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令和6年度税制改正大綱の概要と改正ポイント

更新日:2024/01/12

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2024年1月25日(木)令和6年税制大綱読み解きセミナー

この記事の執筆をした大谷先生が講師を務めるセミナーのご紹介。令和6年度の税制改正のポイントを専門家の観点から解説。知っておかなければならない事項をやさしく説明いたします。

令和6年度税制改正のポイント

令和6年度税制改正大綱が令和51214日に公表されました。

税制は、経済社会の変化に適宜に対応できるよう、毎年、その仕組みが見直されます。税制を毎年改正する目的は、国民及び企業等の税負担の公正性の確保などの基本理念を踏まえながら、国民や各種省庁、経済団体等の要望を反映させることにあります。

本記事で紹介する与党税制改正大綱は、税制改正に関する素案という位置づけであり、今後の議論を踏まえて詳細が決まってくる性質であることをご承知おきください。また、法人の業務に関連する重要性の高い改正のみをピックアップして解説しております。

法人課税

賃上げ促進税制の強化

女性活躍・子育て支援に取り組む企業(プラチナくるみんやプラチナえるぼしの認定等)に税額控除率を5%上乗せし、最大控除率を大企業は30%から35%に、中小企業は40%から45%に引き上げ、その適用期限が3年間延長されました。

中小企業向けの教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置について、教育訓練費の増加割合が5%以上等である場合に適用できることとし、くるみんやえるぼし(2段階目)以上の認定を受けた場合は税額控除率に5%を加算する措置を加え、赤字企業向けに5年間の繰越控除制度を設けた上、その適用期限が3年間延長されました。

交際費から除外される飲食費に係る見直し

中小企業の販路開拓・販売促進等に必要な交際費について、事業年度800万円まで全額損金算入を可能とする特例措置が3年間延長されました。また、損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準は平成16年に1人当たり5,000円以下と定められて以来、18年ぶりに改正され、1万円以下に引き上げられました。

これまでの5,000円を基準とした社内規定や慣例等が大きく変わる事となります。

外形標準課税の適用法人の見直し

大企業による外形逃れを企図した減資や分社化等への対応として、以下の措置が講じられます。なお、現時点で対象外の中小企業およびスタートアップ(資本金1億円以下)は、引き続き対象外となります。

  1. 前事業年度に課税対象であった法人が資本金1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合は、引き続き対象となります。(令和741日施行予定)
  2. 資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人等の100%子法人等のうち、資本金1億円以下であっても、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるものは原則、対象となります。ただし、産業競争力強化法の認定を受けた事業者がM&Aを通じて買収した100%子法人等については、5年間対象外とする。また、新たに対象となる法人については、対象後に増加した税額分について、一定期間の税額控除の措置があります。(令和841日施行予定)

イノベーションボックス税制の創設

イノベーション拠点の立地競争力を強化する観点から、海外と比べて遜色ない事業環境の整備を図るための税制が創設されました。

国内で自ら研究開発した知的財産権(特許権、AI関連のプログラムの著作権)から生じるライセンス所得、譲渡所得を対象に、最大30%の金額について、その事業年度において損金算入できることとし、適用期間は7年間となります。

戦略分野国内生産促進税制の創設

世界で戦略分野への投資獲得競争が活発化する中、戦略分野のうち、特に生産段階でのコストが高い事業の国内投資を強力に促進するため、過去に例のない新たな投資促進策として戦略分野国内生産促進税制が創設されました。

産業競争力強化法(改正を前提)の認定事業適応事業者が、産業競争力基盤強化商品生産用資産(電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体(マイコン・アナログ)等)の取得等をしたときは、その認定の日以後10年以内の日を含む各事業年度において、その産業競争力基盤強化商品生産用資産により生産された産業競争力基盤強化商品のうちその事業年度の対象期間において販売されたものの数量等に応じた金額の税額控除が可能となります。

その他法人税

  1. 経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の延長(3)、拡充
  2. 事業承継税制(特例措置)における特例承継計画の提出期限の延長(2)
  3. 少額減価償却資産の損金算入特例の延長(2)
  4. 商業地等に係る固定資産税の負担調整措置・条例減額制度の延長(3)

消費税課税

プラットフォーム課税の導入

アプリやゲームなどのデジタルサービス市場において、国内外の事業者間における課税の公平性や競争条件の中立性を確保する観点から、国外サービス提供者の代わりにプラットフォームを提供する事業者が消費税を納めるプラットフォーム課税が導入されます。

本制度の対象となるプラットフォーム事業者には高い税務コンプライアンスや事務処理能力が求められること等を考慮し、 国外事業者が自身のプラットフォームを介して行うデジタルサービスの取引高が 50 億円を超えるプラットフォーム事業者が対象となります。あわせて、国外事業者により行われる事業者免税点制度や簡易課税制度を利用した租税回避を防止するため、必要な制度の見直しが行われます。

個人所得課税

所得税・個人住民税の定額減税

令和6年分の所得税・令和6年度分の個人住民税について、納税者及び配偶者を含めた扶養親族1人につき、令和6年分の所得税3万円・個人住民税1万円が減税されます。ただし、納税者の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入の場合は2,000万円以下)である場合に限ります。

令和6年分の年末調整の際に年税額から特別控除の額を控除して精算となりますので、実務担当の皆様は注意が必要です。

住宅ローン控除の拡充(子育て支援税制の選考対応)

住宅ローン控除について、子育て世帯等(年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者)に対する借入限度額が令和6年に限り維持されます。借入限度額は、認定住宅は5,000万円、ZEH水準省エネ住宅は4,500万円、省エネ基準適合住宅は4,000万円です。また、床面積要件も緩和されます。

資産課税

土地に係る固定資産税等の負担調整措置

土地に係る固定資産税等の負担調整措置について、令和6年度から令和8年度までの間、商業地等に係る条例減額制度及び税負担急増土地に係る条例減額制度を含め、現行の負担調整措置の仕組みを継続とし、引き続き負担調整措置のあり方についての検討が行われます。

まとめ

賃上げや投資に積極的な中小企業が優遇される改正

令和6年度税制改正大綱で中小企業におけるポイントは、賃上げ促進税制に新設された5年間の繰越控除制度、損金に算入できる交際費の上限が1人あたり1万円に引き上げられたことです。

ここ最近の税制改正で優遇されているのは賃上げ・投資に積極的で、成長意欲の高い企業です。そのため、中小企業や個人事業主においても、賃上げ・投資・成長の3つの観点を意識して、事業経営を考えることが望ましいでしょう。

この記事の執筆者
大谷 洋一郎
大谷 洋一郎 氏

OAGグループ OAG税理士法人 株式会社OAGコンサルティング 執行役員
税務会計顧問、経営コンサルティング業のほか、経営幹部を始め、経理担当者・営業担当者等を対象に全国各地で講演・セミナー講師としても従事。明快かつ実践的な内容には定評がある。「管理会計手法を用いた投資・経営管理」及び「税務を活かしたキャッシュフロー経営」等に強みを持つ。

OAGグループURL:https://www.oag-group.co.jp/