新規CTA

更新日:

令和5年度税制改正大綱の概要と改正ポイント

oag220101_img01_pc.jpg
oag220101_img01_sp.jpg

2024年1月25日(木)令和6年税制大綱読み解きセミナー

この記事の執筆をした大谷先生が講師を務めるセミナーのご紹介。令和6年度の税制改正のポイントを専門家の観点から解説。知っておかなければならない事項をやさしく説明いたします。

令和5年度税制改正大綱が令和4年12月16日に公表されました。

税制は、経済社会の変化に適宜に対応できるよう、毎年、その仕組みが見直されます。税制を毎年改正する目的は、国民及び企業等の税負担の公正性の確保などの基本理念を踏まえながら、国民や各種省庁、経済団体等の要望を反映させることにあります。

本記事で紹介する与党税制改正大綱は、税制改正に関する素案という位置づけであり、今後の議論を踏まえて詳細が決まってくる性質であることをご承知おきください。また、法人の業務に関連する重要性の高い改正のみをピックアップして解説しております。


法人課税

研究開発税制の見直し

企業が技術の改良、新たな知見を得るために行う考案や発明に係る試験研究に係る、一般試験研究費、特別試験研究費について税額控除可能額が増加しました。

現行の控除額上限が一律であるため、控除額が上限に達した企業にインセンティブが機能せず、一定規模以上の研究開発が抑制される可能性がありました。

今回の改正で控除率の下限が引き下がり(現行:2%→1%)上限が引き上がった(現行:25%→20%~30%)ことにより、今後の研究開発の効果や質が高まることが期待されます。


オープンイノベーション促進税制の見直し

本税制は、企業がスタートアップ企業の株式を取得した場合、その株式の取得価額の25%を企業の所得から控除できる税制として令和2年度の税制改正にて新設されました。

今回の税制改正で下記の見直しが行われました。

① スタートアップ企業から、株式を直接取得していない場合であっても、議決権の過半数を取得すれば適用可能となる。
② 資本金の増加を伴う現金による出資をした特定株式の取得価額の上限を100億円から50億円に引き下げる。
③ 対象法人が既にその総株主の議決権の過半数の株式を有しているスタートアップ企業に対する出資を対象から除外する。


その他法人税

① 中小企業投資促進税制等の見直し(2年間延長)
② 中小企業者等に対する軽減税率(年所得800万円以下の部分に適用される法人税の軽減税率15%(本則課税:19%))が延長(2年間延長)
③ デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の見直し(2年間延長)
④ 特定資産を買換えた場合の圧縮記帳の見直し(3年間延長)


消費税課税

適格請求書等保存方式の円滑な実施に向けた所要の措置

① これまで免税事業者であった者が課税事業者を選択した場合、消費税納税額を売上に係る消費税額の2割に軽減する負担軽減措置が3年間設けられました。

② 一定規模以下の事業者が行う少額の取引につき、インボイスが無くとも、帳簿のみで仕入税額控除を可能とする6年間の事務負担軽減措置が設けられました(対象となる取引は課税仕入れに係る支払対価の額(税込価額)が1万円未満の取引)。


個人所得課税

NISA制度の抜本的拡充・恒久化 ※令和6年1月から適用

① 非課税保有期間(現行:最長5年もしくは20年)を無期限化するとともに、口座開設可能期間については期限を設けず、NISA制度が恒久的な措置となりました。
② 一定の投資信託を対象とする長期・積立・分散投資の年間投資上限額(「つみたて投資枠」)が、120万円に拡充されました。
③ 上場株式への投資が可能な現行の一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」を設けることとし、「成長投資枠」の年間投資上限額については、240万円に拡充するとともに、「つみたて投資枠」との併用(最大360万円)を可能としました。
④ 一生涯にわたる非課税限度額を新たに設定した上で、1,800万円とし、「成長投資枠」については、その内数として1,200万円とされました。


スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設

① 保有株式の譲渡益を元手に、創業者が創業した場合やエンジェル投資家が創業前・創業期のスタートアップへの再投資を行った場合に、再投資分につき20億円を上限として株式譲渡益に課税しない制度が創設されました。

資産課税

資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築

① 相続時精算課税制度について、相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするほか、相続時精算課税で受贈した土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合、相続時にその課税価格を再計算する見直しが行われました。

② 暦年課税における相続前贈与の加算期間を現行の3年から7年に延長するほか、延長した期間(4年間)に受けた贈与のうち一定額(100万円)については、相続財産に加算しないこととする見直しが行われました。


納税環境整備

電子帳簿等保存制度の見直し

① スキャナ保存制度の見直し
国税関係書類をスキャナで読み取って保存する際の要件として、解像度及び階調情報・大きさ情報・入力者情報等が必要でしたが、これらの要件が廃止されました。また、相互関連性要件を満たすべき書類が、契約書・領収書等の重要書類に限定されました。

② 電磁的記録の保存制度についての見直し
メール等に添付された電磁的記録として保存が必要とされる請求書・領収書等については見直しが行われ、また、下記の要件を満たす保存義務者は、そのデータを保存する際の検索機能等の確保が不要となりました。

(1) 判定期間における売上高が5,000万円以下の事業者(現行は1,000万円)
(2) その電磁的記録の出力書面の提示、又は提出の求めに応じる準備をしている事業


まとめ

防衛力強化に係る財源確保のための税制措置

今回の税制改正にて、令和6年度以降の適切な時期に施行するとしたうえで、下記の措置を講ずることになりました(一部抜粋)。今後の議論の経過を注視する必要がありそうです。

① 法人税
法人税額に対し、税率4~4.5%の新たな付加税を課す。中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除することとする。

② 所得税
所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長する。

③ たばこ税
3円/1本相当の引上げを、国産葉たばこ農家への影響に十分配慮しつつ、予見可能性を確保した上で、段階的に実施する。


筆者プロフィール

大谷 洋一郎(おおたに よういちろう)

OAGグループ
株式会社OAGアウトソーシング 代表取締役
株式会社OAGコンサルティング 取締役

税務会計顧問、経営コンサルティング業のほか、経営幹部を始め、経理担当者・営業担当者等を対象に全国各地で講演・セミナー講師としても従事。明快かつ実践的な内容には定評がある。「管理会計手法を用いた投資・経営管理」及び 「税務を活かしたキャッシュフロー経営」等に強みを持つ。

OAGグループホームページ:https://www.oag-group.co.jp/

大谷 洋一郎 氏 連載記事

2024年1月25日(木)令和6年税制大綱読み解きセミナー

この記事の執筆をした大谷先生が講師を務めるセミナーのご紹介。令和6年度の税制改正のポイントを専門家の観点から解説。知っておかなければならない事項をやさしく説明いたします。

新規CTA

※本記事の内容についての個別のお問い合わせは承っておりません。予めご了承ください。