更新日:2019/11/19
日本は地震や台風などの災害が多いため、国内の企業はしっかり災害に備えておく必要があります。災害に備えるには企業防災への取り組みが必要不可欠ですが、単に災害に対する被害を最小限に抑える対策だけでは不十分です。
しっかりした企業防災を実現するには、「BCP(Business Continuity Planning)」策定がポイントになります。
今回は企業防災の重要性と、企業防災において重要な立ち位置を占めるBCPのメリットや実現方法などをご紹介していきます。「企業防災がなぜ重要なのか知りたい」「企業防災の具体的なアプローチ方法などがよく分からない」という方はぜひご覧ください。
企業防災とは、そのまま企業が行う防災における取り組み、という意味になります。
最近は地震や台風など、さまざまな災害が頻発しています。その際企業防災をしっかり行っていないと、従業員に被害が出たり業務が停止するなど、企業に大きなダメージが与えられる可能性があります。
法的にも労働契約法第5条において「使用者は労働契約に伴い、労働者が安全を確保しつつ労働できるよう配慮を行う必要がある」と記載がある通り、企業防災を怠っていると災害時に安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。また国も「防災基本計画」内に企業防災の促進項目を入れ込むなど、企業防災を重要視しています。
このように自社へのダメージを最小限に抑え、法律や国の考えに則った適切な対処を行えるような体制を作るためにも、しっかりと企業防災に取り組まなければなりません。
「防災ならばすでに自社で対応している」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし企業防災と、災害被害を最小限に抑える対策はイコールではない、という点には注意が必要です。
企業防災には主に、
という2つの目的があります。
単なる防災対策では
に対応できず、企業防災としては不十分になるでしょう。
災害時は会社が使えない状態になり、業務が停滞してしまう可能性があります。停滞したままになると事業に悪影響を及ぼすだけでなく商品やサービスの提供ができないことで、顧客や取引先へも被害が及ぶ危険性があります。
こういった事業停滞のリスクに対して事前に対策を施し、被害を最小限にするために策定するのがBCPです。BCPとは事業継続計画のことで、災害時も適切に対処を行い業務維持や体制復旧などを図る計画のことです。
国も企業防災におけるBCPの重要性を公式サイトで説明していたりと、BCPは企業にとって重要な立ち位置を占めています。
企業防災としてBCPを策定しておくと、次のようなメリットがあります。
災害時に業務が停滞したままになると、停滞した分がそのまま企業損失として跳ね返ってきます。また災害に限らずインフルエンザの企業内蔓延やテロの発生など、考えられる緊急事態はたくさんあります。
BCPを策定しておけば、万が一災害が発生した時にもあらかじめ決まっている手順で対処を行い、迅速に仮の業務体制を構築できます。またそこから復旧を行い、早い段階で元の経営状態に戻すことも可能になるでしょう。
実際にとある新潟県のスーパーチェーンがBCPに取り組んだ結果、「新潟県中越沖地震」時の被害を最小限に抑えて数日で全店舗運営を再開することができました。このようにBCPの有効性が証明された事例も存在します。
また災害に限らずインフルエンザやテロなど、他に考えられる緊急事態における対策もBCPに盛り込んでおけば、どんな危機に陥っても冷静に対処を行い、事業継続性を確保できるようになるでしょう。
災害時など緊急時への対策が取れているかは、企業の信頼性における重要な判断材料の一つになります。
どんな状態でも業務できる体制を整えている企業の方が体制を整えていない企業より魅力的に映るはずです。また地域に密着した企業であれば、業務継続性が確保されているとそれだけ地域住民からの評判もよくなるはずです。
BCPに関しては2012年に国際規格である「ISO23001」が策定され、取得した企業は国内外にBCPの正当性を証明できるようになっています。今後はこういったBCPにおける基準に合格しているかどうかも、取引先に契約可否を判断される一つの指標になる可能性があります。
企業防災としてのBCP策定のメリットは、何も緊急時に適切な対応ができるようになる点だけではありません。
BCP策定時には自社の業務体制を見直す必要が出てきます。例えばどの業務を優先的に再稼働させるか、といった優先順位を決める作業などが発生しますが、こういった機会に自社にとってコア業務に当たるものと、そうでないものをしっかり判別できます。
業務の優先順位がわかればそれを元に経営判断を行えるようになるので、戦略立案などにも役立つでしょう。
またBCP策定時に業務に致命的な支障が出る可能性が見つかれば、それは企業にとっての弱みにもなります。弱みをケアして強みに変えていければ、より成長性の高い企業へとステップアップも可能です。
このようにBCP策定は、通常の業務体制改善においてもメリットがあります。
ここからは具体的に、企業防災としてのBCP策定時のポイントを説明していきます。
災害などの緊急時に重要なのは、社内人員が具体的にどのような動きを取ればよいか決めておくことです。
経営陣においては緊急時、誰が責任を取って対処を行うのかなどを決めておく必要があります。また社員においては、Aのケースではこういう風に、Bのケースではこういう風に動くなど、各緊急事態に対してどのように動くか細かく決めておくと安心です。
このように社内人員の動きを決め、BCPに落とし込むことがポイントとなります。
BCPで対策を決めるには、まず想定しうるリスクを書き出す必要があります。考えられるリスクをすべて書き出しましょう。
そして可視化されたリスクに優先順位をつけ、順位の高いものを中心に対策を考えていきます。あまりにも小さいリスクについて対策方法を考えてBCPに落とし込むのは非効率なので、あくまで致命的な影響が出かねないリスクへの対策方法を策定していきましょう。
BCPを確実に実行するには、常に業務を継続できる体制の確保も重要です。
例えばリモートワーク環境構築により、自宅でも引き続き業務ができる体制を作っておくと、会社での業務が困難な場合や交通機関が使えなくても安心です。
リモートワークを実現するには、クラウドサービスの活用が有効なアプローチになります。堅牢なデータセンター内に設置されているクラウドサーバーからシステムやデータを利用できるので、災害などで停止する可能性も少なくどこでも簡単に業務を遂行できるようになります。
社外で業務ができる体制を整えるには、時間がかかります。クラウドサービスなどの活用による業務継続性確保を考えている場合は、早めに対策するのが重要です。
今回は企業防災の重要性や、しっかりした企業防災を実現する鍵であるBCPのメリットや策定時のポイントなどを解説しました。
企業としては、災害などの緊急時に備えて物理的な被害軽減への対策を行うだけでなく、その後どのように業務体制を復旧していくかを事前にBCPとして策定しておくのもポイントです。BCP策定により業務改善点が洗い出され、企業信頼性向上も果たされるなど副次的なメリットも受けられます。
まだ用意していない場合は、BCPを早めに策定して緊急時に備えておきましょう。