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就業規則を変更するには?届出に必要な書類などを解説

更新日:2021/07/13

就業規則を変更するには?届出に必要な書類などを解説

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弁護士が解説!5分で分かる就業規則

このケースは就業規則に書いていい?実情に合わせるにはどうすればいい?等、企業側労働法弁護士が就業規則の基礎知識と実務対応視点を解説

就業規則は常時10人以上の労働者を使用する会社で定めることが労働基準法で決まっています。また、就業規則は労働基準監督署に届出しなければなりません。届出は就業規則を定めたときだけでなく、変更したときも必要です。

労働基準監督署への届出には労働者代表の意見書の添付が必要です。この労働者代表の選出にも細かなルールがあります。

この記事では就業規則の変更の届出について、必要書類や労働者代表の選出方法などを詳しく解説します。


就業規則とは

就業規則の作成は労働基準法第89条で定められています。すべての会社で作成する義務はなく、常時10人以上の労働者を使用する事業所に該当した場合に作成しなければなりません。

常時使用する労働者とは正社員、パート、アルバイトなど雇用形態に関係なく在籍する労働者のことです。季節的な業務や日雇い、派遣社員は常時使用する労働者に含みませんので注意しましょう。

また、派遣社員は派遣会社の就業規則が適用されることも覚えておくとよいでしょう。

就業規則は労働基準監督署に届出が必要

就業規則は作成時および変更時に労働基準監督署へ届出しなければなりません。また、就業規則の付属規程として定めている給与規程や退職金規程などがあれば、その規程も作成時および変更時に労働基準監督署へ届出する必要があります。

付属規程を定める場合は、就業規則の附則に明記していることが一般的ですので確認しておくとよいでしょう。

就業規則の届出方法

就業規則を変更する場合は労働基準監督署に届出します。届出先や届出方法、必要書類を確認しましょう。

就業規則の届出先と届出方法

  • 届出先:所轄の労働基準監督署
  • 届出時期:就業規則の変更日までに
  • 届出方法:持参、郵送、e-Govの電子申請(https://shinsei.e-gov.go.jp/

事業所が複数ある場合は事業所ごとに就業規則を届出します。たとえ同じ市内でも本社と支店で住所がちがえば、それぞれで届出しなければなりませんので注意しましょう。

就業規則変更の届出に必要な書類

就業規則変更の届出に必要な書類は以下の3つです。

  1. 就業規則(変更)届
  2. 労働者代表の意見書
  3. 変更後の就業規則

持参・郵送の場合は、それぞれ正・副の2部を用意して届出すると、会社控えとなる副に労働基準監督署の受付印を押印して返却してくれます。

1.就業規則(変更)届

就業規則変更届の様式は任意となっており、特に決まっているものはありません。新旧を比較して表示するものもありますが、記載していなくても届出としては有効です。下の様式は厚生労働省のものですので参考にしてください。

2.労働者代表の意見書

労働者代表の意見書の内容は「特に意見なし」や「就業規則の変更に反対」でもかまいません。就業規則の変更に反対の意見書を添付したとしても、労働者代表に意見をきいていることが重要なので、労働基準監督署は変更届を受け取ってくれますし、届出の効力は有効です

注意しなければならないのは就業規則を「不利益変更」する場合です。不利益変更とは就業規則を変更することで従業員が不利益を被る変更のことで、労使の合意がなければ就業規則を変更できません。
会社側が一方的に進めることはできませんので、従業員に対する説明会を開催して同意書を回収するなどの対策をして進めましょう。

3.変更後の就業規則

変更後の就業規則は自社の様式でかまいません。変更部分を朱書きしたり、新旧比較表を添付したりしてもよいですし、変更後の就業規則そのままでも問題ありません。


労働者代表の選出方法

就業規則の変更の意見書を作成する労働者代表を会社が指名することはできません。
代表になるためには次の2つの要件を満たさなければなりませんので覚えておきましょう。

  1. 労働基準法第41条第2号に定める管理監督者でないこと
  2. 過半数代表を選出するための正しい手続きに基づいて選ばれた代表であること

2の正しい手続きには細かなルールがあり、労働者代表の選出の有効性が確保できていない場合は、届出した就業規則が無効となる場合がありますので注意しましょう。

過去には「サンフリード事件」として知られる、労働者代表の選出が適正に行われていなかったため労働者代表者の選出方法に不備があるとして、就業規則変更の効力を争う裁判もおきています。

労働者の過半数で組織された労働組合がある場合は、組合の代表が労働者代表となることができます。

労働者代表の選出の流れ

  1. 従業員に「就業規則変更のための労働者代表を選出する」ことを説明して立候補を募る。
  2. 立候補者の経歴書を作成する
    立候補者がいないときは会社が推薦しても問題はなく、会社側が推薦した候補者として経歴書を作成します。
  3. 全従業員に就業規則変更のための労働者代表を選出することを明確に説明して告示する
    36協定などで選出した労働者代表が自動的になることはできません。何のための労働者代表を選出しているかを説明しなければならないためです。
  4. 投票による選挙など民主的な方法で過半数代表者を選出する
    選出方法は信任やネット投票なども有効です。また、全従業員が参加する会議など話し合いの場を設け「就業規則変更のための労働者代表を人事部の○○○○さんにします。反対意見はありますか」など、話し合いにより選出されたことを議事録にのこしていれば有効な選出となります。
  5. 労働者代表が決まったら文書で社内に周知する

厚生労働省が「労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直し」について進めており、労働者代表の選出の有効性は重要度を増すと思われますので注意しましょう。


就業規則を変更したときは社員に周知する

就業規則を変更したときは社員に周知しなければなりません。通達や社内回覧など方法は問いませんが、社員の知らないうちに就業規則が変更されていた、などということがないようにしなければなりません。

就業規則は社員が確認できることが前提ですので、変更したことを告知してクラウドなどでデータ共有して閲覧できれば問題ありません。


法の定めに触れる就業規則はどうなる?

労働基準監督署に届出した就業規則でも、法の定めに触れる就業規則は無効となります。たとえば就業規則で有給休暇が法定の日数を下回る定めがされていれば無条件で法定の日数となります。

残業の割増率や育児・介護関係なども法改正がたびたび行われていますので、情報をウォッチしながら変更手続きを行いましょう。


まとめ

就業規則は会社の根幹となる重要なものです。社内の制度変更や法改正のたびに頻繁に変更手続きをしますので、必要書類や労働者代表の選出方法などを覚えておくとよいでしょう。

特に労働者代表の選出については就業規則が無効となる場合ありますので、有効性を確保した手続きを行いましょう。