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資本金はどのくらい必要?知って得する会社の資本金の基礎知識

更新日:2020/01/21

資本金はどのくらい必要?知って得する会社の資本金の基礎知識

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会社を設立するには、元手として資本金が必要になります。資本金は法律上の制限はありませんが、少なすぎると様々な問題点が出てくるため、事業が立ちいかなくなる可能性があります。

しかし資本金が会社設立にどれくらい必要か、用意できる額の幅が広すぎて把握できない方も多いのではないでしょうか。資本金をある程度用意しておくことで、スムーズな会社経営が可能になります。

今回は資本金とは何か、そして用意する際の注意点や必要とされる額などについてご紹介していきます。


そもそも資本金とは何か

資本金とは、会社の財産となる運転資金を指します。借入金とは違い返還義務がなく、会社運営に対して自由に使えるお金です。

会社の設立には、

  • 事務所の賃貸料や光熱費
  • 開業をアピールする宣伝費
  • 在庫の仕入れ費

など、さまざまな費用が掛かります。

それに加えて、設立してしばらくは収益が出ないケースが多く、自社で乗り越えなければいけません。資本金は会社設立直後に、会社を支える重要な資金となります。

資本金が多ければ多いほど自社で会社を運営する元手を用意できていることになり、一般的には資本金が多ければ多いほど、外部取引先からの信頼も得やすくなります。

資本金の額については、過去の会社法では

  • 株式会社・・・1000万円以上
  • 有限会社・・・300万円以上

と、用意しなければならない金額が決まっていました。

しかし2006年に会社法が変更されてからは、1円以上の資本があれば誰でも会社を設立できるようになりました。これによりベンチャーなど、大量の資本金を用意しにくい場合でも手軽に会社を設立できるようになりました。

資本金自体は、後で調整(増資や減資)することが可能です。資本金の増減具合は、企業の運営が成功しているかどうかの一つの指標になります。


資本金に関する注意点

資本金に関しては、次のような注意点があります。

  • 設立前に資本金以外の元手の準備が必要
  • 資本金額によっては融資などが受けられない可能性がある
  • 会社間取引にも影響する
  • 資本金額によって納める税額が変わってくる
  • 一定の資本金がないと起業できない場合もある


設立前には資本金以外の元手の準備が必要

資本金は1円でも問題ありませんが、それだけでは会社は設立できません。

たとえば株式会社の場合、

  • 登録免許税
  • 定款認証費

などが掛かってきます。

会社を設立する際は、資本金に加えて少なくとも数十万円は資金を用意しておく必要があります。「資本金さえ用意すれば、会社は簡単に設立できる」と勘違いしないようにしましょう。

資本金によっては融資などが受けられない可能性がある

資本金は、会社の信頼性を表す重要な指標として扱われます。そして資本金によって、融資が受けられるか受けられないかも決まってきます。

たとえば財務省が管理している「日本政策金融公庫」から融資を受けるには、融資金額の最低10分の1以上は自己資金として資本金を用意しておく必要があります。融資商品ごとに融資条件や融資限度額などは変わってきますが、基本的に資本金が多いほど多額の融資が確実に受けられます。

融資を受けない場合は関係ありませんが経営状態は目まぐるしく変化していくので、融資を受けないという状況はまず考えられないでしょう。

会社を設立する場合は融資などの資金調達をスムーズに行えるよう、ある程度まとまった資本金を用意しておく必要があります。

会社間取引にも影響する

資本金は融資先だけではなく、取引を行う会社も確認します。

会社は取引を行った上で利益を出さなければいけないので、取引相手は途中で倒産する可能性がある、取引リスクが高い会社とは関係を持ちたがりません。そのため、新しく外部の会社と取引関係を持つ際は、取引を開始する前に審査が行われる場合がほとんどです。

資本金が少ないと体力のない企業と見られ、取引の開始に消極的な会社も出てきます。資本金をある程度用意しておくのは、企業間取引でもマナーであることは十分心にとめておきましょう。

融資や企業間取引を受けるためには、最低数百万円ほど資本金があると安心です。


資本金額によって納める税額が変わってくる

資本金が少ないのも問題ですが、多すぎても逆に問題が出てきます。資本金が多すぎると税制優遇が受けられず、多額の税金を納付する必要性が出てくるからです。

たとえば資本金が1000万円未満の場合は、最大2期目まで消費税納付が免除されます。しかし資本金が1000万円以上だと消費税納付免除が受けられず、消費税を計算して納税を行う必要があります。

また法人税の中に含まれる法人住民税には、事務所などを有していることをベースに必ず支払わなければならない均等割というという部分がありますが、資本金が1000万円以下の場合は均等割で支払う税金が少なくなります。ただし1000万円以上になると、均等割で支払う税金が一気に増えてしまいます。

さらに資本金が3000万円以下の会社は、設備購入の際に税の減免などさまざまな優遇を受けられます。しかし3000万円を超える場合は、受けられる優遇が少なくなります。

総合的に考えると、設立当初は1000万未満に資本金を抑えた方が納める税額が少なくなるケースが多いと考えられます。


一定の資本金がないと起業できない場合もある

資本金は1円から用意できますが、業種によっては一定の資本金がないと起業できない場合もあります。

たとえば一般建設業を設立するには、最低でも500万円の資本金を用意する必要があります。また第一種旅行業を設立する際は3000万円と、より高額の資本金が必要です。さらに一般労働者派遣事業の場合は、1事業所設立につき2000万円の資本金が必要です。

会社設立の際は業種によって資本金の最低額が設定されていることも踏まえて、資本を蓄えておきましょう。


資本金として必要とされる額

資本金は少なすぎても信頼性が得にくくなってしまいますし、逆に多すぎても税制などの問題で不利になる可能性があります。そのため会社を設立する際は、適切な資本金額の平均を知っておくと便利です。

業種によって資本金額平均は違いますが、全体的には300万円前後で資本金を用意するケースが多いようです。そして1000万円未満だと税制優遇が多いことも考えると

資本金の理想的な必要額は300万円前後~1000万円未満

と考えられます。

EC事業では設備投資が少ない分、これより少なくても十分運営が可能な場合もありますし、逆に製造業など設備投資が多めの業種ではもっとお金が掛かる場合もあります。

利益なしでも数か月間はお金のやりくりができるか、またイレギュラーな事態にも対応できる余裕はあるかなど、さまざまな観点から資本金の額を決めて用意する必要があります。

くれぐれも資本金が少なすぎて、債務超過になってしまい、信頼性が低下するような事態は避けてください。足りない場合は出資などで資本金を増やし、健全な運営ができる状態を確保しておきましょう。

ぜひ事業に合った資本金を用意して、気持ちよく会社運営をスタートさせましょう。


まとめ

今回は資本金とは何か、そして注意点や用意しておくべき金額などをご紹介しました。

会社法変更により1円からでも会社を設立できるようになりましたが、実際にはそれ以外にも初期費用が必要です。そして資本金が少なすぎると融資先や取引先が一気に制限されてしまうので、本格的に会社を設立したい場合はある程度まとまった資金を用意しておく必要があります。

ただし多すぎても税金が増えるなどのデメリットがあるので、設立当初は300万円前後~1000万円未満をおすすめします。この費用はあくまで目安なので、想定される事業規模などにより柔軟に変更してください。