更新日:2025/05/14
茨城県筑西市に移住して知り合った農家さんの庭先で野草の話をしているうちに、ふと懐かしい記憶がよみがえりました。
幼い頃、おばあちゃんとヨモギを摘みに出かけ、一緒に作った草餅の美味しさや、川の土手で摘んだノビルを酢味噌であえた「ぬた」が、食卓に並ぶ当たり前の一品だったこと。
それ以来、野草の健康効果や美味しい食べ方についてもっと知りたくなり、農家さんに教えてもらったり、本を読んで学ぶようになりました。すると、雑草だと思っていた植物に意外な使い道や効能があることを知ったのです。
今回は、私がよく活用したり食べたりする野草について、お話しをしたいと思います。
日本では昔から野草が食用や薬用として利用されてきました。奈良時代には春の薬草を摘む「薬猟(くすりがり)」という行事があり、ヨモギや菖蒲(ショウブ)などが健康を願う薬草として大切にされていたそうです。
この「薬猟」は、現代の端午の節句にも受け継がれており、邪気を払う象徴としてヨモギや菖蒲が飾られます。また、この日には菖蒲湯に浸かる風習があり、健康を祈る意味が込められています。こうした風習が今も残っていることを知ると、自然の恵みとともに生きてきた日本人の知恵を感じます。
農家さんの畑や庭先で教えてもらい、野草に関する本を読みながら、少しずつ食べられる野草を覚えてきました。その中でも、手軽に活用できるものをいくつかご紹介します。
少し酸味とぬめりがあり、ビタミンCを豊富に含む野草です。7~9月にかけて花を咲かせる頃が収穫の適期です。暑い季節に食べると、デトックスや強壮作用をもたらし、体が元気になる感じがします。食べ方は、5分ほど茹でて水にさらし、おひたしや味噌汁の具にすると美味しくいただけます。
春に畑や庭の隅でよく見かけるノビルは、ニラやネギを少し優しくしたような味です。緑の葉や根元のコロンとした部分を細かく刻み、醤油麹とごまを加えてタレを作るのがおすすめ。豆腐にのせたり、焼いた肉につけたりすると、香り豊かでとても美味しくなります。ただし、胃腸が弱い方は一度にたくさん食べないよう注意しましょう。
ツユクサは、花が咲く前の葉を摘み、生のままサラダにしたり、茹でておひたしにするのもおすすめです。鮮やかな青い花は生のままサラダの彩りになりますが、朝咲いて夕方にはしぼんでしまいます。
むくみや熱中症などによいとされています。
ドクダミは食べることもできますが、私はドクダミをチンキ(アルコール抽出液)にしています。花が咲く5月から6月頃に摘み取ったドクダミをよく洗い、水気をきります。(水が残っているとかびます)瓶にドクダミを詰め、ドクダミがかぶるようにホワイトリカーを注いで3か月ほど置けば完成です。
あくまで個人的な経験ですが、先日、ペットが結膜炎になり目が開かなくなってしまいました。チンキを薄めてコットンに湿らせ、目の周りを優しく拭いたところ、すぐに目が開くようになりました。ドクダミには抗炎症や解毒作用があるそうです。チンキを精製水で薄め、グリセリンを少し加えて化粧水としても活用しています。
身近な自然に目を向けてみると、これまで「雑草」と思っていた植物が、実は食べられることに気づきます。それらの野草には、健康にも役立つ力があります。
都市部では野草を見つけることはできても、食べる機会はなかなかないかもしれません。でも、身近な場所にこんなにもすばらしい植物があることを知るだけで、自然への視点が変わり、少し豊かな気持ちになれる気がします。
この季節には、さまざまな野草が顔を出します。どんな植物があるのか、ゆっくり観察するだけでも、いつもと違う視点で自然を感じることができるかもしれません。何気ない日常の中で、自然に目を向ける時間を持ってみるのもいいですね。
野草を食べる際には、いくつか注意があります。
野草を食べる際は必ず見分け方を確認し、専門家の情報を参考にしましょう。
大海淳『野草をおいしく食べる本』ナツメ社
岩槻秀明『おいしく食べられる身近な野草・雑草図鑑』スタンダーズ・プレス株式会社
パナケアヘルス
管理栄養士・食生活アドバイザー・カウンセラー
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【執筆者HP】パナケアヘルス なるしまひろみ