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貸借対照表(バランスシート)とは?読み方・見方をわかりやすく解説

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財務三表に数えられる貸借対照表(バランスシート、B/S)は、企業の資産や負債・自己資本などを整理し、全体像を提示するために重要な書類です。税務上必要な書類というだけでなく、企業の経済的な安定性を判断するうえで重要な資料にもなるため、企業にとっては経営の健全性を示す証拠となります。

本記事では貸借対照表の読み方、財務三表における役割といった基礎知識のほか、各部の見方と見るべきポイントについてわかりやすく解説します。

貸借対照表とは?読み方と役割

貸借対照表は「たいしゃくたいしょうひょう」と読み、わかりやすく言うと一定の時点において企業の資産がどのくらいあるのかを示した書類です。「企業の家計簿」とも言い換えられるかもしれません。

【貸借対照表の例】単位:千円

資産の部 負債の部
項目 金額 項目 金額
Ⅰ 流動資産
現金・預金
受取手形
売掛金
有価証券

4,000
1,000
2,000
1,000
Ⅰ 流動負債
支払手形
買掛金
短期借入金

1,200
1,000
1,500
流動負債合計 3,700
Ⅱ 固定負債
長期借入金

2,000
固定負債合計 2,000
負債合計 5,700
流動資産合計 8,000 純資産の部
Ⅱ 固定資産
建物・建築物
土地
その他

1,500
5,000
200
資本金
利益剰余金
7,000
2,000
固定資産合計 6,700
Ⅲ 繰延資産 0 純資産合計 9,000
資産合計 14,700 負債・純資産合計 14,700

貸借対照表を見ると、向かって左側には「資産」が書かれており、右側には「負債」「純資産」が書かれています。

左側は「調達資金を企業でどのように使っているのか」が示されている一方、右側は「資金をどのように調達しているのか」が表されています。

さらに貸借対照表では、“現金化しやすいもの”から順に下へ向かって記載していくルールがあることも知っておくとよいでしょう。

また、貸借対照表では左側と右側の金額が必ず一致するようになっています。

上記の例をご覧いただいても、「資産=負債+純資産」になっていることがお分かりいただけるかと思います。

貸借対照表を見れば、1年などの決まった期間にどれだけお金の出入りがあったのか、何に使ってどこから資金を調達しているのかが一目でわかります。またお金の調達方法についても、返済の必要がある他人の資本と自己資本がどのような割合なのかを知ることができます。

よって貸借対照表は、経営判断や投資判断、取引などのシーンで、対象企業の財務状況を把握する大切なツールとしても活用されています。

【要点まとめ】

  • 貸借対照表は「企業の資産の状況」がわかる書類
  • 貸借対照表において右側と左側の金額は必ず一致する
  • 返済・支払いが必要な負債と返済不要の自己資本の割合がわかる
  • 企業の安定性を示す根拠として経営や投資、取引などの判断に用いられる

貸借対照表は財務三表のひとつ

貸借対照表は、企業の「財務三表」のうちのひとつです。

財務三表とは決算時に作成する財務諸表(決算書)で、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書をセットにして財務三表と呼んでいます。

財務三表をすべてチェックすれば、それぞれ情報を補い合う形で情報を組み合わせながら企業の全体像を理解することができます。基礎知識として、それぞれの概要や違いを把握しておきましょう。

貸借対照表

貸借対照表は企業の資産、負債、自己資本などを明示的に示したものです。貸借対照表を読めば資金調達などを含む企業の財務状況、経済的な健全性・安全性を確認することができます。

損益計算書

損益計算書は一定期間に発生した企業の収益と費用(利益または損失)を計算した書類です。期間内にどのようにして利益を生み出したのかといったことや、利益額が把握できます。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は上場企業のみに作成が義務付けられている財務三表です。

一定期間内における現金の動きを示した表で、収益や支出だけでなく、現金の流れを追跡することによって、企業の資金繰りを評価できます。

貸借対照表の各部の見方

財務三表についての基礎知識を把握したところで、ふたたび貸借対照表にフォーカスして見ていきましょう。

貸借対照表は主に資産、負債、純資産(自己資本)の三つの部分に分かれています。

それぞれを正確に読み取るためにも、どんなものが含まれているのか、どのような性質のお金について書かれているのかをしっかりと把握しておきましょう。

資産の部

資産の部では、企業が所有する財産や資産が示されます。資産には現在保有している現金や資産だけではなく、将来的に活用できる資金も含まれます。

流動資産

流動資産はすぐ利用できる資産、または1年以内に換金できる資産のことをいいます。

現金や普通預金のほか、当座預金や売掛金、有価証券などが流動資産に含まれます。

貸借対照表では以下の表の順番に沿って金額が記載されています。

現金 紙幣、硬貨などの現金
普通預金 金融機関の普通預金口座に預入・引出をした資産
当座預金 金融機関の当座預金口座に預入や引出、小切手・手形の決済をした資産
受取手形 営業取引決済において受領した約束手形、為替手形
売掛金 商品やサービスの提供時に後払いで支払われる未収金
有価証券 国債、社債などの換金できる証券
短期貸付金 取引先などを対象とした、1年以内に回収を予定している貸付金
棚卸資産 販売のために一時保管している商品、製品、原材料、仕掛品商品の在庫

