更新日:2025/02/10
紙やExcelによる従来型の経費精算方法で精算業務を行っていると、申請・承認をする上で様々な課題が生じます。
例えば、申請者は交通費の計算で金額の間違いを起こしたり、承認者や経理担当者は承認に手間がかかったりします。他にも、経費申請のために出社しなければいけないといった非効率な場面も発生します。
さらに紙やExcelでの経費精算の場合、経理担当者は経費を仕訳に転記する際にも、十分な注意や確認作業が必要となります。
経費精算システムを使用すると、申請者が駅名や交通ルートを入力するだけで交通費が自動計算されるため、ミスが大幅に減ります。また、会計システムと連動させることで、データの取り込みがスムーズに行えることなども大きなメリットです。
本記事では、経費精算システムの基本的な機能や導入のメリット、さらに選定のポイントについて詳しく解説します。
経費精算システムとは、企業や組織内で発生した経費を効率的に管理し、精算するためのシステムです。
従業員が日常的な業務で交通費や出張旅費、交際費、物品購入などで経費を利用した場合に、システム上で申請し、承認者によって承認され、経理担当者が確認し、会計ソフトに仕訳連携をすることができます。
経費精算システムでは交通系ICカードとのデータ連携やスマートフォンなどで領収書を写真撮影することで自動的に伝票を起票する機能を兼ね備えたものもあります。そのため、紙やExcelの伝票を起票して精算するよりも大幅に経費精算業務を効率化できます。
経費精算システムの主な機能には以下のようなものがあります。
経費精算システムなので当然ですが、出張費や接待費などの経費をシステム上で申請・精算できます。経費の金額、発生日、支払予定日、経費の申請者・承認者等の情報を一元管理できます。
経費精算システムは、申請された経費の合計や消費税の計算を自動的に行います。適格請求書発行事業者登録番号のチェック機能があれば、国税庁のデータベースと照合されるので、インボイス制度施行後の複雑な消費税計算も自動で算出されます。
経費精算システムが経路検索サービスと連携していることで、申請者や承認者が交通費の確認をする手間や計算ミスを大幅に削減できます。使用した経路に定期区間があった場合に、自動的に該当区間の費用を控除するといった機能が搭載されていれば、さらに便利に利用できます。
領収書や請求書をスマートフォンなどで撮影することで、取引先や金額などを読み取り、手入力することなく自動でデータ化できます。
経費申請は上司や経理担当者による承認が必要です。使用する経費の金額によって、承認者が変わる運用をしている企業は多く存在しますが、ルールを事前に設定しておくことで承認プロセスを自動化し、迅速かつ効率的に進めることができます。
企業の精算ルールに基づいた設定ができ、違反があった場合にアラートを出し、ミスや差し戻しの手間を減らせます。
経費データを分析し、レポートを作成する機能を持つシステムもあります。これにより、経費の傾向や異常な支出がないかチェックをすることができます。
電子帳簿保存法施行以前は、請求書や領収書などの経費精算書類を紙媒体として保存することが義務付けられていましたが、現在では電子帳簿保存法で定められた保存要件を満たせば、書類を電子的に保存することが認められるようになりました。電子帳簿保存法に対応した経費精算システムを利用すると紙の保管スペースや場所代が不要になり、ペーパーレス化が促進されます。
法人で契約しているクレジットカード(法人カード)ではクレジットカードを読み取り、支払先や金額などをデータ化することができます。クレジットカード払いにすると、使用したタイミングでカードの管理者宛てにメールやチャットツールのメッセージが届き経費の進捗状況を迅速に把握できます。また、従業員が経費精算をし忘れることがなくなるため早期決算にも有効です。
会計システムや勤怠管理システム、給与計算システムと連携することで、経費を会計システムに仕訳データとして転送したり、出張手当の計算ができたりと、経費精算業務全体を効率化します。
上記のような機能があるので、経費精算システムを導入することで手作業のミスを減少させ、承認プロセスを迅速化し、経費の透明性を高め、企業全体の経費管理がより効率的かつ正確になります。
経費精算システムと会計システムは両方とも企業の財務・経理において重要なシステムですが、それぞれに異なる役割と機能があります。
