バックオフィス業務のお悩みや、PCAの業務ソフトをお使いの皆様の
お悩み解決を提供する総合サイト

2025年の崖とは? 業務をサクサク進めるにはDXの推進が必要

公開日:2022/06/17

2025年の崖とは? 業務をサクサク進めるにはDXの推進が必要

fl220401_img01_pc.jpg
fl220401_img01_sp.jpg

DX推進が叫ばれる中、多くの企業に衝撃を与えた「2025年の崖」の問題。
2018年に経済産業省が発表した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」をきっかけに知られるようになった言葉ですが、具体的にはどのような問題が生じるのでしょうか。

本記事では、2025年の崖とはどのような問題なのか。また、企業はどのように対応していくべきなのかをご紹介します。


「2025年の崖」とは?

2025年の崖とは、問題を抱えた既存ITシステムにより多額の経済損失が発生する問題です。「2025年以降、崖から転落するかのように一気に多額の経済損失・問題が生じる可能性がある」という意味から、2025年の崖と呼ばれています。

企業内で問題を抱えた既存ITシステムは「レガシーシステム」と呼ばれており、システムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化といった問題点を有しています。

2025年の崖・レガシーシステムの問題

①老朽化
(例)古い言語を利用したITシステムにより、保守や運用できる人材が減少していく

②複雑化
(例)部署・部門ごとでバラバラのシステムを利用することで、横断的なデータ活用が難しくなる

③ブラックボックス化
(例)過剰カスタマイズによる「独自のシステム」の構築、保守運用人材の退職により、システムの全貌が分からなくなる

DXレポートの表題となった2025年の崖DXレポート※では、日本企業のおよそ8割が老朽化したシステムを抱えているというデータを発表しており、また、それらの現存するレガシーシステムの維持管理には、多くのコストが必要になります。

レガシーシステムに長期的に多額のコストが必要になると、今後企業にとって必要な「DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)」を推進する際の足かせとなっていくことが予想されます。そうなれば、新たなデジタル技術の導入が進まず、未来の経営・事業戦略において大きな損失が生まれる可能性も高くなるのです。

2025年の崖では具体的にどのような問題が生じる? 経済損失の原因

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」では、レガシーシステムを有したまま2025年を迎えた場合、以下のような「問題」が生じると指摘しています。

2025年の崖で懸念される問題の例

  • 約43万人のIT人材不足
  • 先端IT人材の不足
  • 既存の古いシステムの保守・維持ができる人材の不足
  • SAP・ERPシステムのサポート終了
  • 基幹系システムの6割老朽化(21年以上使用)

これらの問題が一気に重なれば、企業は業務内容、経営戦略の見直しを必然的に迫られることになります。また2025年の崖に対応できない企業は、デジタル技術を活用した企業間競争の敗者となります。

その結果として多くの企業が業績悪化の道を辿り、国内で大きな経済損失が生じるのです。

2025年の崖はユーザー(企業)だけではなく、ベンダー(開発者)にも影響する

また2025年の崖にユーザー(企業)が対応できない場合、ベンダー(開発者側)にとっても不利益が生じます。

企業が2025年の崖対策を行わない場合、ベンダーも既存システムの保守や運用、受託型業務を続けなくてはならなくなります。そうなれば最先端のデジタル開発の人材育成・確保、クラウドサービスの開発・提供などに参入しづらくなってしまうでしょう。最新の技術が創出されにくくなれば、DXの推進はますます鈍化します。

 このようなユーザー・ベンダー双方での悪循環が生まれた場合、経済全体への影響はより計り知れないものとなるでしょう。事実、経済産業省のDXレポート※では、「企業がレガシーシステムを抱えたままである場合、2025年~2030年にかけての年間最大経済損失は12兆円になる」という試算も出ています。

「2025年の崖」において、企業には直接どのような影響が及ぶのでしょうか?
既出のDXレポートによれば、3つの影響があると考えられています。

業務基盤の維持や継承が難しくなる

レガシーシステムの維持に対するコストの増大、人的リソースが増えれば、「技術的負債」を背負う形になります。技術的負債とは、目先のシステム開発により長期的な保守費・運用費が高騰することです。

