更新日:2025/12/02
「この業務はAさんしかわからない」「Bさんが不在だと処理が止まってしまう」
こうした状況が続いているなら、業務が特定の担当者に依存する“属人化”が起きている状態かもしれません。
業務が特定の人に依存する“属人化”は、担当者不在時の業務停滞やリスク拡大を招きやすく、正確性・継続性が求められるバックオフィス部門では注意が必要です。
本記事では、「そもそも属人化とは何か?」という基本から、発生する原因、悪影響、例外的に許容されるケース、そして防止・解消の方法まで、実務担当者の視点でわかりやすく解説します。
属人化とは、業務や知識、ノウハウ、作業手順などが特定の個人に依存した状態を指します。
業務が属人化すると「その人しかわからない」「代替できない」業務が生まれ、他の社員では対応できなくなる問題が発生します。
【例】
属人化の本質的な問題は「業務の再現性が失われること」にあります。
同じ業務を他の人が再現できない状況になっているため、組織としての対応力・継続力が著しく低下してしまうのです。
このような属人化は「業務の効率化」や「安定運用」を阻害する要因であり、近年では内部統制やリスク管理の観点からも課題視されるようになっています。
業務の属人化が起こる背景には、組織内の体制や情報共有の在り方に起因する“いくつかの根本的な問題”があります。
ここでは、特に発生しやすい3つの原因について解説します。
業務手順がマニュアルとして明文化されておらず、担当者の記憶や経験に依存して進められているケースでは、他の人が代わりに対応することが難しくなります。
仮に引き継ぎが行われたとしても、手順の抜け漏れや品質のばらつきが発生しやすくなるでしょう。
マニュアルがない状態では業務の可視化ができず、改善点の発見や業務の効率化にも支障をきたします。
業務に関する情報が特定の個人・部門に閉じている場合、その人が不在になるだけで業務が停滞します。
日常的な共有の仕組みがないと、担当者以外の社員は状況を把握できず、問題が発生した際の対応力も大きく低下します。
特に、日報や会議メモ、引き継ぎ資料といったドキュメントが存在しない組織では、属人化が加速しやすい傾向があります。
残念ながら、自分の業務が他者に把握されないことを「立場の維持」や「評価獲得」の手段として利用する人が存在する場合もあります。
いわゆる“仕事を囲い込む”ような行動は、チーム全体の生産性を下げるだけでなく、リスクマネジメントの観点からも非常に危険です。
本人が退職・異動した場合に業務が一切引き継がれず、重大な影響を及ぼす恐れがあります。
属人化は現場の「慣れ」で見過ごされがちですが、実は組織全体にとって大きなリスクをはらんでいます。
属人化が進むと、担当者の不在による業務停滞やミス・トラブルの温床になるケースがあります。
さらに内部統制の弱体化など、日々の業務にも深刻な影響を及ぼしかねません。
ここでは、属人化によって起こり得るリスクや組織的なデメリットを具体的に整理します。
属人化された業務は、担当者の不在が即「業務停止」につながります。
急な休職や退職、異動があった場合、代わりに対応できる人材がいなければ業務が滞るだけでなく、納期遅延や顧客対応の不備といったトラブルも起こり得ます。
特に経理処理や契約対応など、期日が厳密な業務では大きなリスクとなり得るでしょう。
属人化された業務は他者の目が入らないため、手順や判断の誤りが発見されにくくなります。
また、「いつもこのやり方でやっているから」という慣れが、不正確な処理を放置する温床になる場合もあります。
例えば帳票記入漏れ、請求額の誤り、設定ミスといった事例は、属人化した組織内で多く見られます。
こうしたミスが是正されないまま過ごせば、重大な事故やクレームに発展するリスクを抱えることになります。
特定の業務を一部の社員しかできない状態では、チーム全体の生産性が高まりません。
周囲のメンバーはその業務に関与できないためスキルが育たず、人的リソースの活用効率も悪くなります。
また、業務の偏在による「属人負担」が特定の社員の離職要因になることもあります。
誰にも共有されていない属人化業務は、改善の対象にもなりにくく、非効率なやり方が漫然と続けられてしまいます。
業務の目的や背景が共有されていないため、ツール導入や外部委託の判断も難しくなり、業務効率化を目指すうえで“ボトルネック”として残り続けることになってしまいます。