経費精算システムは経費の管理に特化しているのに対し、会計システムは企業の全ての取引を記録して、貸借対照表や損益計算書などの会計帳簿を作成することが目的です。また、システムを利用するユーザーにも違いがあります。経費精算システムは、経費を使う多くの従業員が利用するのに対し、会計システムは主に経理部門や経理担当者など限られた担当者が利用する傾向があります。
まずは、経費精算システムを使って日々発生する経費を精算する営業部門を例に、システムを導入するメリットを考えてみましょう。
営業など移動の多い社員は毎日多くの交通ルートを使っています。その移動したルートを都度確認して交通費を精算するのは大きな負担になります。ICカードを利用している場合でも移動ルートと乗車料金をインターネットや乗換案内などで調べて入力しなければなりません。
経費精算システムでは移動したルートをメモして精算する手間が省略できます。経路検索サービス機能を搭載しているシステムでは、出発駅と到着駅を選択すれば料金が自動で算出されます。
また、ICカードを利用している場合であればリーダーを使い移動ルートと利用料金を取り込み自動で伝票を作成する機能を兼ね備えたものもあります。
物品を購入した場合の領収書管理の負担が軽減できます。一般的に領収書は原本を伝票に貼り付けしていますが、AI-OCRの機能がついた経費精算システムでは携帯電話やスマートフォンで写真撮影すると取引先や金額などの内容が入力されます。同時にタイムスタンプが付与され電子帳簿保存法に沿った電子保存が可能となります。
伝票には証憑として定められた書類が添付されているものです。承認者は伝票の内容をチェックするとともに証憑の添付状況や内容を確認しなければなりませんが、経費精算システムではそれらの管理もワークフローを使い軽減することができます。
次に管理部門として経費精算の取りまとめをする経理部門のメリットを考えてみましょう。
経理部門では現金を出納する前に伝票の内容が正しいか精査します。営業など移動の多い職種の交通費の精算伝票は乗換ルートの確認をする必要があるため非常に手間がかかります。
申請者が入力する時に自動で料金が表示されれば、精算料金をチェックする必要はなく経理部門の業務負担も軽減できます。
経費精算の立替金を現金で精算している会社の場合、現金の管理や受け渡しが負担となります。
経費精算システムのなかには振込データ作成機能を搭載したものもあり、銀行のオンラインにデータを取り込めば、社員の個人口座に振込みすることができます。
経費精算システムを導入すれば現金精算による小口現金を廃止することも可能になります。
経費精算システムでは起票してから承認されるまでの伝票の状況を把握することができます。
紙の伝票では承認者の手元に伝票がとまってしまうと経理部門では伝票の存在を把握することができません。月次を締め後に伝票が出てきて計算し直しなどとなることもありますが、経費精算システムでは未承認伝票を確認することができるため、承認者に処理を促すことができます。その結果、締日を徹底することに繋がります。
交際費などは内容によって上長の承認した伝票であっても、経費として認められない旨を経理担当が伝えなければならないことがあります。
経費精算システムの設定で認められない経費を自動的に弾いてくれれば、経理担当者の負担も軽減できます。
経費精算では悪意のある不正を見つけるのは難しいものです。内部統制に取り組む企業では定められたルール通りに精算業務が行われているかをセルフチェックすることが重要となりますが大きな労力を要します。経費精算システムではこの点でもメリットがあります。
申請者や承認者による不正を防ぐことができます。手書きの伝票やExcelで作成した伝票の内容が正しいかをシステム的に判断し、外部の代行入力者がかかわることで牽制することができます。
社内の規程違反や内部統制のルールに違反していないかをシステム的に判断できます。システムの仕様部分でチェックや差し戻しなどの機能を活用して、人の手による運用負担を軽減しながらルールを守ることができるのです。
社内の承認ルートをワークフローにのせれば、申請者と承認者の負担を軽減することができます。また、申請者や承認者が長期出張などで不在の場合もワークフローで電子的に処理できるようにしておけば不在時でも社外から処理でき、業務が滞るのを防げます。
経費精算システムは大企業・中小企業を問わず、さまざまな企業で導入されているので大きなデメリットはないと言っても過言ではありません。ただし、全くデメリットがないということはありませんので、以下に主なデメリットを挙げます。
