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休業補償とは?休業手当との違いや計算方法について解説

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労働災害には迅速な対応が求められます。事故後の対応を誤ると、労働災害にあった社員やその家族との感情的なもつれにより、会社側の安全配慮義務などの責任問題に発展する場合もあります。
災害にあって働けない労働者の生活を支えるための休業補償制度をご存知ですか。労災事故はめったに起きるものではありませんが、だからこそ、人事担当者は適切な手続きを知っておく必要があります。

この記事では労働災害にあったときに受けられる休業補償とはどのようなものか、制度の概要や申請方法、休業手当との違いについて詳しく解説します。


休業補償とは

休業補償は労働保険の制度です。労災で働けない期間の生活の安定を図るためのもので、業務が原因で負傷や病気になり賃金を受け取れない期間に保険給付が行われます。

業務災害で休業補償を受けるための要件は次の4点です。

  • 業務災害の負傷・疾病の療養中ある
  • 療養中のため労働することができない状態である
  • 会社から賃金が払われていない
  • 業務災害発生から3日間の待機期間を経過している

待機期間を経過せずに職場に復帰した場合は休業補償の対象とはなりません。また、待機期間中も休業補償の対象外です。待機期間中は労働基準法の規定により会社が補償を行うルールになっていますので覚えておきましょう。

労災でも通勤途中の事故などは通勤災害です。休業給付という別の保険給付で一部負担金が発生するなど要件が違いますので注意しましょう。

休業補償と休業手当のちがい

休業補償と同じように休業した場合に支払われるものに「休業手当」があります。休業手当は労働基準法26条で定められたもので「使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させる」場合に支払わなければならないもので、平均賃金の6割以上と定められています。

休業補償と休業手当は休業の事由がちがいますので混同しないようにしましょう。

○休業補償:業務災害を起因とした休業。労災保険から支払われる。

○休業手当:会社の責めに帰すべき事由による休業。会社が支払う。

休業手当が支払われる具体例としては会社の経営状態の悪化による一時帰休などが該当します。


休業補償の補償期間と計算方法

休業補償の期間は無制限ではありません。次の2つの早い日までが補償期間となります。

  • 休業4日目から負傷や疾病が治った日
  • 1年6カ月経過した日。

1年6カ月経過して災害前の状態まで回復していない場合でも、症状が固定しており改善が見込めない時は「傷病年金」に切りかわりますので覚えておきましょう。


休業補償の計算方法

休業補償の金額は直前3カ月の賃金を3カ月の期間の暦日数で割って計算します。また、休業補償給付とは別に休業特別支給金も支給されます。

休業補償給付の計算式:給付基礎日額の60% × 休業日数

休業補償特別支給金の計算式:給付基礎日額の20% × 休業日数

あわせて給付基礎日額の80%です。

どちらも待機期間の経過後から休業日数をカウントしますので注意しましょう。

給付基礎日額の計算の対象となる賃金はダブルワークをしていればすべての勤務先の賃金の合計で計算します。令和2年9月1日より制度が改正されていますので注意しましょう。

直近の賃金となるものは次のようなものがあります。

  • 基本賃金
  • 通勤手当
  • 残業代や宿直手当
  • 扶養手当
  • 住宅手当(家賃補助) など

また、通院など一部休業する場合で、会社が平均賃金の60%以上の賃金を支払っていると休業補償は給付されません。


休業補償の請求方法

休業補償は労働基準監督署に業務災害による休業であると届出して支給されます。

災害にあった労働者が休業補償給付支給請求書(様式第8号)を提出しますが、休業した証明や休業補償額の計算に必要な賃金の証明など会社が証明する欄があります。

手順を確認しましょう。

  1. 会社が休業補償給付支給請求書と平均賃金算定内訳の事業主欄を証明し、労働者が労務不能であることを医師にも証明をしてもらう。
  2. 労災にあった労働者が、休業補償給付支給請求書を労働基準監督署へ提出する。
  3. 労働基準監督署が被災労働者に支給・不支給の決定をする。(通知書が届きます)
  4. 労災にあった労働者の口座に休業補償が直接振込まれる。


実務では労災にあった労働者が入院しているなど、自身で労働基準監督署に届出することが難しいこともあります。
医師から労務不能と証明した休業補償給付支給請求書を従業員が会社に提出して、会社が必要事項を証明して労働基準監督署への届出を代行することもあります。
届出は「電子政府の総合窓口(e-Gov:https://www.e-gov.go.jp/)」から電子申請することもできます。

休業補償給付支給請求書の記入方法はこちらの厚生労働省「休業(補償)給付傷病(補償)年金の請求手続」サイトで確認できます。

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040325-13.html

受任者払い制度

休業補償は災害にあった労働者の個人口座に振込まれるのが基本です。しかし、労災と認定されてから振込まれるため時間がかかります。被災者はその間は休業しているので収入がありません。

受任者払い制度は、休業補償の支給より前に会社が立替払いして、労働者に振込まれる休業補償を会社が受け取る制度です。労働者の生活への配慮とあわせて、休業中の健康保険や厚生年金の本人負担分の回収が容易になることから労働者と会社の双方にメリットがあるといえます。

休業補償から本人負担分の社会保険料を引く場合は書面を交わすなどしてトラブルにならないような方法をとりましょう。

受任者払いには次のような書類が必要です。

  1. 労災被災者本人の委任状
  2. 受任者払いに関する届出書

手続きに必要な書類は被災労働者に休業補償を立替払いした後に記入してもらうようにしましょう。

受任者払いの流れは次のようになります。

  1. 会社から休業補償額を労災にあった労働者へ支払う
  2. 労働者から必要書類をとりよせる
  3. 労働基準監督署に必要書類と休業補償給付支給請求書を一緒に提出する
  4. 休業補償が会社へ振込まれる

派遣社員や出向社員の休業補償

会社には直接雇用の社員だけでなく、派遣社員や出向社員がいることもあります。休業補償は社員を雇用している会社で対応します。簡単にいうと給与を支払っている会社が休業日や直近3カ月の賃金を証明するのです。
派遣社員の場合は、休業補償給付支給請求書に派遣会社の証明と派遣先会社の両方が証明する欄がありますので注意しましょう。

軽いケガなどの場合は認識が甘く労災だと思わない可能性もありますが、派遣社員や出向社員が就労中にしたケガなどは、必ず雇用先の会社に連絡をしましょう。


まとめ

休業補償は労災保険から給付されるものです。被災労働者の休業中の生活の安定を図るためのものですが、給付までに時間がかかります。受任者払い制度の認知度は高くないかもしれませんが、うまく利用していくとよいでしょう。

労災の対応は、被災労働者やその家族と感情的な話に発展する可能もあります。対応には注意して、手続きなど間違いのないように進めるようにしましょう。


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