更新日:2019/11/05
ITは時代を経るにつれ進化し、私たちのビジネスにも大きな影響を与えています。
代表的な例が「クラウドサービス」です。インターネット上からサービスを利用するクラウドサービスは多くの企業が導入し、生産性向上などに役立てられています。そんなクラウドサービスの代表的なサービス形態が「SaaS(Software as a Service)」です。
今回はSaaSとは何か、そしてPaaSやIaaSとの違い、さらには導入のメリットや導入時のポイントまで分かりやすくご紹介していきます。「SaaSとは何か、PaaSやIaaSとの違いを知りたい」、「SaaS導入を検討しているが、導入による具体的なメリットや導入のポイントを前もって知っておきたい」という方はぜひご覧ください。
SaaSとは直訳すると「ソフトウェアとしてのサービス」という意味で、「クラウド経由でベンダーがソフトウェアを提供する」サービス形態のことです。
実はSaaS登場以前にも、似たような概念として「ASP(Application Service Provider)」というものがありました。ASPもSaaSと同じようにインターネット経由でソフトウェアを提供するサービス形態でした。しかし登場当初はユーザーごとにサーバーを用意しなければならないというベンダー側の構築コストの高さ、インターネット速度が遅いためにサービス自体が使いにくいというユーザー側の不便さなどもあり、あまり普及しませんでした。
2000年代になると、高速でインターネットを利用できる光回線などの「ブロードバンド」や、サーバー内のソフトウェアなどを複数のユーザーで共用できる「マルチテナント」などの革新的なIT技術が登場しました。これによりASPの進化系とも言える、SaaS登場の土壌が整いました。
今やSaaSはビジネスだけでなく家庭にも普及し、身近な存在になっています。例えば「Gmail」や「One Drive」など、プライベートでも使われるサービスもSaaSにあたります。
SaaSを利用したサービスの解説と並列して「PaaS(Platform as a Service)」や「IaaS(Infrastructure as a Service)」があります。この3つはクラウドサービスであるという点では同じですが、大きな違いもあります。
PaaSとは「プラットフォームとしてのサービス」という意味で、「クラウド経由でアプリケーションを構築できる環境を提供する」サービス形態です。
PaaSベンダーと契約するとサーバーとOS、そしてアプリケーションを構築するためのミドルウェアなどが提供されるので、インターネットに接続してそれらを活用し、自社で必要なアプリケーションを制作できます。
最初からアプリケーション構築に必要な環境がセットになって提供されるため、ユーザーは自前でサーバーやミドルウェアなどを用意する必要はありません。そしてアプリケーション制作のみに集中できます。
SaaSではアプリケーションがもともと用意された状態で提供されるのに対し、PaaSではアプリケーションを構築する環境自体を提供するという点に違いがあります。開発時間を短縮しながら独自のアプリケーションを構築したい企業などで導入されており、「Microsoft Azure」などが代表的サービスとして挙げられます。
IaaSとは「インフラストラクチャーとしてのサービス」という意味で、「クラウド経由でハードウェアを提供する」サービス形態です。
契約者はベンダーからサーバーなどのハードウェアが提供されるので、インターネットに接続してそれらを利用します。言ってしまえば自社ではなく他社に業務用サーバーを置いて、環境構築を行えます。
SaaSではサーバーからアプリケーションまでをすべてベンダーから借り受けますが、IaaSではインフラのみをベンダーから借ります。そのため自社でOSからミドルウェア、そしてアプリケーションの構築まで自由にできるのが魅力です。また外部にサーバーがあるため、万が一の災害のときに業務が完全にストップするなどのトラブルも防げます。
その反面、サーバーなどに対する知識や技術が必要であり、SaaSやPaaSよりもコストが高くなるなどのデメリットもあります。一からサーバー環境を構築して業務に活用したい企業に導入されており、「ニフティクラウド」などが代表例です。