新しいシステムを導入する際には、ソフトウェアのライセンス費用やハードウェアの購入費用、導入サポート費用などが発生します。これらの初期費用は企業にとって負担となる可能性があります。
システムの運用には、定期的なメンテナンス費用やサポート費用がかかります。また、システムの更新やアップグレードにも費用がかかることがあります。料金プランをよく確認することが重要です。
新しいシステムを導入するためには、従業員に対するトレーニングが必要です。特にこれまで紙やExcelで経費精算をしていた企業では従業員から「ログインできない」「やり方がわからない」といった問い合わせが発生することが予想されますので、マニュアルなどを作成して対策しましょう。
企業の特定の業務プロセスにシステムが完全に適応しない場合、カスタマイズが必要になります。カスタマイズには追加のコストと時間がかかります。
既存のシステムから新しいシステムへのデータ移行にはリスクが伴います。データの損失や整合性の問題が発生する可能性があります。
新しいシステムを導入することで、セキュリティリスクが増加することがあります。特にクラウドベースのシステムの場合、データの保護やプライバシーの問題に対する対策が求められます。
従業員が新しいシステムの使用に難色を示すことがあります。これは、慣れ親しんだプロセスやシステムからの移行に対する心理的な抵抗や、システムの使い勝手に関する懸念が原因となることがあります。
これらのデメリットを考慮した上で、経費精算システムの導入が企業にとって適切かどうかを判断することが重要です。
まずは基本的な経費の入力や承認機能が複雑でなくシンプルに使えるかは非常に重要です。この点が複雑だと従業員からの問い合わせが増えてしまいます。
次に、自社の会計システムとの連携の確認も必要です。
システムによってはAPI等を利用して連携が完了するものもありますし、CSVデータの取り込みが必要なタイプもあります。
また、データ管理を管理する手段の確認も必要です。クラウドサービスで提供されているものとオンプレミスで自社にサーバー環境を作る経費精算システムがあります。
一般的にはクラウド型の経費精算システムはウェブブラウザやスマホアプリを使って経費精算を行います。導入時の初期費用や運用コストが比較的安いのが特徴です。一方、オンプレミス型の経費精算システムは自社で環境を構築するので、自社にあったカスタマイズがしやすいという特徴があります。
経費精算システムの導入を考える時には現在の作業を置き換えるスタンスで進めると失敗が少なくなります。システム導入と同時に精算ルールを変更したり、承認権限を変更したりすると現場サイドが混乱して導入が滞ることがあります。
スムーズにシステムを導入するのであればカスタマイズ性も重要です。できる限り自社の仕様に合わせられる経費精算システムを選定することが混乱をさけるポイントです。
最後にサポート体制の確認もしましょう。継続して利用するうちにうまく操作ができない点や不明点なども発生します。メールやチャットなどの質問手段や対応時間、オペレーターの数が十分かなどをチェックできれば安心して利用できます。
経費精算システムはベンダーごとに特長があります。自社が求めている機能、クラウド型やオンプレミス型などのデータの管理方法、料金プラン、連携するシステム、サポート体制、導入実績などを考慮して選びましょう。
安価な会計クラウドや会計システムのなかのひとつの機能として経費精算システムが搭載されている場合もありますが、経費精算システムは経費精算に特化したシステムになります。
精算業務に特化しているので自動化機能がより充実しており、申請者だけでなく承認者や経理担当の負担まで軽減できるような設計となっています。
具体的に導入を進めるにあたっては、プロジェクトチームを立ち上げるなどして、経理部門だけでなくシステムを使う社員をメンバーに取り込むことも大切です。そうすることで経理主導との印象が払拭され、申請者・承認者・経理部門などそれぞれの立場で多面的に検討され、自身の仕事との認識をもってもらうことができるので導入が円滑に進みます。
無料トライアルがある経費精算システムも多くありますので、実際に操作してみて使いやすいか確認することも重要です。
経費精算システムは営業担当などの経費精算にかかる負担を軽減するだけでなく、承認者や経理部門の負担も軽減することができます。
多くの経費精算システムがあり選定に迷うと思いますが、精算業務に特化したシステムの方が求める機能が揃っている可能性があります。自社が求める機能を明確にして選定するようにしましょう。