更新日:2023/10/10
「業務がひっ迫していて時短勤務中の従業員に残業してもらいたい」もしくは「急用があって今日だけ残業したいが残業は可能なのかという問合せが従業員からあった」という経験はありませんか。
現実問題として閑散期であれば時短勤務で問題がなくても、繁忙期の場合は残業が発生するといったようなことも考えられることから、どのような条件や制限があるのか理解しておくことは大切です。
今回は時短勤務中の残業時間に関する基礎知識、企業の対応方法、時短勤務制度導入の注意点についてお話しします。
時短勤務中の残業は原則として認められています。他の雇用形態と同様に法定時間外労働や深夜勤務も可能であり、残業に関しても賃金割増に対応すれば特に問題はありません。
ただし、法的に問題はなくても、労働者である従業員の生活に支障が出るような形ですと、働き続けることができずに退職されてしまう可能性が高まるため注意が必要です。
また、時短勤務は育児・介護休業法によって定められていることから、労働者である従業員側から希望された場合は対応する義務があるため、企業や組織側としては留意しておきましょう。
時短勤務の対象者及び条件は、3歳に満たない子供を育てている労働者です。いわゆる養育している状況であれば時短勤務が法的に認められる形であり、時短勤務を請求および希望された場合は勤務時間を4時間から6時間の間、8時間を超えない範囲で調整する必要があります。
原則的には3歳に達したら時短勤務の対象外にはなりますが、従業員の環境によっては、雇用する側と相談して期間を延ばすといったことも柔軟に対応した方が良いでしょう。
育児の場合との違いは何歳までといったような条件はないものの、対象者は3年間で2回、利用できるという点です。状況に合わせて勤務日数や勤務時間を調整できるという意味でもあり、雇用する側としても 柔軟に対応する必要があります。
参考元:短時間勤務等の措置について|介護休業制度|厚生労働省
時短勤務における企業として定める所定外労働時間の制限として、原則6時間を超える勤務時間の設定をしてはいけないとされています。
ポイントとしては勤務時間の設定という部分であり、その時間を超えた残業については法的に問題ないという点です。そのため、4時間に設定したら4時間を超えた分は残業、同じく6時間なら6時間を超えれば残業代を支払う必要があります。
時短勤務における法的に守るべき法定時間外労働の制限は、1ヶ月に24時間、1年に150時間が上限です。
ポイントとしては法定時間外労働は、企業として定めた時間ではなく法的に定められた法定労働時間である8時間を超える労働を意味します。そのため勤務時間を6時間と設定し、8時間以内で労働が終わる場合は、法定時間外労働としてはカウントされないということは覚えておく必要があるでしょう。ただし、勤務時間を6時間と設定した場合、8時間以内で労働が終わったとしても残業代は支払う必要があるという点は留意しておく必要があります。
時短勤務者は、午後10時から翌午前5時までの深夜帯残業が制限されます。労働者である従業員から時短勤務を希望された時点で、雇用する側が深夜残業をしなくて済むように調整する必要があります。
また、業界や業種によっては深夜の時間帯に緊急で何か発生するといったこともあるため、労働者側が希望した場合は雇用する側が許可することも可能です。ただし、前提として育児や介護をしているということを忘れず、従業員の善意に甘えないように注意してください。
残業代の計算方法については、一般的なフルタイムの従業員やアルバイト、パートと同様の計算方法になります。
基本的には上記を基準として、雇用する側が定めた計算方法で残業代を支払えば問題ありません。前述したように雇用する側が設定した勤務時間を超えたら、残業代を支払うということだけしっかりと覚えておきましょう。
時短勤務制度導入の注意点として、仕事の効率化と適切な作業配分をすることが挙げられます。仕事の効率化とはデジタル化やペーパーレス化、自動化やテレワーク及びリモートワークへの対応など、従業員が働きやすい環境を整えることです。
適切な作業配分とは、時短勤務にはしたものの以前と同じような業務量を設定するのは無理があるため、業務量を調整したり、業務標準化や業務平準化によって業務の割り振りを変えたりすることを指します。
特に属人化してしまうような状況の場合、時短勤務にしても負担が減らないということで従業員が困ってしまうこともあるため、特定の従業員に依存しなくてもすむマニュアル化などについても進めておきましょう。
時短勤務制度導入の注意点として、管理職・社員への周知と理解を進めることが挙げられます。時短勤務制度については、フルタイムの方から見れば勤務時間は少なく、残業した場合も短い時間で多く給与がもらえるように感じてしまう制度でもあります。
管理職や一緒に働く社員が不平や不満を持たないようにするためにも、時短勤務制度への理解を深めてもらい、従業員の誰もが利用できる仕組みだと周知しておくことが大切です。
現実問題として少子高齢化による労働不足が今後も続くことを考えると、ノウハウや経験のある従業員に残ってもらうことは企業や組織としても優先すべきことであるため、その点についても管理職や社員自身が理解しておくことも求められます。
時短勤務制度導入の注意点として、ハラスメント防止の徹底をすることが挙げられます。例えば、時短勤務で働く従業員よりもフルタイムの従業員を優遇したり、時短勤務者に対して不遇な業務ばかりを押し付けたりしてはいけないということです。
時短勤務制度は決して仕事をサボっているような制度ではないと理解すること、長時間働いている人の方が偉いという考え方は捨てることが重要と言えます。
同時に時短勤務制度に対応するため、フルタイムの従業員の負担を過度に増やすことも避けるべきです。時短勤務は楽をしていてずるいと言ったような考え方が蔓延しないためにも、適切な作業配分や人材配置を行うようにしましょう。
今回は時短勤務中の残業時間に関する基礎知識、企業の対応方法、時短勤務制度導入の注意点についてお話ししました。
時短勤務への対応は、企業や組織としての義務であると同時に、従業員との雇用関係を円滑かつ良好に維持するためにも必須と言えます。
時短勤務に対応することで従業員の定着率が向上すれば、必然的に企業や組織としてのノウハウが蓄積された人材が残るため、従業員満足の向上とともに顧客満足度の向上も期待できるようになるでしょう。