更新日:2022/04/08
なかなか終わらないコロナ禍。テレワークを余儀なくされる中で、「うちも電子契約を導入しようか」と検討する会社も増えています。とはいえ、「どんな書類を電子契約にできるのか?」「どこから変えていけばいいのか?」と悩まれている方は多いようです。そこで、どんな書類が電子化できて、どういうシーンで使われるのかを解説していきます。
新型コロナウィルスの流行により、さまざまな業種で出社が控えられるようになりました。紙の書類をベースにしていると、テレワークのときに業務の進行に支障をきたしてしまいます。そのため、契約書類をデジタル化する企業は増えてきました。デジタル化に関する法整備も着々と進んでおり、現在は下記のように多種多様な文書において電子契約・電子署名が可能となっています。
電子化が可能な書類
電子契約書ができないもの
不動産関連の重要事項説明書や賃貸借契約書などは書面の交付が義務づけられており、対面や郵送のやりとりが必須でした。しかし宅地建物取引業法の改正が行われ、2022年5月までに不動産取引の完全オンライン化が可能となっています。規制緩和が進む中、電子契約を導入する企業はますます増えていくことでしょう。
では、実際に企業でどのようなシーンで電子契約が活用されているのか、導入シーンを紹介していきます。
「これなら、うちでも真似ができそう」というイメージが湧けば幸いです。
従業員として雇った方と雇用契約を結ぶ場合、これまでは双方が契約書に記名捺印するシーンが多かったと思います。2019年4月1日より規制が緩和され、労働条件通知書の電子化が解禁になったことで、雇用契約のオンライン化が一気に進みました。これにより、労働者が希望すればファックスや電子メールでの労働条件通知書の送付が可能となっています。
また、コロナ禍によるテレワークの普及を背景に、オンライン面接や遠方の人材を採用する機会が増加。雇用契約書や労働契約通知書の電子化を進める企業が増えています。雇用契約や入社手続きをシステム上で行うことができれば、書類に不備があった場合の差し戻しや書類のチェックや再作成・再送付などにかかる時間やコストを大幅に減らすことができます。それによって、書類確認に割いていた時間を別の業務にあてることができ、生産性を高められます。
電子契約でトップクラスに利用されているのが業務委託契約です。
業務委託契約書とは、自社の業務を個人事業主など外部業者に委託する際に取り交わす契約書のこと。業務委託契約はそもそも書面の発行自体が義務づけられていないため、電子契約をすることが可能になっています。契約書の様式に決まりはありませんが、単なるワードファイルだとたやすく改ざんできるため、内容を証明してくれるクラウド型の電子契約サービスの利用をおすすめします。導入するとスマホからワンタップで簡単に署名捺印できるようになり、お互いの仕事がスピーディーに進むようになります。
秘密保持契約書は、営業や技術などに関する秘密情報の目的外使用、および第三者への開示を禁止する際の契約に関連します。企業規模に関わらず、他社との事業連携の際に使われます。業務委託やアウトソーシングの依頼時に、自社の技術や顧客の個人情報を業務以外の目的で使用させないため、あらかじめ秘密保持契約を結ぶこともあります。取引開始前で迅速に秘密保持契約を締結したい時にも、電子契約なら短期間で確認可能です。定型的な文章なので、比較的電子契約に移行しやすいタイプの契約です。基本サービス契約書や機密保持契約書、業務委託契約書までをデジタル化することにより、業務プロセス全体の効率化となり、製品などを市場に投入するまでのスピードを早めることができます。
注文書とは、他人に物品の販売等を申し込んだり、一定の仕事・事務処理を依頼したりする文書のことです。引き受けたことを証明するために作成される文書として、注文請書を発行する場合もあります。郵送やFAXなどのアナログの作業では仕分け作業が必要ですし、注意していても読解ミスや抜け漏れが発生する可能性があります。発注書を頻繁に作成する部署では、郵送や保管の手間も負担になりがち。他部署の人に「数年前の似たようなケースの発注書が見たい」と言われたときも、アナログ保管だと探すのに苦労します。
発注書を電子化してデータで管理すれば、コストを大幅に削減できる上に、取引内容について検索しやすくなるのもメリットです。コロナ禍により、出社しなくても契約業務が滞らないようにするために積極的に導入検討されるケースも見られます。
近年は売買契約書をオンラインで交わすことも増えてきました。
例えば、これまでセールスマンが毎月地方の顧客を訪問して、売買契約書を手渡していたような会社があったとします。毎回移動時間や交通費がかかりますし、相手企業の担当者にとっても訪問のタイミングに合わせて在席し、押印の準備をして待つというのは負担です。テレワークが普及している現状では「契約書にハンコを押すために出社する」という事態も招きかねません。双方のメリットや業務効率化を考え、売買に電子契約を導入する会社も増えているようです。
近年の法改正に合わせて、民間企業の取引では電子化が進んでいます。また、アナログの印象が強い市役所業務にもデジタル化の動きがあります。長野県中野市は「クラウドサインforおまかせ はたラクサポート 〜自治体向けプラン〜」を導入し、これまで書類送付や対面で行っていた契約業務全般をデジタル化していくと発表しています。
これからの時代は電子契約が当たり前になっていくことでしょう。顧問先に「電子契約に対応していないんですか?」と聞かれることも増えていくと思います。アナログの良さはもちろんありますが、世の中を流れる電子化の波にも合わせていかないと、旧態依然とした会社というイメージを与えてしまうおそれがありますし、最悪の場合は契約が解除されてしまうかもしれません。いきなりすべてを変えるのは難しいと思うので、できるところから少しずつ電子化していくことをおすすめします。
有限会社人事・労務 ESコモンズ メンバー。
みはらライティング社労士事務所 社会保険労務士 東京都社労士会所属。
城東地区の町工場を専門にしている社労士です。人の話を聞くのが好きで、北海道から沖縄まで日帰りで取材に行くことも多々。小さな会社が無理なく法律を守るためにはどうすれば良いのかを日々考え、社長の気持ちに寄り添うことを大切にしています。