属人化された業務は、ガバナンス・監査・リスク管理の観点でも問題となります。
属人化によって、不正や不適切な処理があっても気づかれずに放置される恐れがあるからです。
特に経理・契約・IT管理といった重要領域での属人化は、企業としての信頼性やコンプライアンス体制に深刻な影響を与える恐れがあります。
属人化は多くの業務で避けるべきとされますが、すべてのケースで完全に排除すべきとは限りません。
業務内容や組織構造によっては、一定の属人性が許容される、あるいは必要とされる場面もあります。
以下のような業務では、属人化が必ずしも問題とはなりません。
詳細は以下のとおりです。
定型的な事務作業や単純なデータ入力など、手順が明確で習得しやすい業務は、仮に一時的に属人化していても大きなリスクにはなりにくい業務です。
突発的な対応も少ないため、代替要員への引き継ぎも比較的スムーズに行えます。
クリエイティブ領域では、各担当者のスキルや発想力、制作スタイルが業務の成果に大きく影響します。
そのため、あえて一定の裁量や判断を個人に委ねた方が、業務品質や生産性の向上につながることもあります。
税務、法務、システム設計など、高度な専門知識が求められる業務では、特定の担当者に業務が集中するケースがあります。
こうした業務は属人化しやすい傾向がありますが、専門的な知識を持つスペシャリストの存在は貴重です。そのため、スペシャリストの知識をブラックボックス化しないように、知識の伝承や後進の育成を意識し、問題を回避できるようにしましょう。
自部署内で完結する処理や、他部門と連携しない単独作業は、属人化による影響範囲が限定的です。
こうした業務は属人化したとしてもリスクが小さく、属人性を排除する優先度も比較的低くなる傾向にあります。
すべての業務が属人化によってリスクを抱えるわけではありませんが、業務の重要度・波及範囲・専門性などによっては、属人化が企業全体のリスクに直結することもあります。
特に以下のような業務は、属人化によるミスや滞留が大きな損失につながる可能性が高い業務です。
経理・財務関連の業務は、法令遵守や企業の信用に直結するため、属人化の影響が特に大きくなります。
例えば請求書や納品書の発行が特定の担当者しか行えない場合、急な不在時に業務が停止し、売上遅延や信頼低下のリスクが生じます。
また給与計算業務が属人化していると、ミスや遅延が従業員満足度の低下に直結することも。
決算処理や税務申告などの対応でも、手順が属人化していると監査対応や申告ミスの原因になる場合があります。
顧客情報や対応履歴を特定の担当者だけが把握している状況では、顧客満足度や業務品質の低下を招きます。
顧客からの問い合わせに対して「担当者不在で回答できない」という状況が繰り返されると、企業としての信頼が揺らぎます。
またトラブルやクレーム対応で履歴が共有されていないと、同様の問題が繰り返されやすくなってしまいます。
顧客満足度の低下を防ぐためには、CRM(顧客関係管理ツール)や対応履歴の共有ツールを活用し、組織全体で情報を共有する体制づくりが必要です。
社内インフラや業務システムの管理は、属人化しているとトラブル時の対応が著しく困難になります。
もし特定の担当者しか設定内容や保守手順を把握していない場合、障害時の復旧が遅れ、業務が全面停止する可能性があります。そうなれば、企業の利益にも影響が出てしまうでしょう。
またシステムアカウントの管理や権限設定が個人依存になると、セキュリティ面でのリスクも高まります。
こうした理由から、IT部門では特に「引き継ぎ・ドキュメント化・定期レビュー」が不可欠です。

業務の属人化は、放置すれば組織全体のリスクを高める要因となります。
属人化を未然に防ぐには、「担当者がいなくても業務が回る状態」を作ることが基本です。
そのためには以下のようなポイントを意識しながら、日常的な業務の進め方を見直していく必要があります。
「担当者に聞かなければわからない」状態を避けるには、業務の手順や判断基準を明文化し、組織内で共有できる環境を整えることが第一歩です。
例えばマニュアルや業務フローを作成し、ファイルサーバーや社内ポータルで誰でも参照できるようにしておけば、属人化を予防できます。
メールや個人メモ、口頭だけでのやりとりでは情報が埋もれやすく、結果として属人化が進みます。
そんなときはCRMやグループウェア、社内チャットなどのツールを活用し、業務上の情報を組織全体で“見える化”する方法が効果的です。