高騰した維持管理費の影響で新たなIT予算が割けなくなれば、結果的に業務基盤の維持、継承が困難になる可能性が高まります。

データ活用がままならずデジタル競争に負けてしまう

またレガシーシステムを現状維持するためにコスト・リソースを割くと、ビジネスモデルの変更が困難になります。従来のビジネスモデルのままでは、データを活用したビジネスモデルが当然になる今後の企業間競争にも負けてしまうでしょう。

保守運用人材の退職、減少によるデータ損失リスクの高まり

レガシーシステムの保守・運用には、古いプログラミング言語を知る人材が求められます。しかしIT業界では常に新たな言語、テクノロジーが開発されており、古い言語に対応できる人材が少なくなっていくことが予想されます。

保守・運用人材の確保が難しくなれば、サイバーセキュリティの問題が生じる可能性が高まります。また事故や災害によりシステムのトラブル、データ消滅等のリスクも高くなるでしょう。

2025年の崖を回避するための「DX推進」で重要なことは?

2025年の崖問題を乗り越えるには、デジタル技術を駆使し、業務や事業を抜本的に改革する「DX」が不可欠です。
ただし、DXは「業務のデジタル化」をするのが目的ではありません。

  • デジタル技術を用いて、企業内で新たな体系・体制を構築すること
  • それによって新しい事業や、企業価値を生み出すこと

この2つを行い、企業間競争における「優位性」を確立することがDXの目的であり、達成すべき目標だといえるでしょう。

2025年の崖に向けたDX推進で企業が得られるメリット

企業がDXを推進した場合、以下のようなメリットが得られます。

  • レガシーシステムへの保守・維持に割いていた人材、資金を新たなデジタル技術の活用へ割ける
  • データ活用による迅速な方向転換、グローバル展開への対応が可能に
  • デジタルネイティブ世代の人材が中心となった「新ビジネス」の創出につながる

DXを推進すれば、新たな製品、サービスの提供ができるようになったり、従業員の生産性・業績アップにつながったりといった効果が生まれるでしょう。

また業務効率向上により、社員のワークライフバランスの実現、古いシステム保守運用のコスト削減も期待できます。IT人材がレガシーシステムの保守運用から解放されれば、他の分野で技術を有効活用することも可能です。

このようにDXの推進には、企業活動において直接的なメリットが多数得られます。
特に「業務効率化の実現」は、現場社員としても実感しやすいメリットではないでしょうか。

企業活動がスムーズに回るようになれば、結果として経済損失を生まないことにもつながるでしょう。

2025年の崖で企業は具体的に何をすべきなのか?

企業が行う2025年の崖への対策としては、老朽化が進む「基幹システム・業務システム」のDXからスタートする必要があります。

その後、既存システムの再構築を行いましょう。既存システムの再構築手順としては、以下の4ステップで進めていくと良いでしょう。

①既存ITシステムの見直しと振り分け

  • 既存ITシステムの刷新や機能分割、追加
  • 既存ITシステムの縮小や廃棄
  • 現状維持(塩漬け)

②DXの進捗状況を可視化する
→トップダウンによる推進、各部門間で連携・プロジェクト化

③システムの保守管理に必要な人材の確保・育成
→システム部門を中心に、自社でデジタル人材を確保・育成する
 (ベンダーとプロフィットシェアが可能なIT人材を確保する)

④アナログな業務領域のデジタル化
→フロントオフィスや、バックオフィス業務(経理・給与・固定資産管理など)へのITツールの導入

「2025年の崖」を解決するためのDX推進の過程では業務の大幅な見直しが必要になり、現場の反発が生じる可能性も高くなります。現場社員の理解を得るには、トップダウンによる推進を行い、目的を理解してもらうことが重要です。

またDX推進においては、システム部門と各部門が連携し、「実際の業務に即したITシステム」を導入することも大切です。現場社員の意見を参考にすることで、より実務に適したITシステムの選定ができるようになります。

まとめ

経済産業省のDXレポートでは、「DXが実現すれば、2030年には実質GDP130兆円超の押し上げが実現できる」としています。しかしDXの推進・実行には多くの時間と費用が必要になるものです。

2025年の崖で大きな経済損失を生まないためにも、企業全体で早急にDX推進へ取り組み始めましょう。

※参考:経済産業省|DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(簡易版)