更新日:2025/02/21
事業活動で発生する支出は経費として扱われますが、時には従業員が立て替えたり、企業が仮払いをして先に支払いを行なったりするケースがあります。
こうしたケースでは「経費精算」を行いますが、そもそも経費精算にはどのような種類があり、どんな費用が経費と認められるのでしょうか?
本記事では経費精算の基礎知識を始め、経費精算の流れや紙・Excelの経費精算業務における課題をご紹介します。また経費精算を効率化するポイントや、経費精算システムを選ぶ際のポイントについても解説していますので、ぜひご参考にしてみてください。
経費とは、企業や組織が事業活動を行う上で必要となる支出(経常費用)のことです。
経費には顧客訪問のための旅費交通費や出張費、新しい取引先との関係構築にかかる接待費、事務用品や備品等の消耗品費などがあります。
広義で見れば、従業員に支払う人件費、賃貸オフィスを利用する際の賃料や水道光熱費等の費用についても経費に含まれます。これらの支出は、事業活動を円滑に進めるために重要なものとなっています。
また正しい税務処理や財務健全性の維持には、正確な経費管理が必要です。
企業は事業等で得た「収益」から経費を差し引いた残りを「経常利益」として扱い、そこから税金や特別損益などを差し引いた金額を「純利益」として計上します。
これは経費の額に誤りがあると経常利益、純利益にもズレが生じ、正確な財務・税務処理ができなくなるということでもあります。よって経費計上においては、経費の範囲・対象を誤らないことと共に、経費精算を正しく行うことが求められているのです。
経費精算とは、従業員が業務上で立て替えた費用や、会社から仮払いを受けた費用を精算する手続きを指します。
経費精算では企業が代金を大まかに仮払いし、後から調整・精算を行う場合と、従業員が業務上必要に応じて立替払いを行う場合があります。
例えば「業務に必要な消耗品を従業員が外回り中に購入した」という場合は後者にあたります。
後者のケースでは従業員が支払った内容・金額を確認し、立て替え分を企業が精算(金銭の払い戻し)することで、従業員が経済的負担を抱えずに済むというわけです。
また適切な経費精算は、企業の経理業務の効率化や不正経費申請の防止にもつながります。財務上の健全性を保持するためにも、経費精算は重要な業務なのです。
経費精算には主に「仮払い」と「立替払い」の2種類があります。
その上で経費精算は「小口精算」「交通費精算」「旅費精算」に細分化されます。
仮払い精算とは、予測される費用を業務遂行前に従業員へ事前に支払う(仮払いする)形式です。
例えば長期出張や高額な備品等の購入など、ある程度高額が予想される場合には仮払い精算が適しています。この場合仮払い精算で一旦従業員へ費用を支払ったあとに正しい金額を計算し、増減等の調整を行います。
一方立替払いとは、従業員が自分の資金で必要な費用を支払い、その後会社に申請して払い戻しを受ける形式です。立替払いは、小額の支出や予測が難しい費用に対応する場合に多く用いられます。
小口精算、交通費精算、旅費精算は目的や用途に応じて使い分けられます。企業ではそれぞれ異なる様式で申請するケースが多く見られます。
通常の業務で使う消耗品等の購入に使われる。少額の支払いを小口現金(※)で精算処理すること
※支払い用として手元で管理する少額の現金のこと
ただし、最近は法人クレジットカードの利用が普及し、小口精算を廃止する企業が増加傾向にあります。
取引先訪問等で利用するタクシー代、電車代など、少額の交通費の精算処理のこと
遠方地域への出張等で生じる移動費用(新幹線代や飛行機代など)、ホテル等の宿泊費など、高額の旅費の精算処理を指す
経費精算書を作成する際には、支出の正確な記録が重要です。証憑類(領収書や請求書)を添付し、支出内容、金額、日付を明確に記載します。
経費精算の種類 | 様式と項目の例 |
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仮払い精算 |
仮払いで費用を事前に渡す場合は「仮払経費申請書」を、経費精算の際には「仮払経費精算書」を作成します。
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立替払い精算 |
従業員が立替払いをして備品等を購入した場合は、「立替経費精算書」等の様式で精算を行います。 立替経費精算書には証憑類(領収書や請求書)を添付し、
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小口精算 |
少額の備品や消耗品を購入した場合に特化して使用します。 内容は立替払い精算とほぼ同様で、
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交通費精算 |
交通費の精算には「交通費精算書」を使用します。 交通費精算書には
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出張・旅費精算 |
出張等の旅費については、「出張旅費精算書」等のフォーマットを使用します。この様式では以下の項目を記載します。
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※様式名や記載項目は企業によって異なる場合があります