なお、流動資産のうち棚卸資産以外の資産は「当座資産」と呼ばれます。

棚卸資産には材料、製造途中の製品が含まれていたり、在庫が劣化・陳腐化したりといった可能性があるため、その他の資産に比べると現金化が容易ではありません。一方、現金化が容易な流動資産は「当座資産」と区別して扱われます。

固定資産

固定資産は流動資産と対照的に、長期(1年以上)にわたり利用する資産や、すぐに現金化できない資産などを指し、大きく分けて3種類があります。

有形固定資産 土地や建物、機械装置、付属設備や車両運搬具などの形がある資産
無形固定資産 ソフトウェア、商標権、営業権などの現金化ができる形がない資産
投資その他の資産 短期売買を目的としない投資有価証券など、上記以外の固定資産

繰延資産

開業費、商品開発費などの長期的支出については、費用を一度に計上せず、少しずつ長期にわたり計上していく場合が一般的です。このような支出効果が1年以上になる資産を「繰延資産」といいます。

現金化ができない分、流動資産や固定資産とはすこし性質が違うものの、事業へ長期的な影響をもたらす費用として資産の部に記載されています。

負債の部

負債の部では、企業が負っている借金など支払い義務のあるお金が記載されています。

こちらも資産の部と同様に、1年以内かそれ以上かによって「流動負債」「固定負債」に分けられます。

流動負債

流動負債は1年以内に支払うお金のことで、商品やサービスの代金を後払いする際の買掛金、発行済み支払手形や短期借入金などが含まれます。

正常な営業活動においていわゆる「ワン・イヤー・ルール」で返す負債は流動負債ととらえても差し支えないでしょう。

買掛金 後払いで商品やサービスの仕入れを行う場合の未払い金
支払手形 代金支払いを目的に振り出し・引き受けをした約束手形、為替手形
短期借入金 1年以内の返済を予定して金融機関等から借入れたお金
未払金 商品やサービスの購入・利用に対し未払いになっているお金
預り金 役員、従業員、取引先から一時的に預かっているお金
(本人または第三者へ支払うべきお金)
前受金 1年以内に完了する商品・サービスの提供に対し事前に支払った代金のこと

固定負債

固定負債は1年以上の長期にわたり返済義務があるお金です。

借入金 融資など長期的に返済が必要な借入
社債 会社が資金調達のため発行し、満期に償還が必要になる債券
リース債務 1年以上にわたって支払ったリース料
(1年以内の場合は流動負債として計上)
繰延税金負債 将来的に支払うべき税金(税効果会計適用時に計上)
長期前受金 商品・サービス提供が1年を超えて完了する取引においてあらかじめ受け取ったお金

純資産の部

純資産の部では「支払いの必要がない自己資本」が記載されています。

資本金 株主が会社に出資したお金
資本剰余金 創業時に払い込んだ資金のうち、資本金として計上しなかった資金(資本準備金)
※資本準備金とその他資本剰余金で形成されている
自己株式 会社自身で保有する株式
利益剰余金 獲得利益を分配せず企業内で積み立てたお金
※利益準備金とその他利益剰余金で構成されている
評価・換算差額等 保有している有価証券、土地などの含み損益などを計上したもの
新株予約権 ストックオプションを含む、株式の交付を受けられる権利

貸借対照表を見るときのポイント

貸借対照表を分析する際に注目すべきポイントはいくつかありますが、中でも「自己資本比率」「流動比率」「当座比率」については必ず確認しておきましょう。本項では、それぞれ着目すべきポイントやどのように解釈すればいいかを解説します。

自己資本比率

自己資本比率とは、総資産に対し企業の自己資本が占める割合を示します。

【計算式】

自己資本 ÷ 総資本 × 100 = 自己資本比率(%)

自己資本は返済の必要がない資本であり、自己資本の割合が多い企業は長期的に見ても安定性があると判断できます。一方、自己資本比率が低い企業は、負債が多く赤字に陥っている可能性があります。

流動比率

流動比率とは、企業の流動資産が流動負債に対してどれくらいあるのかを示す指標です。

流動比率を確認することで短期での返済能力、もっとわかりやすく言えば企業の支払い能力を評価できます。

【計算式】

流動資産 ÷ 流動負債 × 100 = 流動比率(%)

流動比率が100%以上ならば資金繰りが順調であると判断できます。

一方、流動比率が100%未満の企業では、返済がうまくいっておらず資金繰りが悪化している可能性があると考えられるでしょう。

当座比率

当座比率とは、企業の短期の支払い能力を評価するための指標です。

【計算式】

当座資産 ÷ 流動負債 × 100 =当座比率(%)

流動比率と同じく資金繰りについての判断基準となりますが、現金や速やかに変えられる資産(当座資産)のみを対象としている分、より正確な資金繰り状況を判断できるようになります。

貸借対照表を理解して財務状況を分析しよう

本記事では貸借対照表の基本から読み方、各項目の意味、チェックすべき比率や数字に対する捉え方のポイントなどをお伝えしました。

貸借対照表は企業の経営状況を把握するうえで欠かせない書類です。貸借対照表を正しく読み取れるようになれば、自社の経営や資金繰りについて振り返り、改善につなげやすくなります。決算処理だけではなく、経営陣にとっても重要なものなのです。

また貸借対照表を正確に作成するうえでは、常日頃から正確な会計処理が必要です。経理担当者は貸借対照表についての理解を深めるとともに、抜け漏れや誤りのない会計処理を行うよう心掛けたいですね。

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