現行の健康保険証の廃止
(マイナカードの保険証利用への移行)

2024/10/18 10:00

令和6年12月2日から現行の健康保険証が発行されなくなり、マイナンバーカードと健康保険証の一体化によるマイナンバーカード保険証(マイナ保険証)の本格的な運用が開始されます。

総務省によりますと、8月時点でマイナンバーカード取得者は75%ほどで、マイナンバーカードの取得は普及してきているようですが、マイナ保険証としての利用者は、7月時点で、11.13%(厚労省の調べによる。)で、なかなか普及が進まないようです。
マイナ保険証の便利さやメリットが解りにくいのかもしれません。しかし、12月2日以降は否応なく制度が進みますので、制度の開始前後には、健康保険担当者には、問い合わせが多く来るものと思われます。担当者は、マイナ保険証制度と利用法を理解し、問い合わせに応えられるように準備しておく必要があります。

なお、現行の保険証は、退職等で資格喪失しない限り、令和7年12月1日まで使用できます。

また、マイナンバーカードの所持は任意のため、持っていない人には、保険者からマイナ保険証に代わる「資格確認書」が発行されるとのことです。

※ 本稿は令和6年9月12日現在確認できた事項について記載しています。今後の取扱い等は各保険者、市区町村、福祉事務所に問い合わせ、確認する必要があります。

マイナ保険証の利用方法

1.マイナンバーカードの発行

マイナンバーカードは、ICチップに個人番号情報などが入ったプラスチック製の顔写真付きカードのことで、マイナンバーカードを持っていない人がマイナ保険証を利用するためには、マイナンバーカードを申請することから始まります。
2015年10月から、個人番号制度が始まり、住民票があるすべての国民および外国人に付番された個人番号通知書が送られてきましたが、マイナンバーカードは、各人が個人番号通知書を基に市区町村に申請することで発行されます。
マイナンバーカードの申請、マイナ保険証としての登録、医療機関・薬局での利用方法は、次の図のようになります。

出典:厚生労働省ホームページ「マイナンバーカードの健康保険証利用について」より(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08277.html

2.保険証利用登録

マイナ保険証に移行する準備段階として、協会けんぽや健康保険組合等から加入企業に、被保険者、被扶養者の「資格情報のお知らせ」が送付され始めています。各企業は、被保険者に被扶養者分も合わせて配布している頃でしょう。
「資格情報のお知らせ」には、マイナンバーの下4桁が記載されていて、間違いがないか本人が確認できるようになっています。(マイナンバーの未届等の場合は、記載されていません。)

同時に、健康保険の記号、番号などが記載されている「資格情報のお知らせ」が携帯できるカードのようなもので付属していて、オンライン資格確認システムを導入していない医療機関等でもマイナ保険証と併せて提示することで受診できます。

なお、健康保険組合、協会けんぽ等保険者にマイナンバーが未届の人は、健康保険とマイナンバーの紐づけがされていないので、マイナ保険証としてのメリットを受けることができません。

新生児のマイナ保険証はどうなる?

12月2日以降に出生した新生児の被扶養者加入手続きは、新生児の個人番号を添えてこれまで通りに行います。新生児のマイナンバーカードは、なかなかすぐには作れませんのでマイナ保険証に代わる「資格確認書」が必要になります。その場合は、今のところ、被扶養者異動届の書式に「資格確認書」必要と☑を入れるなど必要の表示をすることで、資格確認書が発行されるようです。(方法はまだ確定していません。)
なお、12月2日以降、1歳未満は写真なしでマイナンバーカードが申請でき、保険証として利用できるとのことです。

*9月9日マイナンバーカード総合サイト電話による相談窓口で確認

転職した場合の扱いは?

12月2日以降に転職した場合は、従前の健康保険証は失効しますので、新事業所で個人番号を添えて通常通り健康保険資格取得手続きを行います。これにより新事業所の健康保険がマイナンバーに紐づくことになります。マイナ保険証未登録者やマイナンバーカードを持たない人には、保険者から「資格確認書」が発行されます。

*9月9日現在の情報

マイナ保険証利用対応の医療機関・薬局等についてはマイナ受付のステッカーやポスターが掲示されています。

マイナンバーカード総合サイトには、マイナポータル「マイナンバーカードの健康保険証利用」説明ページ(https://myna.go.jp/html/hokenshoriyou_top.html)のリンクがあります。
もしくは、厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」説明ページをご覧いただくか、お電話でのお問い合わせページに記載のマイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178※音声ガイダンス5番 令和6年9月6日現在)をご活用ください。

