付いたことは、老害やハラスメントをする人というのは皆「他責する人」だなということです。きっとAさんが出世をして権力を得た際には、「なんでできないんだ!」「どうして私の言うことが理解できないんだ!」「どいつもこいつも使えない!」と部下に当たり散らし、モラルハラスメント・パワーハラスメントを行う老害となり、部下が入っては辞め、入っては辞め、を繰り返していることでしょう。

他責思考の老害社員は会社の数字を押し下げる

そのように考えると、「他責」とは反対に「自責」をしてみると、良さそうなことがある気がします。部下とのコミュニケーションの齟齬があっても、「どう考えても100対0で部下の言っていることがおかしい気がするのだけれど、それでもどうすればよかったのだろう」と一旦自責して考えることで冷静になり、感情的に部下を汚い言葉でののしったりするようなハラスメントをすることはまず起こさなくなります。ハラスメントや老害をする人は「自分は悪くない=つまり相手が悪い、指導してあげなきゃ」と反射的に高圧的な言動に出てしまいます。

そして他責をする人は、何でも他者のせいにするので、採用をはじめ、とにかくお金がかかることを言います。さらに本人に日常的に気を遣わないと機嫌を損ねます。自責する人だったら1円もかからないところを、他責気質の人その人一人のためだけに「お金」を会社に使わせ、「気」も部下たちに遣わせ、部下たちが仕事や休息に充てる時間をつぶしてしまいます。これを経理の観点から見て皆さんはどう分析するでしょうか。まさしく他責をする人は利益を押し下げてしまう行為を日常的にしている人材ということです。

老害やハラスメントといった問題は、デリケートな問題ですが、このように経理的側面から、経理部門が「老害やハラスメント、他責思考は、会社の数字を下げる要因ですから辞めましょう」と社内でプレゼンテーションをすれば、社長も「なるほど、さすが経理」と認めていただけると思います。経理社員が社内の手本として、まず自ら「自責思考」の習慣を身につけ、それを啓蒙していくことで社内の風紀も数字も改善することができることでしょう。

この記事の執筆者
前田 康二郎
前田 康二郎(まえだ こうじろう)

流創株式会社代表取締役
エイベックスなど数社で管理業務全般に従事し、サニーサイドアップでは経理部長として株式上場を達成。その後中国・深センでの駐在業務の後、独立。現在は利益改善、コンプライアンス改善、社風改善の社員研修、コンサルティング、講演、執筆活動などを行っている。著書に『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)、『社長になる人のための経理とお金のキホン』(日経BP 日本経済新聞出版)、他多数。