更新日:2019/08/06
現代ではジャンルに関係なく業務のIT化が進み、どこの企業でも書類を電子化して効率的に管理する必要性が出てきています。しかし書類の電子化作業は意外に面倒。一昔前だと書類を見ながらExcelでいちいち直接文字入力・・・という場面も少なくありませんでした。
こんな状況を打破したのが「OCR(Optical Character Recognition)」の普及です。OCRは最新の技術ではなく昔から存在していましたが、業務で活用するには精度面などで問題がありました。しかし最近では手書き文字まで高精度で認識するOCRが登場しており、OCRの業務への導入が各企業で進んでいます。
そこで今回は今ホットなキーワードであるOCRと何か、そして導入のメリット・デメリットや実際の活用法まで、幅広くご紹介していきます。「OCRとは何か知りたい」、「OCR導入を検討しているので、メリット・デメリットや実際の活用場面を知って検討の参考にしたい」という方はぜひご覧ください。
OCRとは、和訳すると「光学文字認識技術」のことです。スキャナーやスマホカメラなど、各装置から書類を読み込み、その中の文字をプログラムによって認識して出力できます。
OCR自体の歴史は古く、「AI(人工知能)」などの分野に関わる技術として研究が進められていました。1950年代には海外ですでに商用としてサービスが提供されていました。ただし当初のOCRはトレーニングによって認識させたい文字をあらかじめ読み込まなければならず、パターンから少しでも外れていると認識してくれないなどの致命的な弱点がありました。
このように一昔前まではビジネスで実用化するには課題の多かったOCRですが、最近は目覚ましい進化を遂げています。一番の要因は、OCR技術確立当初からいっしょに研究が進められていたAIの発達です。AIをOCRと組み合わせることで、くせのある筆記など読み取りが難しかった文字も簡単にデジタル化できるようになるなど、精度が向上しました。
現在OCRの最高精度は99%を突破しており、超高精度になっています。
OCRを導入すれば、ビジネスで次のようなメリットがあります。
OCRで書類を電子化すると、デジタル化されることによりすっきり書類がまとまります。ですから従来わざわざ膨大なスペースを使って紙の書類を保管していた企業は、OCR化により余計なスペースを書類に割く必要がなくなります。
またOCRを使うと、書類のデータベース化作業も簡単になります。そしてキーワードで必要な書類を検索するなど、いつでもどこでも書類を活用できるようになります。書類の管理が簡単になり、効率化されるのがOCR活用のメリットです。
OCRを利用すると、書類をペーパーレスで管理できます。これは政府が推進している書類のペーパーレス化に準拠することになり、社会的責任を果たしている企業としてイメージアップも狙えます。
また従来の書類管理では膨大な紙の書類を複数の人員で管理する手間がかかり、人件費が嵩んでしまうデメリットもありました。OCRで書類をデジタル化すれば紙の書類管理からも解放され、余計な人員を書類管理に割く必要もなくなります。結果人件費が削減され、コア業務に人員を割けるようになって企業収益の向上にもつながります。
社内書類を全て紙で管理している場合、万が一自社が地震や火事、水害などの被害にあった場合に、重要な情報が喪失してしまう危険性があります。しかしOCRであらかじめ書類をデジタル化し、クラウドなど別の場所に保管しておけば、自社が災害に見舞われても重要な会社情報は損失せずに済みます。また人的エラーなどで書類が汚損してしまったときなども、OCRで書類をデジタル化しておけばデータが残っているので安心です。
どんな状況でも滞りなく作業を進められるという意味でも、OCR活用による書類デジタル化は有効です。ただしクラウドなど外部に企業情報を保管するのは、情報漏洩の危険もあるためセキュリティ面に気を配る必要もあります。
OCR導入には、次のようなデメリットがあるのも覚えておくと安心です。
OCRは確かに高精度になりました。しかし使うシステムによって精度に多少ばらつきがあるため、読み取れない文字があることも忘れてはいけません。
例えば文字に意味のない取り消し線のようなものが大量に被っていた場合、さすがにOCRで読み取るのは難しいでしょう。ですからOCRで読み取った後確認しないでデジタル文書を指定の場所に保存すると、後で読み返したときに一部読めない部分も出てくる可能性があります。
OCR導入後も全てをOCRに任せるのではなく、OCRで読み取り後エラーがないかどうかは社員がチェックするなど、人的にOCR作業を補助する必要性は出てきます。
OCRを活用できれば、大幅なコスト削減につながります。ただしOCRシステム導入にはコストがかかるので、上手く活用できないと却って自社の足を引っ張る結果にもなりかねません。
OCR導入前には事前にどの工程にOCRを活用して課題を解決したいか洗い出し、どれだけコスト削減や業務効率化などが図れるか確認しておきましょう。
ここからはOCR検討の参考になるよう、実際に想定されるOCRの活用方法を3つご紹介していきます。
OCRで読み取った文字を、翻訳することも可能です。
例えばアメリカの企業が新規クライアントになり、アメリカ英語のビジネス書類を読解しないといけなくなったとき、まず英語の書類をスキャナーで読み込みます。そしてOCRで英語を認識させた後に、翻訳機能を連携させて日本語に訳します。こうすればアメリカ英語の書類もしっかり日本語で読解できます。
他にも英語だけでなく、ドイツ語やフランス語など、主要語を翻訳してくれるOCRシステムもあります。こういったOCRシステムを活用すれば、グローバル化で外国の企業と書類のやり取りをしないといけないときも自社の日本語書類を外国語化したり、外国語の書類を和訳したりしてしっかり対応ができます。
OCRを活用すれば、クライアントへの出向などでも役に立つ場面があります。
例えばクライアントに渡された書類をその場でスマホカメラにて撮影。撮影した書類をOCRアプリで文字認識させれば、あっという間に電子書類が完成します。その電子書類を自社へ送れば、電子書類としてすぐに新情報の社内共有が可能です。
また万が一「うっかり紙の書類を忘れた!」という場面でも、クラウドに書類を保存しておけば、その場で書類内容を確認して打ち合わせに対応できます。「リスクヘッジ」という面でも、OCRによる書類デジタル化は有効な手段になります。
OCRは紙の書類だけでなく、画像化されているPDFや「PNG」などの画像形式ファイルからも文字を認識して抽出できます。
例えば画像ファイルから文字を抽出して引用したいときも、OCRシステムを使えば簡単に画像ファイルから文字を抜き出し、コピー&ペーストで文字引用が可能です。紙の書類だけでなく、デジタルの画像データからも文字抜出ができるのもOCRの利点です。
今回はOCRの概要やメリット・デメリット、そして実際の活用方法まで幅広くご紹介しました。
OCRをビジネス活用すれば、業務効率化やコスト削減などで大きなメリットがあります。ただしOCRは万能ではありません。人的チェックも含めて万全の活用体制を整えておく必要があります。
ぜひOCRを活用して、自社の収益向上などを目指しましょう。