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経営を安定させる「キャッシュフロー経営」とはどんなもの?

更新日:2020/02/25

経営を安定させる「キャッシュフロー経営」とはどんなもの?

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会社経営において、キャッシュフロー経営を行うことは必須条件です。

近年、倒産する企業のおよそ半数が「黒字倒産」となっているのはご存じでしょうか。
これはキャッシュフロー経営を意識していない、もしくはキャッシュフロー経営に失敗した結果であるといえます。

今回は、経営を安定させるために欠かせないキャッシュフロー経営とはどのようなものなのか、詳しく解説していきます。


キャッシュフロー経営とは

キャッシュフローとは、「一定の会計期間において、事業を継続させていくのに必要となったキャッシュ(現金)の出入り」のことです。

流入するキャッシュをキャッシュ・イン・フロー、流出するキャッシュをキャッシュ・アウト・フローといい、この2つの総称がキャッシュフローということになります。

このキャッシュフローを重視した経営手法をキャッシュフロー経営といいます。
いかに手元にキャッシュを残すか、という点を目的とします。


キャッシュフローは3タイプ

キャッシュフローには大きく分けて3つのタイプがあります。

営業キャッシュフロー

営業活動によって生み出したキャッシュ、支払ったキャッシュの増減を示したものです。

回収された売上代金などの入ってきたキャッシュはプラス、仕入代金や事務所家賃・水道光熱費・通信費・給与などの出ていったキャッシュはマイナスとなります。

減価償却費は経費として計上されるものの、実際にキャッシュの動きを伴わないのでマイナスには働きません。

この営業キャッシュフローがプラスになっていれば、その事業活動の評価もプラスに働きます。


投資キャッシュフロー

投資活動の結果として増減したキャッシュを示したものです。

営業活動に必要な設備・固定資産を取得するのに投資したキャッシュはマイナス、逆に売却することがあればプラスとなります。

投資は事業運営に欠かせないものなので、投資キャッシュフローはマイナスであることが一般的です。
マイナスの幅をできるだけ小さく抑えるのが好ましくはありますが、ゼロであることも難しい数値になります。


財務キャッシュフロー

資金を調達、もしくは返済することで増減したキャッシュを示したものです。
営業活動、投資活動のために資金を調達すればプラスになり、返済をして支出すればマイナスになります。

プラスになれば手元のキャッシュが増えているということですが、その要因が借入金の増加によるものであれば、返済能力に見合った金額であるかどうかの適正な評価が必要です。


フリーキャッシュフロー

キャッシュフローは3つに大別されますが、さらにもう1つ「営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合計したもの」をフリーキャッシュフローといいます。

この金額が「企業が自由に使うことのできるキャッシュ」ということになります。
いかにして最終的にフリーキャッシュフローを生み出すか、という点がキャッシュフロー経営においてはとても重要な視点になっていきます。


キャッシュフロー経営が必要な理由

事業運営において経営者がよく陥るのが、「売上重視の経営」「利益重視の経営」です。

  • 売上を十分に生み出すこと
  • 結果として利益を残していくこと

これらは事業運営に欠かせません。その数値は毎月の収支の試算にわかりやすく結果として表面化されるので、営業活動においての目標にしやすい面もあります。

しかし、これらの売上・利益を重視する上で決定的に欠けている視点があります。
「収支の試算上に現れた数字は手元で増減したキャッシュの額とは違う」ということです。

100万円の商品が売れたとすると、当月に100万円の売上が計上されますが、当月に100万円のキャッシュが入ってくることは少ないでしょう。
企業の商取引は「掛け売り」で行われるのが一般的なので、入金までにタイムラグがあることが普通です。

この「売上重視の経営方針」「利益重視の経営方針」では、このタイムラグを重視していないことが問題なのです。


黒字倒産を起こしてしまう理由

入金までのタイムラグを意識しない、つまりキャッシュの動き・残高を意識しない経営をしてしまった結果、多数の企業が「黒字倒産」という事態を引き起こしています。

収支上は黒字になっているのに、手元にキャッシュが入ってきていない・残っていないので必要な支出に対応することができず、キャッシュが回らなくなり、会社を倒産させてしまうということです。

会社は赤字でも倒産しませんが、キャッシュが回らなくなると即倒産します。
この事態を起こさないために、キャッシュフロー経営が必要なのです。


キャッシュフロー経営がもたらす効果

資金をショートさせないために、ということに加えて、キャッシュフロー経営は他にもいくつものプラスの効果を事業にもたらします。

・対外的信用を高めることができる
金融機関に融資を申し込む際、その融資目的が「資金が急に足りなくなったから」であれば、計画性のない経営をしていることを明言しているようなもので、信用を失う結果に繋がります。
逆に、キャッシュフロー経営を主軸に置いた、先々の経営計画のために必要な融資であれば、経営管理が行き届いた企業として、その信用を高めることができるでしょう。

・経営の自由度が高まる
経営上の様々な施策を実行していく上で、十分な資金が必要になります。手元にキャッシュが確保できている、施策で資金を使っても計画に支障がない、ということがわかれば、必要な時に施策を打って出ることができます。経営における自由度を高めることに繋がるわけです。

・本業に集中できる
キャッシュフロー経営を実現できていないことの大きな損失の1つに、「営業活動に集中できる状況ではなくなること」が挙げられます。
経営者が四六時中、金策に走り回っていたり、その不安に悩まされたりしていては営業活動どころではなくなってしまい本末転倒です。
心置きなく営業活動に集中できる状況を作り出せるのも、キャッシュフロー経営の大きな効果なのです。

・デメリットはない
キャッシュフロー経営にはデメリットが基本的にはないということも押さえておきたい点です。
資金ショートが即倒産を招くことから、経営の中心はどこまでいってもキャッシュフローであることには変わりがないのです。


キャッシュフロー経営の方法

キャッシュフロー経営を実践していくにはどうすればよいのでしょうか。
具体的には以下の手順で進めていきます。

・キャッシュフローの現状を把握する
まずは現状のキャッシュフローを把握しましょう。
営業キャッシュフロー・投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローの3つをまとめた「キャッシュフロー計算書」を作成します。
過去3期分のキャッシュフローの推移を確認しましょう。

・未来のキャッシュフローを計画する
現状の分析ができたら、それを元に未来のキャッシュフローを計画していきます。
その推移を計画して表にまとめたものを「資金繰り表」といいます。
月別に作成し、3~5年分を確認できるようにしましょう。

・軌道修正できる仕組みを作る
現状の把握・未来の計画ができたら、月に1回など定期的に状況把握と振り返りをしましょう。
計画通りに進むとは限らないので、こまめなチェック体制と改善の施策を打っていくことが大切です。
フリーキャッシュフローを確実にプラスにできるように実行していきましょう。


まとめ

企業は赤字で倒産するのではなく資金ショートで倒産する、という事実を理解できていれば、キャッシュフロー経営がいかに重要であることかがわかると思います。

本業に集中していくため、経営を安定させていくための基盤作りとしてのキャッシュフロー経営を実現していきましょう