事業運営にかかる費用は経費として計上できますが、全ての費用が経費として認められるわけではありません。経費対象になる費用や経費の対象外となる費用を把握し、誤った経費計上・経費精算を防ぎましょう。
経費として認められる費用には以下が挙げられます。
【経費の対象となる費用の例】
旅費交通費 | 顧客訪問や出張などの業務移動で利用した電車やバス、タクシー、宿泊施設の利用費など |
通信費 | 業務に必要な電話料金やインターネット使用料 |
交際費 | 手土産や年末年始の挨拶品の購入費用、冠婚葬祭費用など |
飲食接待費 | 取引先との会食、接待にかかる飲食代など |
消耗品費 | 文房具やプリンターのインクカートリッジなど、業務用備品の購入費用 |
研修費 | セミナー参加費用や社内研修の費用など |
広告宣伝費 | メディアへの出稿費、販促物の作成費用など |
新聞図書費 | 資料など業務に必要な書籍、定期購読代の書籍費用など |
これらの費用は、業務上の必要性が証明できる場合に経費として認められます。
経費と認められるかどうかは、支出が業務に直接関連しているかどうかで判断されます。
よって以下のような費用は経費として認められず、経費精算の対象外となります。
個人的な支出 | プライベートな買い物や個人用の飲食費 |
不適切な支出 | 業務に関係のない高額な贈答品や娯楽費 |
法律に違反する支出 | 税法上認められていない費用(例:架空経費) |
法人税 | 法人税は経費の対象外となります。 |
経費精算の基本的な流れは以下のとおりです。仮払い、立替払いの2つについてご紹介します。
仮払いの場合は以下の流れで経費の仮払いと精算を行います。
1.申請書の提出 | 事前に必要な金額を明記した仮払い申請書を提出します。支出の目的や予定日を詳細に記載することが重要です。 |
2.承認 | 上司や経理部門が内容を確認し、適正であると判断した場合に承認が行われます。 |
3.支払い | 承認後、指定された仮払い金が従業員に支給されます。 |
4.実績報告 | 業務終了後、実際に使用した金額を仮払経費精算書に記入し、領収書等の証憑を添えて報告します。 |
5.精算 | 仮払い金と実際の費用との差額を計算し、過不足分を精算します。 |
立替払いの場合は従業員による立替払いが終わった後、経費精算書を提出して精算が行われます。
1.支払い | 従業員が業務に必要な費用を自費で支払います。 |
2.証憑の保管 | 領収書等の証憑を整理し、紛失を防ぐため適切に保管します。 香典やご祝儀など、領収書が発行されない場合は出金伝票を作成します。 |
3.精算申請 | 立替経費精算書に詳細を記入し、証憑を添付して経理部門に提出します。 |
4.承認 | 申請内容を確認し、問題がなければ承認が行われます。 |
5.払い戻し | 承認後、従業員の口座に費用が振り込まれます。 |
経費精算で使用された証憑(領収書等)は、税務上の要件を満たすために原則として7年間保管する必要があります(※欠損金の繰越がある場合は10年間保存が必要)。
保管は紙媒体のほか、電子帳簿保存法の要件を満たせば電子データで保管することもできます。
電子化することで管理効率を向上させると同時に、保管スペースの削減が可能です。
紙の様式やExcelを使用した経費精算業務では、さまざまな課題が生じます。
手作業で経費精算を行う場合、記入漏れや計算ミスが起こりやすく、確認作業が煩雑になります。
特に多くの申請がある場合、経理担当者が処理に追われることで業務負担が増加する原因になることもあります。
また、手作業の経費精算ではミスの修正に時間を要するため、全体の業務効率が低下します。これらのミスは最終的に経営判断にも影響を与えるため、ミスを防ぐ仕組み作りが重要な課題となります。
紙ベースの領収書や請求書は、紛失のリスクが高いことがデメリットです。
よって電子化が進んでいない企業では、証憑紛失のリスクが経費精算業務の大きな課題となります。
特に移動が多い業務(営業部の外回りや出張訪問など)では、従業員が出張先で証憑を紛失することも少なくありません。このようなケースでは再発行の手間や精算の遅れが発生し、精算プロセス全体が滞るケースも多く見られます。
手作業による経費精算は、申請内容の確認や証憑との突き合わせ、承認プロセスに時間がかかります。特に多段階の承認フローが必要な場合、各段階での確認に時間がかかり、全体的な処理が遅延するケースも珍しくありません。
処理が遅延すれば従業員への払戻しが遅れ、不満を抱かれやすくなります。これにより従業員エンゲージメントの低下など、経費精算だけでなく企業運営に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
Excelでの経費精算データ管理は、全体の経費状況を把握する際に大きな課題となります。
というのも、各部門から提出されるデータを手動で集計するため、リアルタイムでの分析が難しく、経営層が迅速に意思決定を行うための材料が不足する懸念があるからです。
またExcel管理では、データの集計ミスが発生するリスクも高まります。
