更新日:2020/07/31
企業は様々な目標を掲げて事業活動をしています。目標のなかには来期の業績予想のように単年度で達成するものから中期経営計画のように3年から5年のスパンのものもあります。
これらの数値目標は掲げるだけでなく達成していかなければなりません。実施プロセスを評価して、いかに目標達成につなげていくかが重要となってきます。
部門によっては業績達成などの数字にピンとこないこともあるかもしれませんが、日頃の業務効率化も結果として経費削減となり利益に貢献するものです。そのため、いかに業務の効率化を図るかが重要となります。
この記事では業務効率化の道しるべとなるKPIとはどのようなものなのか詳しく解説します。
KPI(ケーピーアイ)とは「Key Performance Indicator」の頭文字の略語で「重要業績評価指標」のことです。目標達成の度合いを測る「ものさし」だと考えればイメージしやすいと思います。目標の進捗状況を継続的に計測するもので、成功のための重要なプロセスの現状を数値に置き換えて考える方法です。
重要業績評価指標の重要な業績とは一般的には売上や利益を達成するためのプロセスとなります。人事や経理などの管理部門では売上を上げることはできませんので、経費削減により利益にいかに貢献できているかということになります。
KPIは営業など受注率や訪問数、客単価など結果が数字で明確になる部門で実施されることが多いのですが、管理部門でも目標を設定して業務効率化を図ることができます。
例えば販管部門では、目標設定が義務付けられているのが一般的です。毎月の進捗報告から半期・通期になれば進捗度による評価が数値で出されます。評価が公明正大であるために設定する目標は数値目標が求められます。
個人目標である場合もあれば、部署として取り組む場合もありますが、データの裏付けがある達成可能な数値目標を設定することがポイントです。
例えば、漠然とした「経費削減」ではなく「○○費の15%削減」や「業務ソフト導入により管理部門の残業を35%削減し、導入コスト・ランニングコストを含め管理部門の費用をトータルで10%削減する」といった具合です。
部署でKPIに取り組む場合の目標数は5つ前後が妥当でしょう。年度ごとに取り組む場合は、少なすぎても多すぎてもモチベーションの維持が難しいからです。目標のなかには達成のため多くのアクションを必要とするものもあります。そういったものはKPIの目的を明確にして部署内で共有しないと、アクションが目的となってしまう恐れがあります。
例えば経費削減のため残業を減らす必要があるので会計ソフトを導入するのに、いつのまにか会計ソフトの導入が目的になってしまい、そこから先の経費削減という目標が検証されないことがあります。これではKPIとして意味をなしていません。
KPIの目標設定をしたら具体的な取組方についても計画していくことが大切です。
目標を達成するためにはKPIを基礎にして業務を実行管理して運用していく必要があります。日常発生する小さな問題を見過ごさず管理してPDCAを回し改善を重ねることで、結果を得るプロセスを踏むことができます。
PDCAとは「Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)」を1サイクルと考え、このサイクルを継続的に繰り返して行うことで業務を改善していく方法です。多くの企業で日常的にセルフマネジメントとしてPDCAが展開されています。
目標を定めたらKPIでプロセスの進捗を数値評価しながら繰り返しかつ継続的に目標に向かって取り組むことが重要です。管理部門であればPDCAをもとに「Check(評価)、Action(改善)、Plan(計画)」を毎月のミーティングで実施するだけでも結果は随分違ってきます。
「Do(実行)」は日常業務で実行しているので、客観的に現状を把握して改善計画をたてて翌月にのぞむことを繰り返せば設定した目標に近づいていくはずです。
例にした残業削減では、残業時間の削減率を把握し残業が減らない原因を考えましょう。「導入した業務ソフトに慣れておらずトラブルが多い」のであれば「運用方法の説明が不十分である可能があり、マニュアルを詳細なものに作成しなおしトラブルの多い部署を集中的にフォローして残業時間を減らす」などの改善計画を実行していきます。
KPIは目標を達成するための3指標の一つです。KGIとKSFの2指標とお互いに補完関係にあり、業績を評価するKPIだけでは目標達成が難しいこともあります。KGIとKSFの指標の意味と該当するものを確認しておきましょう。
KGIとは「Key Goal Indicator」の頭文字の略語で「重要目標達成指標」とよばれる数値のことです。会社がゴールとして設定した最終目標を達成しているかを計測するための指標です。
例えば売上や利益・利益率などが該当します。
具体的には全体の目標となるゴールをKGIとして設定して、そこから逆算して目標を定めKPIによりプロセスの達成度を評価しながらPDCAを回しゴールに近づいていくイメージです。
KSFとは「Key Success Factor」の頭文字の略語で「主要成功要因」とよばれ、ゴールを達成するための要因のことです。事業を成功させるための必要条件を示す指標です。
事業計画を策定する時や経営戦略を考える場合に「外的環境」を明確にして見極め、「内的環境」を考慮して照らし合わせ事業が成功するか否かを分析して多角的に検討します。
例えば技術力やブランド力などが該当します。
KSFをもとにして定めた目標をKPIでプロセス評価することが一般的です。
KPIツリーは、KGIを達成するために用いられる手法の一つです。ゴールであるKGIの実現を目指して複数のKPIが同時に進行します。その状態をKPIツリーといいます。
例えば利益目標のKGIを達成するため、営業部門は売上増を、管理部門は経費削減を掲げます。その場合は「営業部門KPI」「管理部門KPI」がそれぞれ実施されます。これが購買部門や販売部門など多くの部署で実施され会社全体でKPIのツリーができあがるのです。
少し規模の大きな例でしたが、営業部門や管理部門のなかだけでもKPIツリーは作れます。営業部門であれば売上をKGIに設定して顧客数や受注率をKPIに設定できますし、管理部門であれば経費の削減率をKGIに設定してボリュームの大きい経費の削減率をKPIに設定してツリーを作ることができます。
このようにKPIツリーはゴールとなるKGIから逆算して作っていくことが可能です。
KPIはマネジメント手法としても活用されています。KPIでは目標が明確なため達成のための行動がおこしやすく、数字での進捗も把握できます。プロセスが可視化するため組織全体で情報共有できる利点もあります。
評価基準を統一しやすいこともポイントです。目標の達成だけでなく、プロセスが評価されるので社員のモチベーションが向上し、仕事の意義をみいだしやすくなります。
KPIマネジメントは設定する目標が重要なポイントとなります。目標は重点的に取り組むべき課題を明確にすることでもあります。あいまいな目標や明らかに達成不可能なもの、数字の根拠に裏打ちされていない目標を定めると、社員のモチベーションが下がることもあるので注意しましょう。
KPIは業務効率化を実現するうえで有効な手段です。営業部門の手法として浸透しているイメージがありますが、人事・経理・総務などの管理部門でも活用できます。管理部門の数値目標は設定が難しいかもしれませんが、前年度の実績をもとに、手近なところから手をつけてみてはどうでしょうか。