バックオフィス業務のお悩みや、PCAの業務ソフトをお使いの皆様の
お悩み解決を提供する総合サイト

「IT導入補助金2020」の振り返りと暫定版公募要領から紐解く「IT導入補助金2021」のポイント

更新日:2021/03/16

「IT導入補助金2020」の振り返りと暫定版公募要領から紐解く「IT導入補助金2021」のポイント

tr210301_img_pc.jpg
tr210301_img_sp.jpg

【アーカイブ配信】IT導入補助金2022セミナー

初めてIT導入補助金の活用を検討されるお客様・検討したけれどまだ申請には至っていないお客様、IT導入補助金2022についての準備や申請のポイントを解説

2月26日に、IT導入補助金2021 交付規程・公募要領(暫定版)が公開されました。いよいよ5年目のIT導入補助金がスタートいたします。IT導入支援事業者およびITツール登録申請開始は3月下旬頃、交付申請受付開始は、4月上旬頃とのことです。

IT導入補助金は、他の補助金と異なり、公募要領だけでは全貌はつかめず、交付申請の手引き(WEB上の実際の申請入力画面イメージ等)が公開されない限り、申請の内容やステップの詳細は不明ですが、公募要領暫定版を読む限り、IT導入補助金2020と大きくは変わらない印象です。

筆者は、IT導入支援事業者であったこともありますし、IT導入補助金を利用した事業者側の経験もあります。また、他のIT導入支援事業者の後方につく形で、数多くの申請サポートをした経験もあります。IT導入補助金を過去4年間、様々な立場で見続けてきたものとして、IT導入補助金2021のポイントを解説いたします。

IT導入補助金2020の振り返り

まず2020年3月から12月にかけて行われたIT導入補助金2020の振り返りを行います。新型コロナ対策として、追加予算が計上され、特別枠が設定されたことにより、採択率はかなり高まると予想されスタートしたIT導入補助金2020ですが、結果的にはかなり厳しい採択率となりました。

2020年3月に行われた臨時対応の1次公募から12月までの間に、全10回の締切回が設けられました。A類型の採択は6,503者、B類型は155者、C類型は21,140者でした。合わせて27,798者がIT導入補助金2020において採択(交付決定)されたことになります。(筆者カウントによる)

IT導入補助金は申請件数が公表されないため、採択率を正確に割り出すことはできません。筆者は申請回ごとの交付決定のたびに、経済産業省に採択率をヒアリングしておりましたが、1次公募からA/B7次公募・C6次公募(9月2日締切9月30日交付決定)までは、継続して、約50%の採択率でした。しかし、最後の3回に関しては、約33%、約20.8%、約19.2%と急減いたしました。全10回合わせての採択率は約42%ということになります。尚、経産省にヒアリングした限りでは、A・B・Cの類型による採択率の差もほとんどないとのことでした。

参考までに、以前のIT導入補助金の採択率は以下のとおりです。(これも経産省ヒアリングによる)

  • 2017年→約50%
  • 2018年→約100%
  • 2019年→約33%

IT導入補助金2020は、1年前のIT導入補助金2019よりは採択率は高かったものの、コロナ対策予算がつき、採択率が高まることを期待されスタートした割には、体感としては厳しかったという印象となります。

見逃すことができないのが、IT導入支援事業者による、採択率の差です。筆者は、すべてのIT導入支援事業者の情報を知っているわけではありませんが、トータルで数十件以上の申請を出しても、採択率10%以下のIT導入支援事業者もあれば、70%を超える採択率だったIT導入支援事業者もありました。採択率が低いIT導入支援事業者からは、その理由が全くわからないという声をよく聞きます。

IT導入補助金2020においては、採択率が急減した最後の3回に関しては例外もありますが、前半の7回に関しては、不採択となるべき事業者が不採択となり、採択されるべき事業者が採択されています。まずは、申請内容にミスがないことが絶対条件となります。そのためには、IT導入支援事業者が公募要領や交付申請の手引きを熟読することが必要となりますが、これができていないケースを多く見かけました。


IT導入補助金2021のポイント

交付申請の手引きが公開されない限り、申請のステップや入力する項目の詳細は不明ですが、暫定版公募要領を読む限り、IT導入補助金2020と大きくは変わらない印象です。特に通常枠のA・B類型は補助上限額や補助率など、ほぼ同じと読み取れます。

