更新日:2020/04/14
企業の上位にいる役員には、役員報酬という特別な報酬が発生します。役員報酬は自社が雇用している従業員に支払う給与とは違う扱いになり、混同して取り扱うとトラブルのもとになります。
役員報酬の性質を理解し、適切な取り扱い方法を学べば確実に役員報酬を損金計上して節税することが可能です。役員報酬の取り扱いを間違えて、損をしないように基本を理解しておきましょう。
今回は役員報酬の基礎について知りたい方向けにそもそも役員報酬とは何か、そして決め方や給与との違い、損金に計上するために覚えておくべき内容などをご紹介します。
役員報酬とは、企業の役員(業務にかかわる幹部の職員)に与える報酬を指します。
役員は、
などが法律的に該当します。
企業の中でも、重要な職務を任されている存在です。
役員報酬は性質的に従業員に与えられている給与と似ていますが、会計上では別物として取り扱う必要があります。
役員報酬は、次のようなステップを踏んで決まります。
特に
1.役員報酬に関してルール作りを行う
を確実に行わなければ、最悪の場合役員報酬の全額が損金として認められない可能性があるので注意してください。詳しくはこれから説明していきます。
企業が従業員に与えている給与は、全額損金(費用)として計上することが可能です。しかし「役員報酬も給与と同じようなものだから、損金に算出したい」と思っても、上手くはいきません。
給与と違って、役員報酬は自由に決められます。この性質が、不正の温床として利用されるケースがあるのです。
たとえば2018年度は利益が500万だったのに対し、2019年度は利益が2倍の1000万になったとします。当然多く稼いでいればいるほど、法人税などを多く取られることになります。
しかし「2019年度は2018年度より2倍儲けたから、役員報酬も2倍にしよう」として報酬操作を行いそれをすべて損金算入すると、法人税などを減税可能になってしまいます。
役員報酬を損金に全額入れてしまうと企業の不正に気付けず、税金を不正に操作される可能性があるので役所も対策を取っているのです。
役員報酬を損金として全額認めてもらうためには、企業設立開始3か月以内にしかるべき手続きを行い、適切な額の役員報酬をあらかじめ決めておく必要があります。3か月以内に役員報酬を決めていないと規約違反になり、役員報酬を一切損金として認めてもらえません。
事業年度から3ヶ月以内に、一度だけ役員報酬の変更が許可されています。役員報酬を設立後変更したいときは、企業利益などをあらかじめ予測して事業年度3か月以内をめどに報酬を決定しましょう。
また役員報酬に関してルールを定めている場合も、
などが行われた場合、一部が損金として許可されないので注意しましょう。損金として認められないのは、もともと設定していた役員報酬と変更後の役員報酬の差額です。役員報酬を下げた場合も、もともとの報酬との差額が損金計上できなくなります。
ただし、
など一部的な例外が発生した場合は損金計上が認められることがあります。
役員報酬を全額損金に入れられるようにするためには、次の3つの方法を遵守する必要があります。
定期同額給与
「定期同額給与」とは、通常の従業員のように毎月決まった金額を役員報酬として支払うことです。
役員報酬の基準が決まっていないと不正に操作される恐れがありますが、あらかじめ決まった額を支払えば性質的にはほとんど給与と同じ扱いになります。定期同額給与として役員報酬を支払えば、安心して給与と同じように役員報酬を経費計上可能です。
従業員と同じように職務を社内で毎日実行している役員には、定期同額給与で報酬を支払いましょう。
定期同額給与で役員報酬を支払う際は、無理なく支払えるよう自社にどれだけの利益が上がっているか、そして費用と差し引いて役員一人当たりどれだけの報酬を給与のように支払えるかなどを細かく決めておく必要があります。万が一払いすぎた、少なすぎたといったトラブルが起きた際は、事業年度3か月以内に変更可能です。焦って途中で報酬を上げたり下げたりしないようにしましょう。
ただし役職に対して不当に高額な報酬の場合は、たとえ定期同額給与で支払っていても損金の対象にならないので注意してください。
事前確定届出給与
「事前確定届出給与」とは、役員にボーナスのような形で指定した期日にまとめて報酬を支払う形式です。
役員に賞与をただ支払うだけでは、損金算入は許可されていません。社内でルールを決めることに加え、税務署に支払期日や支払金額などを申告して申告したとおりに支払う必要があります。
定期同額給与は、株主総会に通すなど社内で手続きを踏んでいれば税務署に申告する必要はありません。しかし法律上、事前確定届出給与を実行する場合は税務署を通す必要があるので注意してください。
あらかじめどれだけ支払うか決定しておけば、毎月のように支払わなくても不正が起こっていないかチェックが可能です。不定期で勤務を行っている役員がいる場合などは、事前確定届出給与で役員報酬を支払うとよいでしょう。
利益連動給与
「利益連動給与」は、親族が経営の中心ではない(同族会社ではない)国内の企業が利用可能です。事業年度から利益指標を算出し、その指標をもとに役員報酬を決められます。
利益連動給与を支払うためには、
の2点を必ずクリアしておかないといけません。
中小企業で同族会社に該当しないところは該当するところと比較して少なく、利益連動給与を支払うのは難しい面があります。また客観的な利益指標が足りない非上場企業も、同じように利益連動給与を支払うのは難しいでしょう。
上場しており同族経営ではない企業の場合は、利益連動給与も支払いの視野に入ってきます。
今回は役員報酬とは何か、そして決め方や給与との違い、損金に算入可能な支払いタイプをご紹介しました。
役員報酬は給与と似ていますが、性質が一緒のものとして同一に扱ってしまうとトラブルになります。特に法人税などを節税したい企業は、定期同額給与など法律に則った方式で役員報酬を支払うのを忘れないでください。