更新日:2020/04/07
身の回りのあらゆるものがインターネットに接続する、「IoT」時代はもうすぐそこまで迫っています。IoTを普及させるにあたって、重要になるのが「5G」です。
5Gは従来の「移動体通信技術(携帯などに使われている無線技術)」とは大きく異なる特性を持ち、どこにいてもスムーズなIoTデバイス通信を可能にします。最近では「ドコモ」の「DOCOMO Open House 2020」など、大手携帯電話会社を中心に5Gにかかわるイベントが多く開催されています。そういったイベントの報道を見て、「5Gとは一体どういう技術なのか気になる」という方も増えているでしょう。
5Gはビジネスにおいても、重要な役割を果たします。今のうちに詳しく5Gについて知っておけば、ビジネスチャンスもつかみやすくなるでしょう。
今回は5Gが気になる方向けに5Gとは何か、そしてそのメリットやビジネスをどう変えていくかの事例、優遇措置についてもご紹介していきます。
5Gとは、「第5世代移動体通信規格」のことです。
「1G(第1世代移動体通信規格)」に始まる携帯用の通信規格は、現在「4G(第4世代移動体通信規格)」まで進化しています。4Gにより高速なデータ通信が可能になり、リアルタイムでの高画質な動画視聴も簡単になりました。
しかし現在ではスマホやタブレットに限らず、さまざまなものがインターネットに接続できるようになっています。たとえば
など、今まで想定されていなかったものに対するインターネット接続も考えながらインフラを整備していく必要があります。
このような状況で、4Gは最適な通信技術とは言えません。4Gでは接続機器台数に限界があり、また日々増えていくデータ通信量をまかなえるかどうかについても心配な点があるからです。
5Gは4Gで課題だった点が解消され、さまざまな場面での利用が想定されています。
5Gには、大きく分けて3つのメリットがあります。
大容量通信により、通信データ量不足になりにくい
5Gは、大容量通信が可能です。
たとえば現在4Gで最速と言われるドコモの「プレミアム4G」と比較すると、
・プレミアム4G・・・下り最大約1.6Gbps、上り最大約0.13Gbps
・5G・・・下り最大約20Gbps、上り最大約10Gbps
と、上り下りとも圧倒的な速度となっています(プレミアム4Gと5Gの速度についてはドコモ公式から引用)。
特に映像方面においては、高画質の動画が大量に増えたりとデータ通信量不足になりそうな問題が起こっています。5Gならば数時間の高画質映画を数秒足らずでダウンロードしたりと、容量を気にせずにインターネット通信できるようになります。
多数同時接続が可能で、IoTデバイス機器接続を十分にまかなえる
5Gでは、多数同時機器接続も可能です。
再びプレミアム4Gと比較すると、
・プレミアム4G・・・1平方キロメートルあたり約10万機器
・5G・・・1平方キロメートルあたり約100万機器
となっており実に約10倍の接続にも耐えられます(プレミアム4Gと5Gの接続可能機器数についてはドコモ公式から引用)。
IoT機器を含めるとインターネットに接続できる機器は膨大に増えており、現状の4Gだとすぐに接続台数が枯渇する心配が出ています。5Gだと狭い場所に大量のインターネット接続デバイスがあっても、余裕をもって接続をまかなうことが可能です。
低遅延により、タイムラグのないリアルタイム通信が可能
インターネット通信においては、必ずライムラグ(通信までの時間の差)が発生します。たとえば4Gでは、約10ミリ秒の通信ずれが起こります。
日常でスマホを使ったりする分には、10ミリ秒程度の通信ずれはあまり問題にならないかもしれません。しかしビジネスにおいては、少しの通信ずれが大きなトラブルにつながる可能性もあります。
5Gならば、遅延が約1ミリ秒で済みます。この低遅延性は、特にリアルタイムで作業を行わないと命の危険に関わるビジネス分野で注目されています。
たとえば医療分野では遠隔でロボットを操作し手術を行うなど、インターネットを介してリアルタイムで機器の操作を行う試みはさまざまな他分野で行われています。そういった試みを実用化できるレベルにまで落とし込むのに、5Gは重要な役割を果たします。
ここからは、5Gがビジネスにどのような変化をもたらすのかご紹介していきます。
農業
農業は人手不足などの問題で、「スマート農業(ITを活用した新しい農業)」に注目が集まっています。そして5Gの活用により、スマート農業がさらに効率化する可能性があります。
たとえばトラクターを無人でリアルタイム制御し、体を動かさずに作物の刈り取りなどを実行できます。また、ドローンで作物の生育状況を細かく管理したりすることも可能です。
さらにスマート農業では、いかに多くのデータをインターネットで送受信し作業効率化が狙えるかが重要です。5Gを利用すると、
といった情報をまとめて通信可能になります。
広告業界
5Gにより、Web広告にシフトしつつある広告業界も大きな影響を受けます。
広告を最大限活用するには、顧客とのタッチポイント(接点)が重要になります。そして5Gを活用すると、場所を問わない広告マーケティングが可能です。
たとえば列車の車窓をディスプレイ代わりにして、旅行サービスに関する動画広告をリアルタイムで流すことも可能になります。また街中に行き交う方一人一人に合った、VRやAR広告を出すことも可能になるでしょう。
このように広告業界では5G活用により顧客とのタッチポイントが増え、従来よりさらに多様的な広告を打てるようになります。
自動車業界
自動車業界では現在自動運転が大きな話題になっていますが、5Gの特性を大きく活用可能です。
自動運転車は走行する際周囲の状況をセンサーで把握し、その都度適切な運転を行う必要があります。しかしたとえば障害物の検知が遅れて回避が間に合わないと、そのままぶつかって事故になったりと大きな危険につながってしまいます。
しかし5Gであれば周囲からリアルタイムで情報を受信し、運転制御を実行できます。これによりドライバーが実際に運転しているように、機敏な運転が可能です。最近ではアンテナつきガラスが試作されるなど、5Gの特性を活かせるような自動運転車の研究も進んでいます。
5Gはビジネスに大きな影響を与えますが、日本政府もその経済効果を見込んで優遇措置を検討しています。
この優遇措置では対象企業が令和4年(2022年)3月31日までの間に、5Gに関する投資を行った際
のどちらかを選んで適用できることになっています。
政府は、いち早く5Gを整備してビジネスにも活用したい考えです。この措置にも税制面で企業を優遇することで、インフラ整備を後押しして5Gを普及させたいという政府の思惑が垣間見えます。
今回は5Gとは何か、そのメリットや事例、優遇措置などをご紹介しました。
5Gにより私たちの生活はますます便利になり、ビジネスにも大きな経済効果が発生するでしょう。特にリアルタイムでの処理が要求されるビジネス分野では、5Gのメリットが大きく活きてきます。
ぜひ5Gについて詳しくなり、どのように活用できるか検討できるようになってください。