更新日:2025/01/14
令和7年度税制改正大綱が令和6年12月20日に公表されました。
税制は、経済社会の変化に適宜に対応できるよう、毎年、その仕組みが見直されます。税制を毎年改正する目的は、国民及び企業等の税負担の公正性の確保などの基本理念を踏まえながら、国民や各種省庁、経済団体等の要望を反映させることにあります。
本記事で紹介する与党税制改正大綱は、税制改正に関する素案という位置づけであり、今後の議論を踏まえて詳細が決まってくる性質であることをご承知おきください。また、法人の業務に関連する重要性の高い改正のみをピックアップして解説しております。
資本金1億円以下の中小法人のうち、所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率が17%に引き上げられました。なお、所得の金額が年10億円以下の事業年度について、所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率は15%として2年間延長されます。
中小企業経営強化税制(中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、対象設備の取得や製作等をした場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超1億円以下の法人は7%)が選択適用できる税制)の適用期限が2年間延長されました。また、100億企業の創出を促進するための拡充措置として、売上高100億円超の達成に向けたロードマップ作成等を要件に、工場のラインや店舗等の生産性向上に係る設備導入に伴う建物が対象設備に追加されました。
事業承継税制(先代から非上場自社株を贈与・相続する際の税負担が100%猶予(要件を満たすと免除)される制度で、2027年末まで特例措置)において、これまでは特例措置が終了する2027年12月末の3年前、2024年末までに後継者を自社の役員に就任させなければなりませんでした。今回の改正で、この役員就任期間が特例措置に限って事実上撤廃となります。先代から非上場自社株の贈与を受ける直前までに役員に就任しておけばよい事となります。
① 地域未来投資促進税制の延長(3年)・拡充
② 中小企業防災・減災投資促進税制の延長(2年)
③ 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の延長(3年)
外国人旅行者は免税店で商品を購入する際、パスポート等を提示することで免税(消費税なし)された商品を購入することができます。この制度を悪用して、商品を国外に持ち出さず国内で転売するケースが発生していました。今回の改正で、免税店で商品を購入する際、免税ではなく課税(消費税あり)で商品を販売し、出国時に関税で持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度(リファンド方式)に改正されることになりました。ただ、システム整備の対応が必要なため令和8年11月1日以後に行われる免税対象物品の譲渡等について適用されることになります。
① 令和7年分以降の所得税について、基礎控除のベースとなる控除額が48万円から58万円に引き上げられます。
② 令和7年分以後の所得税・個人住民税について、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。
③ 扶養親族の合計所得金額が58万円を超えると扶養控除による控除ができないことになっていましたが、19歳以上23歳未満の同一生計の親族がいる場合において、その親族の合計所得金額が123万円以下であるときは、一定の金額が控除できることになりました。
④ 上記の改正は、令和7年分以後の所得税及び令和8年度分以後の個人住民税について適用されることになります。
第2号被保険者(70歳未満の会社員や公務員など厚生年金の加入者)の個人型確定拠出年金(iDeCo )の拠出限度額について、下記の見直しが行われます。
① 第2号被保険者の企業型DCの拠出限度額を月額6.2万円に引き上げる(現行:月額5.5万円)。
② 第2号被保険者のiDeCoの拠出限度額を月額6.2万円に引き上げる(現行:月額2.0万円又は2.3万円)。
なお、第1号被保険者の個人型確定拠出年金と国民年金基金との共通拠出限度額(現行:月額6.8万円)について、月額7.5万円に引き上げの見直しが行われます。
市町村から中小企業等経営強化法に規定する先端設備等導入計画の認定を受け、かつ、賃上げに取組む企業を対象に、赤字黒字を問わず設備投資に伴う負担を軽減する固定資産税の特例措置の適用期限が2年間延長されるとともに、賃上げ率に応じて、軽減率が引きあがることになります。
令和7年度税制改正では「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行に対応し、またそれを更に発展させていくための税制改正が最重要事項となっています。
ここ最近の税制改正で優遇されているのは賃上げ・投資に積極的で、成長意欲の高い企業です。そのため、中小企業や個人事業主においても、引き続き賃上げ・投資・成長の3つの観点を意識して、事業経営を考えることが望ましいでしょう。
OAGグループ OAG税理士法人 株式会社OAGコンサルティング 執行役員
税務会計顧問、経営コンサルティング業のほか、経営幹部を始め、経理担当者・営業担当者等を対象に全国各地で講演・セミナー講師としても従事。明快かつ実践的な内容には定評がある。「管理会計手法を用いた投資・経営管理」及び「税務を活かしたキャッシュフロー経営」等に強みを持つ。
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