信頼性の低いデータに基づいた運営は、財務上の誤差・誤処理を引き起こすだけでなく、最終的には株主や取引先等のステークホルダーからの信頼低下にもつながりかねません。
先に触れた「紙やExcelでの経費精算業務の課題」については、証憑管理ツールや経費精算システムを利用することで解決が可能です。ここでは経費精算を効率化するためのポイントをご紹介します。
経費精算効率化の方法としては、経費精算システムを導入する方法が第一に挙げられます。
自社に経費精算システムを導入すれば、申請から承認までのプロセスをデジタル化できます。電子化することで手作業によるミスが大幅に減少し、管理もしやすくなるため業務効率の向上が期待できます。
またクラウドベースのシステムを活用すれば場所を問わず経費精算ができるため、リモートワークにも対応できます。システム化によるリアルタイム管理は経費精算の精度を高めるだけでなく、経営判断の迅速化にも貢献してくれるでしょう。
スマートフォンを利用して経費精算を行える仕組みを整えることで、従業員の利便性向上・証憑紛失リスクの軽減につながります。
例えば領収書などの証憑をスマートフォンで撮影し、その場でシステムにアップロードできるアプリ等を利用すれば、証憑の紛失リスクを軽減可能です。
移動中でも申請や承認が可能となり、プロセス全体のスピードアップも期待できるでしょう。
経費精算においてAI OCR(光学文字認識)を活用する方法も有効です。
AI OCRとは領収書や請求書の内容を自動的に読み取り、AIが項目・内容を判別したうえでシステムに取り込むことができる技術です。
近年では経費精算システムや証憑保管システム等に広く搭載されていますが、活用することで従業員が手動でデータを入力する手間を省き、作業時間を短縮できるようになります。
また自動化によってヒューマンエラーを防ぎ、精度の高いデータ管理ができるようになる点も魅力です。
経費精算では証憑を電子化し、クラウド上で保管する「電子証憑」の活用も有効です。
電子データで領収書等を管理することで証憑を物理的に保管する手間が省けるため、業務効率化・コスト削減につながります。
またこのとき電子帳簿保存法に準拠した形式で保存していれば、税務調査が行われた際にも迅速に対応可能です。
経費精算システムで経費関連の書類・証憑を管理すると、以下のようなメリットが得られます。
・書類、証憑のペーパーレス化が実現できる
・承認プロセスが可視化され、迅速に対応できるようになる
・転記不要になり業務効率化が叶う
・入力ミス、抜け漏れ等の不備チェック、および差し戻しが容易
経費精算システム導入の折には、以下の5点を抑えた上で選定されるとよいでしょう。
電子データで経費精算に関する書類、証憑を管理するには、「電子帳簿保存法対応のシステムであること」という法的要件を満たす必要があります。
よって経費精算システムを選ぶ際には、必ず電子帳簿保存法に対応している製品を選びましょう。税務調査時に必要なデータを迅速に提出できるため、業務負担の軽減につながります。
経費精算システムを選ぶ際には、適格請求書(インボイス)の管理が可能な製品を選びましょう。
2023年10月1日以降に消費税の仕入税額控除を受ける場合は、領収書等の証憑において以下の要件を満たす必要があります。
インボイス制度の要件を満たした機能のある経費精算システムを利用すると、領収書・請求書等の証憑の確認や仕分けが容易になり、正確な税額計算が可能になります。
AI OCRを搭載したシステムを導入すると、領収書や請求書の金額や取引先、適格請求書発行事業者の登録番号などをチェックし、データを自動で正確に取り込むことができます。
その結果手入力の手間を大幅に削減できるだけでなく、入力ミスの防止も期待できます。
特に大量の証憑を処理する場合には、業務効率の向上について高い効果を実感できるでしょう。
交通費を正確に計算できる「経路検索機能」を備えた経費精算システムを導入すると、経費の入力ミス防止につながります。
また従業員側も出張や通勤時の交通費を簡単に申請できるようになり、経理部門の確認作業も効率化されます。
会計ソフトと連携する機能を持った経費精算システムなら、経費精算データを自動的に会計システムに仕訳を反映させることができ、大変便利です。
連携することで二重入力を防いで経理業務全体の効率を向上させるだけでなく、データの正確性も確保されます。また証憑管理システムや給与計算システム等、その他のシステムとも連携できる製品ならより使い勝手がよく、業務効率化につながります。
本記事では、経費精算について解説いたしました。
経費精算は経費を正しく計上するために必要な業務です。その一方で、経費精算では証憑や書類の管理が課題となります。
経費精算システムを導入すれば申請や承認プロセスを迅速化でき、業務効率化を実現可能です。紙媒体の管理負担や紛失リスクも軽減でき、企業全体の財務処理や信用性の確保にもつながるでしょう。
今後経費精算システムを導入する際は、電帳法に対応しており、かつ会計や給与計算などのシステムと連携可能なシステムを導入することをおすすめいたします。
また経費精算業務の効率化を目指すには、インボイス対応でAI OCRや経路検索機能といった便利な機能が備わったシステムを選ぶことも重要です。
自社に最適な経費精算システムを選び、煩雑な経費精算業務の効率アップを目指してみてください。