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再雇用制度とは?定年後でなくても知っておきたいメリットを解説

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近年の日本は高齢化社会であり、健康寿命も年々長くなっています。これに伴い、定年後も働く意思のある高齢者が増えており、政府も60歳以降も働き続けられる社会を目指して法改正を進めています。

定年後も働き続けられる制度のひとつに「再雇用制度」があります。

この記事では再雇用制度の種類をご紹介し、定年後の再雇用にスポットをあてメリットや注意点、知っているとよい社会保険の制度を詳しく解説します。

再雇用制度とは

再雇用制度とは退職した社員を再度雇用する制度です。主に次の2つのパターンがあります。

  1. 定年した社員の再雇用
  2. 自己都合退職した社員の再雇用

1.については定年した社員の継続雇用を目的とした制度です。定年延長とは異なり、定年と同時に退職した人に対し、退職後に期間を定めた労働契約を結ぶことになります。

規程などで運用を定め、社員が定年する前に、定年後も継続して働くことを希望するかの意思確認をして、再雇用の条件などを話し合って進めていきます。

2.は育児や介護などで退職した人や独立をした人、他社へ転職した人を対象に出戻りを認めるというものです。過去に退職した人を再雇用するという制度になります。楽天のジョブ・リターンやキリンホールディングスのキャリア・リターン制度、富士通のカムバック制度など企業によって制度名はさまざまです。近年ではこの制度を導入する企業が増えていますが、まだまだ一般的とはいえません。

再雇用制度といえば、1.の定年した社員の再雇用を指すのが一般的です。
この記事では1.の定年した社員の再雇用にスポットをあててご説明していきます。

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正

定年者の再雇用制度は以前からありましたが、2021年4月1日に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正されたことで改めて注目が集まりました。

改正の内容は定年を70歳までに引上げるものではありませんが、従業員が70歳になるまで就業機会を確保すること を企業の努力義務としています。

就業機会を確保する措置は次の5つです。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 定年廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度の導入
  4. 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に「事業主が自ら実施する社会貢献事業」もしくは「事業主が委託・出資する団体が行う社会貢献事業」に従事できる制度の導入

世界的にも定年を延長する国が増えつつあり、我が国も2025年には定年年齢が延長されるといわれています。
こういった流れからも、再雇用制度がどのようなものか、概要やメリットについて定年前に理解しておくとよいでしょう。

再雇用制度のメリット

定年者の再雇用制度のメリットを企業側と従業員側の双方からみていきましょう。

企業側のメリット

  • 従業員が培った専門知識や技術などを活用できる
  • 担当変更による顧客ばなれを防ぐことができる
  • 新規採用しなくてよいので採用コストを削減できる
  • 新規採用ではないため教育コストが抑えられる
  • 熟練者が社内に残ることにより技術が継承できる

従業員側のメリット

  • 慣れた会社で働けるため新たな職を探す必要がない
  • 自身のスキルや技術を活かせる
  • 一定の収入を得られるため老後の計画が立てやすい
  • 今までの勤続年数が通算されるため有給休暇の条件も引き継げる

再雇用制度の注意点

定年後の再雇用を進める企業のなかには、定年した社員がモチベーションを保てなかったり、再雇用した際の所属により元部下が上司になったりするケースもあり、職場の雰囲気が良くないなどの問題を抱えていることもあるようです。

そういった問題を解決するため再雇用の際のルールを定めている企業もありますので、いくつかご紹介しましょう。

  • 退職前の部署では再雇用せず、定年前の職場環境をリセットする
  • アドバイザーなどの肩書で責任をもたせず、専門知識や技術の継承に特化する
  • 教育部門に配属し育成計画を策定するなど の経験を活かせ、モチベーションを保てる環境を用意する

これらは一例ですが、再雇用される定年者の意識の持ち方も大きく影響しますので、再雇用は新たなスタートであることを会社側と定年する従業員の双方で話し合い、合意しておく必要があるでしょう。

再雇用する労働契約のポイント

再雇用は期間を定めた有期雇用が一般的です。65歳までは継続契約を前提とするなど、規程で定められていることが多いでしょう。

再雇用後の賃金は定年前の50%~70%程度になることが多いようです。オープンになっていなくても人事部門には再雇用の賃金テーブル表が用意されており、定年時の役職や年収などによって再雇用の契約額が定められるケースが一般的です。

