更新日:2026/10/09
2027年4月から、現在8%の軽減税率が適用されている食品について、消費税率を1%へ引き下げる改正が予定されています。対象となるのは、原則として現在の軽減税率の対象である酒類・外食を除く飲食料品で、2029年3月末までの2年間の時限措置です。
食品消費税率の引下げは、消費者だけでなく企業の経理・販売業務にも影響します。食品を扱う事業者では、1%・8%・10%の複数税率への対応や、インボイス、会計・販売システムなどの見直しが必要になる可能性があります。
この記事では、食品消費税率1%への変更内容や課税事業者・免税事業者への影響を整理するとともに、企業や経理担当者が準備しておきたいポイントを解説します。
食品消費税率の引下げ改正案では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、食品消費税率が1%となります。
対象となるのは、原則として現在の軽減税率の対象となっている「酒類・外食を除く飲食料品」です。(参考:消費税率引下げ特設サイト|国税庁)
| 区分 | 現在 | 2027年4月1日~2029年3月31日 |
|---|---|---|
| 酒類・外食を除く食品 | 8% | 1% |
| 定期購読契約による一定の新聞 | 8% | 8% |
| 外食・酒類・その他の商品やサービス | 10% | 10% |
参考:飲食料品に係る2年間の消費税率引き下げについて(PDF)|国税庁 令和8年9月)
制度開始後はすべての軽減税率が1%になるわけではなく、取引によって1%・8%・10%を使い分ける必要があります。
現在の消費税率は、標準税率10%と軽減税率8%の2種類です。食品については、酒類や外食を除き8%の軽減税率が適用されています。
改正案では、2027年4月1日から、この食品消費税率が1%へ引き下げられます。ただし、対象範囲が食品全般へ広がるわけではありません。
たとえば、スーパーやコンビニなどで購入して持ち帰る食品や、テイクアウト・出前などは原則1%の対象となる一方、飲食設備のある店舗での店内飲食は外食に当たるため10%のままです。
また、酒類についても1%の対象にはなりません。
つまり、飲食店や食品を扱う小売事業者などでは、同じ商品を扱っていても販売方法によって適用税率が異なるケースがあります。
食品消費税率をめぐっては0%とする案も検討されていましたが、最終的な改正案では1%とされています。その背景の一つとして、0%税率を導入した場合のシステム対応が挙げられます。
政府の検討資料では、既存のレジや会計システムの中には「0」を税率として入力できないものや、税率0%の取引を非課税取引として処理してしまうものがあると指摘されています。
こうした場合、インボイスの発行や仕入税額控除などの処理にも影響する可能性があります。
そのため、現行の消費税制度を維持しながら税負担を大幅に軽減する方法として、改正案では食品消費税率を1%とする仕組みが採用されています。
なお、政府が「システム対応だけを理由として1%にした」と説明しているわけではないため、1%となった理由は制度全体の設計を踏まえて捉える必要があります。
食品消費税率は1%となる予定ですが、政府は今回の措置について「全体として飲食料品に係る消費税の実質ゼロ化」を実現すると説明しています。
これは、税率そのものを0%にするという意味ではありません。
政府は、2027年4月から食品消費税率を1%に引き下げるとともに、その1%相当分の範囲内で「所得に連動したきめ細かな給付」を先行導入する方針です。
税率の引下げと給付を組み合わせることで、家計負担全体として実質的なゼロ化を目指します。
企業や経理担当者にとって重要なのは、「実質ゼロ」であっても、税務・経理上の税率はあくまで1%になるという点です。
食品を販売・仕入れする際は1%の課税取引として処理し、帳簿やインボイス、会計システムなども1%税率に対応する必要があります。
詳しい対応については、記事の後半でご紹介します。
食品消費税率が1%になると、課税事業者では売上時に預かる消費税額だけでなく、仕入れ時に支払う消費税額も変わります。
消費税の納付税額は、原則として「売上にかかる消費税額-仕入れにかかる消費税額」で計算します。そのため、食品を販売する事業者と店内飲食を提供する飲食店では、税率引下げによる影響が異なります。
食品を販売する課税事業者では、売上にかかる消費税率が8%から1%へ下がる一方、設備や備品、サービスなどの仕入れには10%が適用されるものもあります。
その結果、売上にかかる消費税額よりも仕入れにかかる消費税額の方が大きくなれば、消費税の還付を受けられる可能性があります。
たとえば、食品販売事業者が次のような取引を行ったとします。
この場合、仕入れにかかる消費税額は合計25万円となり、売上にかかる消費税額10万円を上回ります。実際の税額計算にはほかの取引なども含まれますが、食品の売上税率が1%になることで、仕入税額の方が大きくなるケースが生じやすくなるのです。
ただし、還付を受けられるかどうかは、課税方式や実際の取引内容によって異なります。
簡易課税制度では実際の仕入税額を使って計算しないため、本則課税とは影響が異なります。今回の改正では、1%対象となる食品の販売について、売上税額と同額の仕入税額を計上する特例も設けられる予定です。
