公開日:2021/07/27
働き方改革で副業をみとめる企業が増えたり、コロナ禍でダブルワークをはじめたりする人も増えています。一社のみからの収入であれば年末調整をするだけで所得税の納付が完了しますが、副業やダブルワークを行っていれば、そういうわけにはいきません。場合によっては確定申告が必要となります。
この記事では副業をしているサラリーマンの年末調整から、副業やダブルワークの所得税の確定申告について詳しく解説します。
年末調整とは会社が従業員に支払った年間の給与や賞与の所得税を計算して、各種控除を反映した所得税との差額の調整を行うことです。
会社は給与や賞与などを支払うときに、その都度、従業員が負担する所得税を徴収して国に納付する義務を負っています。所得税は社会保険料を控除したり、支払金額によって税率の計算をしたりする必要があるため複雑です。
支払額から所得税の対象額を計算できれば、国税庁の「源泉徴収税額表(月額表)」で税額を確認することもできます。
しかし、その年のうちに扶養する家族が増えたり、学生だった子供が就職して扶養からはずれたりすることがあれば、毎月源泉徴収していた税額が違ってきます。年末調整は、こういった扶養控除の変更や所得控除できる保険料などの支払を調整します。
注意しなければならないのは、ダブルワークや副業の収入は会社が把握していませんので年末調整の対象とならない点です。
ダブルワークや副業の収入で、年末調整をされなかった所得が20万円を超える場合は自身で確定申告しなければなりません。会社以外から得る収入は会社の源泉徴収義務の対象外であるためです。
源泉徴収の義務は支払者が負っていますので、給与を支払った会社のそれぞれから源泉徴収票を発行してもらえば問題ないと思われるかもしれませんが、そうとは限りません。
ダブルワークの収入がどちらも所得税の課税対象額103万未満で所得税を徴収されていないときは、あわせた収入で所得税額を判断するため課税対象となることがあります。
その場合は確定申告して所得税を納めなければならないので注意が必要です。それぞれの会社から源泉徴収されている場合は、確定申告することで所得税が還付される可能性もあります。
また、個人で副業をしてネットショップを運営している場合なども確定申告が必要なことがありますので注意しましょう。
ダブルワークの年末調整はそれぞれの会社で行います。仮にA社とB社で働いていれば、メインの就業先であるA社で扶養家族などの控除計算をして、サブのB社では収入だけの源泉徴収票を発行してもらいます。
場合によっては、A社、B社それぞれで源泉徴収される可能性もあります。このあたりの細かなことは、その年の最初の給与が支払われる前までに会社に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」により決まってきます。
源泉徴収の区分には「甲」「乙」「丙」があります。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している1ヵ所からのみ給与が支払われる人は「甲」です。「乙」は2カ所以上から給与をもらっている人で、「丙」は日雇いなどの人です。
一般的な従業員は「甲」に該当し、ダブルワークをしていても主たる勤務先は「甲」として源泉徴収します。
働き方改革以前と比べ、ダブルワークが世間的に浸透している現在ですが、実際にはダブルワークをしていることを主たる勤務先に先に伝えている方は少ないでしょう。サブの会社に「乙」であると告げて、源泉所得税の計算を依頼している人も多いのではないでしょうか。
ダブルワークをしている場合は、基本的に手元にA社とB社それぞれが発行した源泉徴収票が届き、その2通の源泉徴収票に記載されている金額の合計がその年の収入や源泉徴収税額となります。
転職を経験された方のなかには、前職の源泉徴収票を転職先に提出して一括で年末調整された記憶のある方もいると思いますが、ダブルワーク先の源泉徴収票を自社で一括して年末調整することは原則ありませんので覚えておきましょう。
確定申告とは、その年1月1日から12月31日までの所得を計算して申告し、税金を納めるための一連の手続きのことです。現在は所得税と復興特別所得税を合算して申告および納付するルールとなっており、一般的に2つをあわせて所得税と呼んでいます。
通常、勤務先以外からの収入のないサラリーマンであれば、勤め先の会社が行う年末調整で所得税の納付が完了するため確定申告をすることはありません。副業やダブルワークをしている場合は自身で確定申告する必要があります。
副業は売上から必要経費を除いた所得が一定額以上であれば申告が必要です。ダブルワークであれば勤務先が発行する源泉徴収票の所得合計額により確定申告することになります。
自身で確定申告をする必要がある方は、申告の時期や流れなどを確認しておきましょう。コロナ禍により令和3年は期限が延長されましたが基本的には以下のスケジュールです。
すべての副業が確定申告の対象というわけではありません。年末調整を受けた給与所得以外の副業による所得が20万円以下の場合は確定申告が不要です。
所得が20万円を超える副業として確定申告が必要なものには、次の(1)~(5)のようなものがあります。
(4)や(5)は副業として認識していないこともあるかもしれませんが、確定申告の対象となりますので注意しましょう。
また、通常の副業は基本「雑所得」として申告しますが、事業的規模になると「事業所得」として申告することもできます。事業所得として認められるかは、実際の業務業況など実状から判断することになります。
副業には所得税だけでなく住民税も課税されます。特別徴収を選択すれば会社の給与引きとなります。特別徴収は会社が毎月の給与から住民税を徴収して市町村に納付する制度のことです。
確定申告書は住民票のある市町村に連携されますので、住民税の納付について「自分で納付」として申告すれば市町村から納付書が届きます。この場合は毎月の給与から引かれる住民税とは別に、納付書の金額を自身で支払わなければなりませんので注意しましょう。
働き方改革の影響などで副業やダブルワークをするサラリーマンが増えていると思われます。年末調整は会社から支払われる給与や賞与が対象であり、会社以外からの所得が20万を超える場合は、自身で確定申告しなければならないことを覚えておきましょう。