手当は一般の社員と同じにしなければなりません。過去には待遇格差の問題によって最高裁まで争われた事案もあります。

社会保険については企業規模と再雇用の労働時間により決まります。仮に従業員50名の企業を60歳で定年した場合を考えてみましょう。

週の労働時間:30時間以上で再雇用された場合は健康保険・厚生年金保険・雇用保険に加入することになります。
週の労働時間:20時間以上30時間未満であれば雇用保険だけ加入します。
週の労働時間:20時間未満では雇用保険も加入しません。

定年予定者には早めに労働条件を提示し、社会保険などの条件も説明しながら進めるとよいでしょう。

会社側が知っておきたい再雇用の社会保険知識

従業員を再雇用した際の賃金ダウンを補うため、定年者が受けられる給付金があります。社会保険の等級変更を、随時改定を待たずに行う方法とあわせてご説明しましょう。

高年齢雇用継続給付金

60歳以上65歳未満の雇用保険加入で、60歳時点の賃金より60歳以後の賃金が75%未満となった場合で(1)(2)の要件を満たすと従業員本人に雇用保険から給付金が支給されます。

  1. 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
  2. 雇用保険の加入期間が5年以上あること

給付金の額は60歳到達時賃金と給与のダウン率により異なります。基本的にダウン率が大きければ給付額も大きくなるシステムで、ダウン率60%が上限です。

「支給額早見表」(令和3年 8 月 1 日現在)

【表1】正社員(通常の労働者)の付与日数

60 歳以降
各月の賃金
60 歳到達時等賃金月額(賃金日額×30 日分)
\473,100 以上 ¥450,000 ¥400,000 ¥350,000 ¥300,000 ¥250,000 ¥200,000 ¥150,000
¥350,000 ¥3,150 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥340,000 ¥9,690 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥330,000 ¥16,236 ¥4,917 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥320,000 ¥22,752 ¥11,456 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥310,000 ¥29,295 ¥17,980 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥300,000 ¥35,850 ¥24,510 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥290,000 ¥42,369 ¥31,059 ¥6,525 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥280,000 ¥42,000 ¥37,576 ¥13,076 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥270,000 ¥40,500 ¥40,500 ¥19,602 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥260,000 ¥39,000 ¥39,000 ¥26,130 ¥1,612 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥250,000 ¥37,500 ¥37,500 ¥32,675 ¥8,175 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥240,000 ¥36,000 ¥36,000 ¥36,000 ¥14,712 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥230,000 ¥34,500 ¥34,500 ¥34,500 ¥21,252 ¥0 ¥0 ¥0 ¥0
¥220,000 ¥33,000 ¥33,000 ¥33,000 ¥27,764 ¥3,278 ¥0 ¥0 ¥0
¥210,000 ¥31,500 ¥31,500 ¥31,500 ¥31,500 ¥9,807 ¥0 ¥0 ¥0
¥200,000 ¥30,000 ¥30,000 ¥30,000 ¥30,000 ¥16,340 ¥0 ¥0 ¥0
¥190,000 ¥28,500 ¥28,500 ¥28,500 ¥28,500 ¥22,876 ¥0 ¥0 ¥0
¥180,000 ¥27,000 ¥27,000 ¥27,000 ¥27,000 ¥27,000 ¥4,896 ¥0 ¥0
¥170,000 ¥25,500 ¥25,500 ¥25,500 ¥25,500 ¥25,500 ¥11,441 ¥0 ¥0
¥160,000 ¥24,000 ¥24,000 ¥24,000 ¥24,000 ¥24,000 ¥17,968 ¥0 ¥0

高年齢雇用継続給付金は従業員にメリットのある制度ですが、会社側にもメリットがあります。

再雇用後の賃金のダウンについて給付金の見込み額を示すことで、収入ダウンによる再雇用者のモチベーションが下がることをくいとめる効果が期待できるのです。

健康保険と厚生年金の同日得喪

再雇用により賃金が下がり標準報酬月額がかわった際は、被保険者資格の喪失と取得を同日に行い、新たな標準報酬月額で資格を取得し保険料を減額することが可能です。

健康保険証を一旦回収して再発行することになりますが、通院などの支障がなければ、会社側と従業員の両方の保険料が減額できますので双方にメリットがあります。
特に定年時点の賃金と再雇用の賃金の差が大きければ標準報酬月額の等級が大きくかわりますので減額できる保険料が多いでしょう。

まとめ

高齢化が進み、定年後も働くことを希望する人が増えています。会社側からみても専門知識や技術、スキルなどを持った働く意欲のある高齢者が定年を機に会社を去ることは損失です。再雇用制度は、雇用側にも雇用される側にもメリットがある制度といえます。

待遇や給与については企業側との話し合いが必須となりますので、定年の対象年齢になる前からこの制度について知識を得ておくことが大切です。

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