(参考:消費税率引下げ特設サイト|国税庁)飲食店では、食品消費税率の引下げがかえって消費税の納付額を増やすケースがあります。ただし飲食店への影響は、店内飲食とテイクアウトの売上割合や仕入れの内容、課税方式などによって異なります。
店内で提供する飲食は「外食」にあたるため、2027年4月以降も売上には10%の消費税率が適用されます。一方、食材の仕入れについては食品消費税率1%が適用されるため、仕入れ時に支払う消費税額は現在より少なくなります。
たとえば、税抜300万円分の食材を仕入れた場合、現在の税率8%であれば食材にかかる消費税額は24万円ですが、1%では3万円です。
ほかの条件が同じであれば、仕入税額控除として差し引ける金額が小さくなるため、確定申告時の納付税額が増える可能性があります。
| 項目 | 現在 | 2027年4月以降 |
|---|---|---|
| 食材の仕入れ300万円 | 消費税24万円(8%) | 消費税3万円(1%) |
| 店内飲食の売上 | 10% | 10% |
| テイクアウト・出前の売上 | 8% | 1% |
一方、テイクアウトや出前などの売上には1%が適用される予定です。
食品消費税率の引下げを検討する政府の実務者会議でも、外食産業について、食材にかかる仕入税額が小さくなることで、確定申告時の納付税額が大きくなる可能性が指摘されています。
飲食料品を販売する簡易課税事業者については、一定の要件のもとで課税期間の途中でも本則課税へ切り替えられる特例が予定されています。還付の可能性がある事業者は、現在の課税方式が適しているか確認しておくとよいでしょう。
(参考:消費税率引下げ特設サイト|国税庁)免税事業者は、原則として消費税の申告・納付義務がありません。そのため、食品消費税率が1%に引き下げられても、課税事業者と同じように納付税額が直接変わるわけではありません。
一方で、販売価格や利益、課税事業者へ転換するかどうかといった経営判断には影響が及ぶ可能性があります。特に、食品を扱う免税事業者では、仕入れに含まれる消費税と販売価格のバランスを見直す必要が出てきます。
免税事業者は、仕入れ時に消費税を支払っていても、仕入税額控除や消費税の還付を受けることができません。
たとえば、食品の販売価格について税率引下げ分を反映して税込価格を下げた一方で、設備費や光熱費、各種サービスなど10%の消費税がかかる経費が変わらなければ、その分だけ利益が圧迫される可能性があります。
特に、仕入れや経費に占める10%課税の割合が高い事業者では、食品消費税率が1%になったからといって、負担が同じ割合で軽くなるとは限りません。
食品消費税率が8%から1%へ下がっても、税率差の7%分を必ずそのまま販売価格から引き下げなければならないわけではありません。実際の販売価格は、仕入価格や人件費、物流費などを踏まえて各事業者が設定します。
そのため、免税事業者では税率変更後の税込価格をどのように設定するか検討する必要があります。
食品を消費者向けに販売している場合は、店頭やECサイト、メニュー、カタログなどの価格表示も確認し、2027年4月の変更に合わせて修正しておきましょう。
食品を扱う免税事業者では、食品消費税率の引下げをきっかけに、課税事業者へ転換するかどうかを検討するケースも考えられます。
免税事業者のままでは、仕入れにかかった消費税額が売上にかかる消費税額を上回ったとしても、還付を受けることはできません。
一方、課税事業者を選択すれば(※)、取引内容によっては消費税の還付を受けられる可能性があります。
※免税事業者が課税事業者になる場合は、原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。
今回の食品消費税率引下げにあたっては、飲食料品を販売する事業者を対象に、この届出書の提出時期に関する特例も設けられる予定です。ただし、課税事業者になると消費税の申告・納付やインボイスへの対応など、新たな事務負担も発生します。
還付の有無だけで判断するのではなく、仕入れ・売上の税率構成や事務負担まで含めて、自社にとってどちらが適しているか検討することが重要です。

食品消費税率が1%になると、経理担当者は新しい税率での仕訳やインボイスへの対応が必要になります。
特に、2027年4月以降は食品の1%に加えて、定期購読契約による一定の新聞などに適用される8%、標準税率10%が併存します。経理処理では、それぞれの取引にどの税率が適用されるのかを正しく区分することが重要です。
現在は8%と10%の2種類ですが、2027年4月以降は、主に次の3種類の税率を扱うことになります。
| 税率 | 主な対象 |
|---|---|
| 1% | 酒類・外食を除く食品 |
| 8% | 定期購読契約による一定の新聞、経過措置の対象となる一部の飲食料品 |
| 10% | 外食・酒類・その他の商品やサービス |
消費税の納付税額を計算する際は、売上と仕入れを税率ごとに区分する必要があります。
たとえば、飲食店では店内飲食は10%、テイクアウトは1%となるため、同じ商品でも提供方法によって異なる税率で処理しなければなりません。また、食品の仕入れと10%が適用される備品・サービスなどが混在する企業では、仕入れ側でも税率を正確に区分する必要があります。
