Point 進行基準及び原価回収基準での完成工事高算出方法について

2024/05/31 10:00

以下は、『PCA 建設業会計シリーズ バージョンDX』『PCA 個別原価会計シリーズ バージョンDX』についての説明です。画面例は『PCAクラウド 建設業会計』を使用しています。
※『PCA 個別原価会計シリーズ』にも同様の処理を実装しています。名称「完成工事原価」は「当期製造原価」とお読み替えください。


PCA建設業会計シリーズでは、完成工事高の算出基準として「完成基準」「進行基準」「原価回収基準」を選択できます。
今回は、「進行基準」「原価回収基準」の完成工事高算出方法について解説します。

完成工事高の算出基準は、工事マスタの「収益認識基準」欄で以下の画像のように各工事毎に選択することができます。

完成工事振替入力(一括完成振替)を実行しますと、指定した工事の「収益認識基準」欄で指定された完成工事高算出方法に合わせて、完成工事高を計算します。

 
 

【「進行基準」の場合】

◆ 工事進行基準:工事の進捗度を計算し、請負金額と完成工事高残高から、完成工事高の今回計上額を計算します。
工事の進捗度は、総予算から発生原価の割合で計算する方法か、任意の進捗度を直接入力することもできます。

工事の進捗度      :発生原価÷総予算(又は直接入力)
進捗度に応じた完成工事高:請負金額×進捗度
完成工事高の今回計上額 :進捗度に応じた完成工事高-完成工事高残高
※直接進捗度を入力する場合は、完成工事振替入力(一括完成振替)の「完成工事高情報」を選択し、「進捗度を指定する」にチェックを入れて、進捗度を直接入力してください。

※ 「会社基本情報の登録」で「工事進行基準の課税売上」を「完成時に一括して計上」としている場合には、完成工事高の税区分に「ナ 完成時に[売上〇%]に振替」を設定します。
進捗度が100%で完成振替を行うと、税区分「ナ 完成時に[売上〇%]に振替」「ニ 完成時に[売上〇%]に振替」で登録された完成工事高の残高を、「B課税売上〇%」「C 課税売上返還〇%」に振り替えます。

具体例

   工事期間:2024年度~2026年度

   請負金額:10億円

   工事予算
   ・材料費:3億円
   ・労務費:3億円
   ・外注費:1.5億円
   ・経 費:1.5億円
    計  :9億円

-----2024年度----------------------------------------------------------------------------

   2024年度の工事原価発生累計
   ・材料費:6,000万円
   ・労務費:6,000万円
   ・外注費:3,000万円
   ・経 費:3,000万円
    計  :1.8億円

   算出される2024年度の完成工事高は、

   工事の進捗度      : 1.8億円 ÷ 9億円 = 20%
   進捗度に応じた完成工事高:10億円 × 20%     = 2億円
   完成工事高の今回計上額 : 2億円 - 0   = 2億円

 
-----2025年度----------------------------------------------------------------------------

   2025年度の工事原価発生累計
   ・材料費:15,000万円
   ・労務費:15,000万円
   ・外注費:12,000万円
   ・経 費:12,000万円
    計  :5.4億円

   算出される2025年度の完成工事高は、

   工事の進捗度      : (1.8億円+5.4億円) ÷ 9億円 = 80%
   進捗度に応じた完成工事高:10億円 × 80%                  = 8億円
   完成工事高の今回計上額 : 8億円 ー 2億円                = 6億円

 
-----2026年度----------------------------------------------------------------------------

   2026年度の工事原価発生累計
   ・材料費:9,000万円
   ・労務費:9,000万円
   ・外注費:
   ・経 費:
    計  :1.8億円

   算出される2026年度の完成工事高は、

   工事の進捗度      : (1.8億円+5.4億円+1.8億円)÷ 9億円 =100%
   進捗度に応じた完成工事高:10億円 × 100%                       =10億円
   完成工事高の今回計上額 :10億円 ー 2億円 - 6億円         =2億円

 
 

【「原価回収基準」の場合】

◆ 原価回収基準
・伝票日付が工事の完成日より前の場合は、当期の工事原価と同額になるように計上します。
 完成工事高の今回計上額:当期の工事原価-当期に計上した完成工事高
・伝票日付が工事の完成日以降の場合は、請負金額と完成工事高の残高との差額を計上します。
 完成工事高の今回計上額:請負金額-期首の完成工事高の残高-当期に計上した完成工事高

※ 工事が未完成の時点では、消費税上の課税売上とならないため、完成工事高の税区分に「ナ 完成時に[売上〇%]に振替」を設定し、完成日以降の仕訳時に、 税区分「ナ 完成時に[売上〇%]に振替」の完成工事高残高がある場合には、「B 課税売上〇%」に振り替えます。

具体例

   工事期間:2024年度~2026年度

   請負金額:10億円

   工事予算
   ・材料費:3億円
   ・労務費:3億円
   ・外注費:1.5億円
   ・経 費:1.5億円
    計  :9億円

-----2024年度----------------------------------------------------------------------------

   2024年度の工事原価発生累計
   ・材料費:6,000万円
   ・労務費:6,000万円
   ・外注費:3,000万円
   ・経 費:3,000万円
    計  :1.8億円

   算出される2024年度の完成工事高は、

   完成工事高の今回計上額:1.8億円

 
-----2025年度----------------------------------------------------------------------------

   2025年度の工事原価発生累計
   ・材料費:15,000万円
   ・労務費:15,000万円
   ・外注費:12,000万円
   ・経 費:12,000万円
    計  :5.4億円

   算出される2025年度の完成工事高は、

   完成工事高の今回計上額:5.4億円

 
-----2026年度----------------------------------------------------------------------------

   2026年度の工事原価発生累計
   ・材料費:9,000万円
   ・労務費:9,000万円
   ・外注費:
   ・経 費:
    計  :1.8億円

   算出される2026年度の完成工事高は、

   完成工事高の今回計上額:10億円 - 7.2億円 = 2.8億円

 



説明は以上です。