SaaSを導入すると、次のようなメリットがあります。
SaaSはクラウド経由で利用できるため、アカウント情報さえあればいつでもどこでもログインしてサービスが使えます。例えば外出先でもSaaSを利用し、必要なデータの登録や社内共有などが簡単にできます。
その反面、インターネット環境があれば誰でも接続できるので、セキュリティ設定が重要になります。利便性が損なわれない程度に、2段階認証を利用するなど対策しておくと安全です。
SaaSはPaaSやIaaSなどのサービスと違い、コストがかからないのもメリットです。
最初からアプリケーション込みでサービスが提供されるため、サーバー環境やアプリケーション構築にかかる時間や費用などのコストを大幅に削減できます。またメンテナンスなどの保守もベンダー側が行ってくれるので、その点でも費用がかかりません。中小企業にとってコスト面で導入しやすいのが、SaaSの大きなメリットだと言えます。
ただしアプリケーション込みでサービス提供される分、アプリケーション自体に自社独自のカスタマイズを施しにくいのがデメリットです。また「サブスクリプション型(定期的に費用がかかるサービスタイプ)」なので、コストが低いとはいえ年間でどのくらい運用にコストがかかるかなどはしっかり見積もっておいた方がよいでしょう。
社内で情報共有するときにその都度「Excel」などにデータを入力し、メールツールなどで関係者に送るなどの作業を繰り返していると、非常に面倒で時間もかかります。また複数の社員が同じデータを二度入力してしまったりと、作業の正確性の上でもデメリットです。
SaaSで業務システムを導入すれば、データ共有が簡単になります。共有範囲を設定すれば一度でデータ共有が完了しますし、リアルタイムでデータをシステム上に反映すればデータ入力の重複なども防げます。
こういった機能により無駄な業務時間が削減され、業務の正確性も高くなります。そして結果的に生産性などが向上します。
ここからは、SaaSを導入する際のポイントをご紹介していきます。
SaaS導入時によくある失敗の一つが、「何となくSaaS導入を決めて、何となく導入する」というケースです。
SaaSは万能ではありません。漫然と運用しても成果は出ず、無駄なコストがかかることになります。
SaaSを導入する際はまず業務分析などを行い、自社のどこに課題があるのか把握しましょう。そしてSaaSを導入してどんな課題を解決し、どんな目標を達成したいのかを明確にしましょう。
SaaSにはベンダーごとにさまざまなサービスが提供されています。サービスごとに機能が異なるので、SaaS導入の際は自社に合ったSaaSをいくつか選定し、一つに絞り込んでいく必要があります。
例えば飲食サービスを提供している場合は、仕入管理などが細かく確実にできるSaaSが有望な選択肢になるでしょう。このように自社サービスの特性に合ったSaaSを選ぶのも、SaaS導入時には重要なポイントになってきます。
SaaSは外部ベンダーにサービスを提供してもらえます。そのためベンダーのセキュリティに脆弱性がありデータが漏洩してしまったり、稼働状況が不安定だったり、急にサービスが取りやめになったりという可能性も否定できません。
そのため、SaaSを導入する際は信頼性の高いSaaSを選ぶのがポイントです。どのような導入実績や稼働実績があるのか、どういったセキュリティ技術を導入しているのか、サービスの継続性は確かかなどを選定時にしっかり調べておきましょう。メールや電話でのサポートが適格なものであるかなども、信頼性を判断する一つの指標になります。
今回はSaaSの概要やPaaS、IaaSとの違い、そしてメリットや導入時のポイントなどを解説しました。
ITの進化により登場したSaaSはコストを抑えて業務生産性を向上できるなどの点から、中小を含め多くの企業が導入しています。あなたの企業でもしっかり活用すれば、業務工程の効率化などたくさんのメリットが見込めるでしょう。
SaaS導入時は自社に合ったサービスかどうかをしっかり選定して、導入後に失敗しないように注意しましょう。ここでご紹介した導入時のポイントなども参考にして、ぜひSaaS導入を成功させてください。