情報を可視化して一元管理することで、「〇〇さんしかその情報はわからない」といった事態を防げます。また情報を検索しやすくなることで、業務効率化にもつながるでしょう。
特定の業務を1人の担当者が長く抱え込んでいると、本人の不在時や退職時に業務がストップするリスクがあります。
業務を円滑に継続するためには、あらかじめ複数人が対応できる体制をつくることが重要。
バックアップ体制のための人員育成や業務の定期的な棚卸しを行い、属人化を防ぎましょう。
属人化の温床となる「担当者によるアレンジ」を防ぐには、業務プロセスを自動化・定型化するツールの導入が有効です。
ワークフローシステムやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などによって判断や手続きのルールを明文化すれば、担当者に依存しない運用が実現できます。
属人化を解消するには一時的な対応ではなく、業務プロセスや組織文化そのものの見直しが求められます。
以下では、現場で実践できるステップを順を追って紹介します。
まずは、現状の業務を可視化するところから始めます。
「誰が・何を・どのように・いつ・どこで・なぜ行っているか」を棚卸しし、業務フローとして図示・文書化します。
この段階では属人化の度合いや、担当者しか知らない作業がどこにあるかを明確にすることが目的です。
洗い出した業務をもとに、手順書やチェックリストを整備します。
ポイントは「新人でも一定の品質で対応できるようにする」こと。
例えばスクリーンショットや操作動画を活用すると、より実用的なマニュアルになります。
作成したマニュアルは、共有されなければ意味がありません。
社内ポータルやドキュメント管理システムなどにマニュアルをアップし、誰でもアクセスできる状態を作ります。
このとき、更新管理のルール(最終更新日・責任者の明記)も忘れずに行いましょう。
特定の人しかできない業務を減らすためには、「複数名が同じ業務をできる状態」をつくる必要があります。そこで有効なのが「クロストレーニング」です。
クロストレーニングとは、従業員が業務内容を横断して実行できるようにするための訓練・教育のこと。他部署とのローテーションや、業務の一部を他のメンバーにも経験させることで、担当者依存を防ぎます。
属人化を防ぐには、業務内容を「やりっぱなし」にせず、定期的に棚卸・見直しする仕組みを整えることが重要です。
たとえば、月1回の業務棚卸ミーティングを設けて、
といった項目をチーム内で共有・点検することで、属人化の兆候を早期に把握しやすくなります。
また、記録された業務プロセスやマニュアルの定期的な更新も欠かせません。
業務フローや使用ツールが変わっても、マニュアルが旧版のままだと属人化が再発する恐れがあります。
具体的な対策例
こうした定期レビューが習慣化されていれば、突発的な業務引き継ぎやトラブル発生時にも、現場が混乱せず対応できる体制が整います。
RPAやワークフローシステム、ドキュメント管理ツールなどを導入することで、業務の自動化・標準化が可能です。
ITツールをうまく活用すれば、「誰がやっても同じ結果が得られる」状態に近づけます。
属人化を解消するうえで「情報を自分だけが持つことが評価される文化」は大敵です。
情報やノウハウを共有することが評価される組織風土をつくることで、長期的な改善が進みやすくなります。
【ナレッジ共有文化をつくるための対策一覧】
| 項目 | 内容 | 補足・効果 |
|---|---|---|
| ナレッジ投稿の評価反映 | 社内WikiやDBへの投稿を評価・表彰に組み込む | 知見を共有するインセンティブを作れる |
| 情報共有会・勉強会の開催 | 定期的にナレッジ共有会を実施 | 学びや事例が組織内で循環する |
| 質問しやすいチャット環境 | 質問歓迎の文化をチャットで育てる | 誰かが必ず答える雰囲気づくりが重要 |
| 共有ルールの設定 | 「新業務は3日以内に手順をWiki化」など共有ルールを決める | 共有を仕組み化して習慣化できる |
| ナレッジ管理ツールの活用 | Notion・Confluenceなどを導入 | 検索性・更新性が高く、属人化防止に効果的 |
| 上司・リーダーの共有実践 | 管理職が積極的に共有を行う | メンバーへの浸透・模範となる |
キーパーソンの不在時にも業務を止めないためには、代替担当者の設定や引き継ぎ資料の整備など、バックアップ体制の構築が欠かせません。