そのため、経理担当者は2027年4月までに、自社で扱う商品や取引ごとの適用税率を整理し、会計・販売管理システムの商品マスターや税区分が適切に設定されているか確認しておくことが大切です。
食品消費税率が1%になると、インボイスにも新しい税率を反映する必要があります。
1%対象の取引については、適用税率や税率ごとの消費税額などを1%として記載できるよう、請求書やレシートの様式を確認しておかなければなりません。
また、影響するのは会計ソフトだけではありません。企業によっては、次のようなシステムや設定の変更が必要になります。
特に複数のシステムを連携している企業では、一部だけ税率設定を変更すると、請求書と会計データで税率や税額が一致しないといったトラブルにつながる可能性があります。
また、食品消費税率1%は2029年3月31日までの時限措置です。
そのため、2027年4月の1%への変更だけでなく、2029年4月に措置が終了した場合の再変更まで見据えてシステム対応を確認しておくことが重要です。
システム会社によるアップデートが必要な場合もあるため、使用している会計・販売管理ソフトなどが新税率に対応する予定か、対応時期や設定方法を早めに確認しておきましょう。
食品消費税率1%への変更に対応するには、販売時の税率設定から請求書の発行、仕訳、消費税計算まで、複数の業務を正しく連携させる必要があります。
『PCA Arch』は、財務経理・人事労務・販売管理をワンストップでサポートする基幹業務クラウドサービスです。
なかでも『PCA Arch 販売管理』と『PCA Arch 財務経理』をリンクさせると、販売・仕入から会計処理まで一連の業務を効率化できます。
クラウドサービスのため、自社で大規模なシステム改修を行う負担を抑えながら、税制改正に合わせた環境を利用できる点もメリットです。
『PCA Arch 販売管理』では、販売・仕入・在庫管理や請求書発行などの業務をまとめて管理できます。食品消費税率1%への変更後も、商品や取引に応じた税率を設定し、複数税率が混在する販売・仕入業務に対応可能です。
一方、『PCA Arch 財務経理』では、税区分の管理や消費税の自動計算、消費税申告書の作成・電子申告に対応しています。
販売管理から会計まで連携することで、税率変更に伴う転記や確認作業の負担を抑えやすくなります。
また、『PCA Arch』では、財務経理・販売管理・人事労務を同じプラットフォーム上で利用できます。必要に応じて人事労務まで連携すれば、経理だけでなく給与計算や人事管理を含めたバックオフィス業務全体の効率化にもつなげられます。
食品消費税率1%は、2029年3月31日までの2年間の時限措置として予定されています。
そのため、制度が予定どおり終了した場合には、2029年4月から再び税率変更への対応が必要です。
『PCA Arch』なら、法改正に応じたアップデートも、追加費用なしで対応可能です。
2027年の1%への変更だけでなく、2029年の時限措置終了時にも安心してご利用いただけます。
食品消費税率の変更を機に販売・経理業務を見直したい企業様は、『PCA Arch』でバックオフィス業務をまとめて効率化することも検討してみてはいかがでしょうか。
食品消費税率1%への変更について、企業や経理担当者が疑問を持ちやすいポイントをまとめています。
はい。テイクアウトや出前・宅配は「外食」には当たらず、現在も軽減税率8%の対象です。2027年4月から予定されている食品消費税率1%への変更後は、これらも原則として1%になります。
一方、店内の飲食設備を利用して提供される飲食は外食に該当するため、10%のままです。
そのため、店内飲食とテイクアウトの両方を扱う飲食店では、同じ商品でも提供方法によって1%と10%を使い分ける必要があります。
現在公表されている制度では、食品消費税率1%は2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間の時限措置です。したがって、制度が予定どおり終了すれば、2029年4月以降は食品の税率が8%へ戻ることになります。
ただし、2029年時点で制度内容が変更される可能性もあるため、企業や経理担当者は時限措置の終了が近づいた段階で、国税庁などの最新情報を改めて確認する必要があります。
必ずしも、販売価格が税率差の7%分だけ下がるとは限りません。
消費税率が8%から1%へ下がっても、商品の税抜価格そのものまで一定割合で引き下げることが義務付けられるわけではありません。実際の販売価格は、仕入価格や人件費、物流費なども踏まえて各事業者が設定します。
そのため、食品消費税率が1%になった場合でも、商品ごとの価格がどの程度変わるかは事業者によって異なります。
企業側では、税率変更に合わせて税込価格をどのように設定するか検討するとともに、店頭表示やECサイト、商品マスターなどの価格情報も必要に応じて見直しましょう。
食品消費税率変更後は、食品1%・一定の新聞8%・外食や酒類など10%の複数税率に対応する必要があり、企業によっては消費税の還付や納付額、価格設定にも影響が生じます。
特に経理担当者は、自社の取引に適用される税率を整理し、インボイスや商品マスター、会計・販売管理システムが新税率に対応できるか確認しておくことが重要です。
制度の成立状況や詳細を最新情報で確認しながら、2027年4月までに対象取引の洗い出しとシステム・価格設定の見直しを進めておきましょう。