公開日:2023/01/13
AI技術の進歩は目覚ましく、近年では帳票書類をスキャンし、データ化する「OCR」にもその影響が及んでいます。AIを活用したOCRツールを「AI OCR」といいますが、どのような進化を遂げているのでしょうか?
ここでは、AI OCRとは何なのかを徹底解説。OCRとの違いや、導入のメリット、デメリットなどもご紹介します。
「AI OCR」は、OCRに「AI技術」を取り入れたツールのことです。
AI OCRのベースとなる「OCR(Optical Character Recognition)」は、紙の文書をテキストデータ化する際に使われるツールです。アナログな文書管理から電子データによる管理への過渡期である現在、多くの企業で利用されています。
しかしOCRには、「似たような文字(は ば ぱ など)の認識率が低い」「帳票、書類のフォーマットが企業間で違う場合、読み込み処理の正確性が落ちる」といった弱点がありました。
この弱点を補うためにAI(人工知能)を活用したツールが、AI OCRです。
AIの代表的な特徴には「学習機能」があります。この学習機能のおかげで、読み取りを繰り返すほど紙文書の認識率が向上し、高精度で文書の読み取り・テキストデータ処理ができるようになっていきます。
その結果、飛躍的に処理速度が上がり、紙文書のデータ化や入力作業の負担を減らすことができるのです。
AI OCRの登場により、さまざまな企業が業務効率化を実現しています。ただ、現在OCRを利用している企業にとっては「どこが違うのか」と思われることでしょう。
OCRとAI OCRを比較した場合、以下の2点が「大きな違い」として挙げられます。
既存のOCR技術では、文字認識率に問題が生じるケースが多く見られました。特に手書きの文字に関してはうまく認識してくれず、手入力での修正が必要になる場合も多々あります。
「納 品 書」のように間にスペースの入った単語についても、ひとつのフレーズとして読み取れないケースも多いです。
【OCRが読み取りを苦手とする文字の例】
一方AI OCRにおいては、OCRでうまく読み取れなかった文字もほぼ正確に読み取ることができます。
漢字やひらがな・カタカナが混在する手書き文書も、ほぼ確実に認識可能です。
これはAIの機能により、前後の文脈や手書きのクセといった傾向を読み取り、データとして処理しているからです。使用するほど読み取りの精度が向上していくのは、AI OCRならではの特徴といってよいでしょう。
読み取りの精度が高ければ、修正の手間も省けます。これにより、業務効率が格段にアップする効果も期待できるでしょう。
通常のOCRは、フォーマットが変わると文字情報が正確に読み込めなくなることがあります。文字が記入されている「位置」が変わるからです。
そのためOCRでより正確に文書を読み取るには、「請求書用」「契約書用」というふうに、都度設定を変更しなくてはなりません。
一方AI OCRの場合は、AIが項目・位置などからフォーマットを判断し、文字を認識することが可能です。
設定をいじらなくとも「スキャンするだけ」で文字の読み取りができるため、スピーディにテキスト化が行えます。
AI OCRとOCRの違いについて理解したところで、AI OCRそのもののメリット・デメリットについて見ていきましょう。
企業がAI OCRを導入するメリットは以下のとおりです。
読み取りの精度・スピードが高く、データ化までの業務効率がアップする
文字認識に優れたAI OCRは、認識が難しい手書き文字や似たような文字、背景つきの文字などをテキスト化するのも容易です。
文書フォーマットにばらつきがあっても、スピーディに読み取りが行えるため、データ化の作業効率は劇的に向上するでしょう。効率化によって浮いた時間で、コア業務に注力できるようになるなどの効果も期待できます。
手入力による修正の省略やミス削減につながる
精度の低いOCRの場合、手入力で修正を行う必要が多々ありました。
しかし、手入力での修正作業には、誤字脱字、打ち間違いなどのミスが生じます。
AI OCRで読み取りからデータ化まで自動化してしまえば、このような人為的ミスは発生しにくくなります。
ペーパーレス化により文書を管理しやすくなる
紙の帳票・書類をデータ化することを「ペーパーレス化」といいますが、ペーパーレス化すると文書管理が効率よく行えます。
紙の帳票のまま保管をしていると、目当ての文書を探すのにも時間がかかりますし、保管スペースも必要になり効率的とは言えません。時には帳票・書類を紛失するケースもあるでしょう。
一方、ペーパーレス化してしまえば、整理や管理が効率よく行えるようになります。データとしてまとめて保管するため、紛失してしまう恐れもありません。