大きな変更は、IT導入補助金2020における特別枠(C類型)が、IT導入補助金2021においては、低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)となり、補助率は2/3となるという点です。

まず、箇条書きにてIT導入補助金2020との比較を列挙いたします。

ただし、あくまで暫定版公募要領の記載内容と事務局への問い合わせによるものですので、正式版公募要領にて内容が変わる可能性がある旨、ご留意ください。

IT導入補助金2020と変化のない事項

  • 事務局は例年通り、一般社団サービスデザイン推進協議会
  • 補助事業者とIT導入支援事業者がパートナーとして申請するステップ
  • 審査項目、加点内容(クラウド、インボイスが該当するITツールが有利)
  • 過去採択「有り」の事業者は減点(過去3年間)
  • ホームページ制作は対象外(通常枠・特別枠ともに)
  • ECサイト制作は、特別枠のみOK(ただし、「異なるプロセス間での情報共有や連携を行う連携型ソフトウェアとしての登録が必要」) 
  • ハードウェアレンタルは特別枠のみOK
  • 事業者は、gBizIDプライムの取得が必須

IT導入補助金2020と異なる事項

  • 申請対象外の事業者の範囲が拡大(大企業の孫会社、課税所得が15億円を超える中小企業は申請できない、と読み取れる)
  • 交付申請期間が、2020においては、12月下旬までと明記されていたが、暫定版の公募要領においては明確にされていない
  • 昨年は、緊急のコロナ対策として、3月に臨時公募があったが、今年はなさそう
  • 特別枠の改変(C・D類型)※次項にて掘り下げます
  • 特別枠の補助率上限は2/3(IT導入補助金2020においては、最大3/4)
  • 特別枠の遡及型はなし(交付決定後の発注が必要。交付決定前のITツール導入はNG)
    と読み取れるが、事務局に確認したところ、1月8日以降に導入したITツール(そのITツールがIT導入支援事業者によって登録されることが前提)に関しては、遡及申請を認める決定がなされたとのこと。ただし、全国が対象なのか、緊急事態宣言が発令された都道府県の事業者に限定されるかは不明
  • 第三者による総括的な確認が不要になると思われる
  • 給与支給総額の増加目標が未達の場合、および事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合の返還額、返還時期が明確に定義された
  • すでに購入済みのソフトウェアに対する追加購入分のライセンス費用はNG(バージョンアップも対象外とのこと) 

類型別の補助上限額・補助率・プロセス数等の整理

特別枠(C類型・D類型)について

A・B類型については、IT導入補助金2020とほぼ同じですが、わかりにくいのが、特別枠のC類型・D類型です。暫定版公募要領では、以下の説明がなされています。

▼C類型(低感染リスク型ビジネス類型)

業務の非対面化を前提とし異なるプロセス間での情報共有や連携を行うことで補助事業者の労働生産性の向上に寄与するものとして、連携型ソフトウェアとして事務局に登録されたITツールを導入する際に選択する類型

▼D類型(テレワーク対応類型)

業務の非対面化およびクラウド対応されていることを前提とし複数のプロセスにおける遠隔地等での業務を可能とすることで補助事業者の労働生産性の向上に寄与するものとして登録されたITツールを導入する際に選択する類型

▼非対面化ツールとは

事業所以外の遠隔地から業務を行うテレワーク環境の整備をはじめ、対人接触の機会を低減するよう非対面又は遠隔でのサービス提供が可能なビジネスモデルへの転換(業務形態の非対面化)に資する、労働生産性の向上を目的としたITツールをいう。

IT導入支援業者がITツール登録する際の手間が一つ増えることが予想されます。詳細は、ITツール登録要領が公開されない限りはっきりしませんが、例えば、PCAソフトであれば、PCA会計・PCA給与・商魂・商管(すべてクラウド版)のそれぞれを単独のツールとして登録した上で、この4つのソフトは連携型ソフトウェアとしての登録もするということと思われます。連携型ソフトウェアとしての登録が完了した場合は、事業者はその連携型ソフトウェアをITツールとして選択すれば、C類型にて申請ができるということになります。この例えで言えば、D類型(テレワーク対応類型)にも申請が可能ということになりますが、この場合は、おそらく金額的メリットが高いC類型での申請をした方がよいということになります。