具体的には業務のバックアップ担当者を明確にしたうえで、バックアップ担当者・代替担当者が定期的なロールプレイや引き継ぎ訓練を実施するなどの対策が有効です。
普段からキーパーソン以外にも業務を経験させておけば、急な対応が必要な場合であってもすぐに対応でき、「業務が滞る」「損害が発生する」といったトラブルの予防につながります。
業務の属人化を解消するために有効なのが「業務の標準化」です。
これは、業務プロセスを共通ルールとして整理し、誰が担当しても同じ品質・手順で遂行できる状態を目指します。
標準化によって得られる主なメリットは以下の通りです。
業務手順が標準化されていれば、担当者が急に異動・休職・退職した場合でも、マニュアルやフローに沿って別の担当者が速やかに引き継げます。
これにより、業務が停滞するリスクを大きく減らせます。
属人化を排除し、誰が対応しても同じ品質を保てる仕組みがあれば、業務のバラつきやヒューマンエラーが減ります。
結果として業務における対応の一貫性を保ちやすくなり、クレームや再作業の削減にもつながります。
標準化されたマニュアルがあれば、教育担当者の経験に頼らず、誰でも同じ手順で新人を育成できます。
これにより、教育期間の短縮や教育の質の均一化が可能になります。
業務が可視化されていると、どこにムダやミスの原因があるかが発見しやすくなります。
定期的な業務レビューや改善提案の仕組みと併用することで、継続的な業務改善にもつながります。
「その人がいないと業務が止まる」といった状態は、BCP(事業継続計画)上のリスクになります。
標準化によって誰でも対応できる業務体制を構築すれば、急な欠勤・休職などが発生しても対応しやすくなります。
業務の属人化を解消するには、標準化+ITツールの利活用が非常に有効です。
特にバックオフィス業務においては、定型業務・情報共有・業務管理といった分野で、ITの導入が大きな効果を発揮します。
【属人化解消に役立つITツールの例】
| 分類 | 活用目的 |
|---|---|
| 業務マニュアル作成 | 手順書の可視化・共有によるナレッジ定着 |
| タスク管理・進捗共有 | 業務の「見える化」・進捗管理 |
| グループウェア・チャット | 業務情報のリアルタイム共有・属人性排除 |
| ワークフローシステム | 申請・承認プロセスの定型化と見える化 |
| RPA・業務自動化ツール | 定型業務を自動化し、業務を人に依存させない |
【導入時のポイント】
ツールの導入そのものが目的化してしまうと、かえって現場の混乱を招きます。まずは属人化している業務を洗い出し、解消したい課題を明確にした上で、適切なツールを段階的に導入することが成功のポイントです。
ITツールを活用して、属人化の解消に成功した事例を2つ紹介します。
| 株式会社高山 様 |
|---|
| kintoneと『PCAクラウド 商魂・商管』を連携させることで、業務の属人化を解消しました。以前は3人がかりで行っていた手作業の転記作業が1人で完結するようになり、エラーのリスクが大幅に低減されました。新たに営業サポートポジションを設ける中で、社員の役割が明確化され、対内的なサポート体制が強化されました。業務プロセスの見直し作業により、社員の意識も向上し、チーム全体の業務効率が向上しました。これにより、社員は自らの役割を実感し、積極的に業務に取り組む姿勢が生まれました。 |
| 株式会社アクト・玄々堂ホールディングス 様 |
|---|
| 約20法人の会計業務を『PCAクラウド』で統一し、属人化を解消しました。従来の手作業や個別対応の経理体制から脱却し、リアルタイムでの数値共有を実現しました。この変革により、経営判断のスピードが向上し、小規模拠点でも1名体制で経理を運営できる可能性が高まりました。さらに、クラウド化に伴う統一した業務基盤が構築され、内部管理が強化されました。 |
事例の詳細:20社超の会計を一つに若きリーダーが挑んだグループ経営の基盤改革
業務の属人化は、引き継ぎの停滞やミスの発生、担当者の退職によるリスク拡大など、組織全体のパフォーマンスに大きく影響します。
特にバックオフィス業務では、業務の可視化とナレッジの共有が欠かせません。
まずは自社の業務にどのような属人化リスクがあるのかを洗い出し、改善すべき領域を明確にすることが第一歩です。そこからマニュアル整備やツール導入、多能工化の促進など、段階的な対応を進めていきましょう。