情報をデータベース化でき、検索・共有性がアップ
AI OCRで帳票や書類をデータ化するメリットには、「データベースが作れる」という点もあります。
電子データとして帳票類を体系的に管理することで、検索性が飛躍的に向上します。また社内外の人間に帳票類を共有したいときも、データ化していればかんたんに送信できます。
データ検索・共有がしやすくなれば、他の業務の作業効率も向上しやすくなり、企業全体の生産性アップにもつながるでしょう。
業務システムとの連携がしやすい
AI OCRは既存の業務システム、RPA(Robotic Process Automation)との連携がしやすい特徴も持ち合わせています。
たとえば、既存の請求書作成ソフトと連携をすれば、別の請求書から抽出した文字データを、必要な項目だけ自社の請求書フォーマットへ出力する……といったことも可能です。
何度も繰り返し入力する情報(会社コード、取引内容、住所、電話番号など)を自動処理できるようになれば、業務はますます効率化、スピードアップするでしょう。
基幹システム等へ保管したり、データベース化して検索できるようにしたりといったことも、AI OCRならすばやく効率よく行えます。
AI OCRにはメリットも多いですが、デメリットもあります。
文字認識率は高いものの、完全ではない
AI OCRはOCRに比べて高い文字認識率を誇ります。しかしながら、すべての文字を100%認識できるわけではありません。たとえばかなり癖の強い手書き文字などは、AI OCRであっても認識できない可能性が高いでしょう。
このような場合は、手入力でデータ化するほかありません。
また、ほぼ認識できていたとしても、間違いを確実に防ぐには人の手による目視チェックが必要です。
製品によっては非対応のフォーマットがある場合も
高機能なAI OCRは、非定型フォーマットでもほぼ正確に読み取りができます。しかし、製品によっては非定型の文書フォーマットに対応しておらず、文字認識ができないケースがあります。
AI OCRにはさまざまな製品があります。それらを分類すると、以下の3種類に分けることができます。
「定型フォーマット型」「非定型フォーマット型」は、汎用性が高くさまざまな業種で利用されるAI OCRです。
定型フォーマット型は文字どおり、指定されたフォーマットを素早く読み取るのに長けたAI OCRです。
一方非定型フォーマット型は、フォーマットの形式にかかわらず読み取りをしてくれるAI OCRを指します。
AIの学習には時間がかかるものの、フォーマット設定が不要で、かつさまざまな帳票書類に対応できるのがメリットといってよいでしょう。
最後の「業務特化の非定型フォーマット型」は、特定の業務に特化したAI OCRです。
事前にAIへ自社フォーマットの学習を済ませておくことで、業務に必要な読み取り作業効率を飛躍的にアップさせられます。汎用性はありませんが、特定の業務での作業スピードを上げたい場合におすすめです。
AI OCRは多くの帳票を取り扱う「経理・会計業務」のみならず、さまざまな業種で活用されています。
例えば、多くのアルバイトを雇用しているイベント会社では、「履歴書」のデータ化にAI OCRを活用しています。
イベントバイトは人員の入れ替わりが頻繁にあり、履歴書データの目視手入力による登録・消去、ミスの修正などにかかる手間が大きな課題となっていました。
そこへAI OCRを導入したところ、作業工程が大幅に短縮。人の手で行うのは「スキャン→認識内容の目視チェック、微修正」のみとなり、業務の大幅な効率化に成功しました。
同社では抽出したデータをRPAと連携、データベースで保管することで、管理における利便性も向上させています。
AI OCRはAIによって文字認識率を高めることで、文書の読み取り作業効率を飛躍的にアップしてくれるツールです。導入すると手間のかかる文書の読み取り、テキストデータ化が格段に楽になることは間違いないといってよいでしょう。
もちろん、現段階の技術では全ての文字を100%正確に読み取れるわけではなく、目視によるチェックも必要なことは事実です。しかしながら、帳票書類の「完全ペーパーレス化」が叶うまで、まだまだ活躍してくれるに違いありません。
「帳票書類の読み取りにかかる手間や作業を減らしたい」や「2022年1月に施行された電子帳簿保存法改正に対応したい」という企業は、AI OCRの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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