ECサイト制作は、IT導入補助金2020においてはC類型での申請が認められましたが、IT導入補助金2021においては、複数プロセス間の連携を可能とする単一ツールとしてITツール登録されない限りは、C類型での申請はできないこととなり、何らかの連携する別のツールと組み合わせて申請しなければならないことになると読み取ることができます。


予算について

通常枠(A・B類型)と低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)では、財源が異なることは一応理解しておきましょう。

通常枠(A・B類型)は、令和元年度補正予算(2020年1月30日成立)の「中小企業生産性革命推進事業」として3,600億円が計上されていますが、これは、ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金の3つの補助金を「複数年」に渡って、流動的に使うためのものです。(そのために、経産省・中企庁から委託先の事務局にというスキームから、間に、中小企業基盤整備機構を挟む<機構に3,600億円を交付する>というスキームに変更しております)

低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)は、令和2年度第三次補正予算(2021年1月28日成立)の「中小企業生産性革命推進事業の特別枠の改変」として2,300億円が計上され、同じく、ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金の3つの補助金で分け合うことになります。配分は分かりませんが、通常枠とは異なり、「単年度(今年)」で使い切る予算となります。

よって、IT導入補助金2020においても同じでしたが、IT導入補助金2021の総予算がいくらであるかを類推することはあまり意味がありません。一つ言えることは、採択率を高めるためには、早めの申請回で申請することです。


おわりに

IT導入補助金は、国が主導する他の補助金(ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金)と比較すれば、申請難易度および負担度は低く、かつ採択後の各種報告の難易度や負担度も軽いというメリットがあります。最大補助額と照らし合わせても、いわゆる”コスパのいい“補助金であるのは間違いないでしょう。

しかしながら、その裏返しとして、他の事業者と申請の”差”をつけにくいため、「差別化」するためにできることが少ないということでもあります。その証拠に、ものづくり補助金では、過去採択”有り”で減点措置を講じられたにも係わらず、採択された事業者がありますが、IT導入補助金2020では、筆者の知る限り、過去採択”有り”で採択された事業者は聞いたことがありません。

IT導入支援事業者、事業者ともに強く認識すべきは、ITツールを十分に選定した上で、少しでも早い申請回での申請をすることです。ただし、過去採択有りの減点は、今後も続くことが予想され、来年度(IT導入補助金2022)で大きく申請スキームが変わることがない限り、IT導入補助金2021で採択されれば、来年度の採択可能性は極めて低くなることを考えると、補助金があるからという理由で、不必要なITツールを導入するのは間違いですし、チャレンジするのであれば、大きな金額を狙うべきとも言えます。

少し本題とそれますが、今年は、総予算1兆1,485億円の事業再構築補助金という、これまでにない規模の大型補助金がスタートするため、補助金市場が盛り上がっています。IT導入補助金や軽減税率対策補助金など、比較的負担度の軽い補助金しか経験したことのないITベンダーが、補助額が高い事業再構築補助金やものづくり補助金へのチャレンジを気軽に考えている傾向を最近感じますが、申請書の作成や採択された後の事務負担などは、それほど甘いものではないということは申し上げたいと思います。

補助金はあくまで、税の再配分として政策の一環で行われるものです。当然ながら、“制約”や“縛り”は発生します。
他の補助金と比較した際のIT導入補助金の特殊性は、事業者とIT導入支援事業者がペアを組んで、双方が当事者として申請し、その後の導入や報告まで行うという点です。当事者意識が低いIT導入支援事業者の採択率が低い傾向があると感じております。


本記事は、2021年3月11日時点で、公開されている暫定版公募要領からポイントを絞り抜粋しておりますが、情報の正確性、完全性が保証されているものではありません。正式版公募要領にて変更される可能性があります。 
特に特別枠のITツールの条件は、今後より詳細情報が事務局から発表されるはずですのでご留意ください。

IT導入補助金の申請にあたっては、必ずIT導入補助金事務局のホームページの最新情報を、ご確認の上、準備を進めてください。

この記事の執筆者
岩永 武大
岩永 武大(いわなが たけお)

株式会社知好楽ネットワーク代表取締役。
中小企業診断士。
販売管理システムを基軸とした業務効率化・付加価値向上の支援を行う一方、IT導入補助金においては申請サポートを行いYouTubeでの発信もしている。

URL:https://chikora.net/
Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCuYBJsCnzCU7ZE6XRhztKqw