実際にマイナ保険証を使用する際にあたって、想定される質問を集めてみました。

Q.既にマイナンバーカードでの保険証等利用登録は完了していますが、就職や転職、退職等により、健康保険証等が変更になりました。手続きは必要ですか。

A.マイナンバーカードの健康保険証等利用登録が完了している場合は、転職や退職、変更に伴う、再度の登録は必要ありません。ただし、保険者(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合等。国民健康保険ご加入の方はお住まいの自治体)への加入の届け出(資格取得届、扶養届)は、引き続き必要です。
 
なお、以下の理由により最新の資格情報が表示されない場合があります。

  1. 現在加入中の保険者(健康保険組合、共済組合等。国民健康保険ご加入の方はお住まいの自治体)やお住まいの地域を所管する福祉事務所(医療扶助を受けている場合等以下同じ)において、あなたのマイナンバーに紐づく資格情報の登録が完了していない。
  2. 旧保険者(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合等。国民健康保険ご加入の方はお住まいの自治体)やお住まいの地域を所管する福祉事務所において、あなたのマイナンバーに紐づく資格情報について更新(喪失処理)が完了していない。

1. の場合、会社等にお勤めの方は現在加入中の健康保険組合にお勤め先を介してご確認ください。それ以外の方はお住まいの市区町村や福祉事務所へお問い合わせください。
2. の場合、更新が完了するまで今しばらくお待ちいただくか、旧保険者や福祉事務所にお問い合わせください。

出典:マイナポータル(https://myna.go.jp/

Q.健康保険証や医療券・調剤券はいつから使えなくなりますか。

A.現行の健康保険証は令和6年12月2日に廃止となりますが、廃止後も最長1年間の猶予期間があります。また、マイナンバーカードを保有していない方も医療機関で保険診療を受けられるよう、健康保険組合などの保険者から資格確認書が発行されます。なお、資格確認書の有効期間は5年です。
医療券・調剤券については、急迫した事由その他やむを得ない事由がある場合は紙の医療券・調剤券の運用を継続することとしています。

出典:マイナポータル(https://myna.go.jp/

Q.マイナンバーカードを持参すれば、健康保険証等がなくても医療機関等を受診できますか。

A.オンライン資格確認が導入されている医療機関・薬局では、マイナ保険証を持参すれば健康保険証等がなくても利用できます。
オンライン資格確認が導入されていない医療機関・薬局では、引き続き健康保険証等が必要です。

出典:マイナポータル(https://myna.go.jp/

Q.子どもの場合、本人が顔認証付きカードリーダーを操作できない場合はどうするのですか。

A.子ども等、本人が窓口で本人確認を行うことが難しい場合には、親等の代理人が子ども等のマイナ保険証をカードリーダーに置き、暗証番号を入力することで、本人確認をすることができます。
※ 待合スペース等にいる子どものお顔とマイナ保険証の写真を職員が目視で確認する本人確認も可能です。

出典:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/

Q.「電子証明書(利用者証明用電子証明書)の有効期限が3ヶ月以内に切れる」と表示されました。どうすれば良いですか。

A.マイナ保険証利用に必要なデータはマイナンバーカードの電子証明書に書き込まれていますので速やかに住民登録のある市区町村窓口にて更新手続きをしてください。
なお、電子証明書の再発行と更新手続きはオンラインではできません。

出典:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/

Q.「電子証明書(利用者証明用電子証明書)が失効しています」と表示されました。どうすれば良いですか。

A.電子証明書の有効期限切れによりマイナンバーカードでの資格確認ができないため、健康保険証をお持ちの場合には、ご提示をお願いいたします。健康保険証をお持ちでない場合には、被保険者資格申立書の記入をお願いいたします。
また、マイナンバーカードの住民登録のある市区町村窓口にて電子証明書の再発行手続きをしてください。
なお、電子証明書の再発行と更新手続きはオンラインではできません。

出典:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/

よくある質問参考サイト

マイナ保険証のメリットいろいろ

マイナ保険証で医療機関に受診した際に、自身の薬の履歴、過去の特定健診の情報等の提供に同意することで、医師等からより多くの正確な情報に基づいた総合的な診断や、重複する投薬を回避した適切な処方を受けることができます。
また、医療費が高額になる場合、高額療養費制度で自己負担分を超えた額を健康保険から支給してもらうためには、保険者から発行される「限度額認定証」を医療機関の窓口に提出する必要があります。マイナ保険証を利用する場合は、申請に必要な情報の提供に同意すれば、自動的に計算され、自己負担額だけの支払で済みますから、限度額認定証を申請する必要がありません。なお、「情報の提供に同意」は、利用画面のチェック欄に入力することで完了します。
以上の医療関係のさまざまな個人情報は、同意しなければ紐づけられません。



高志会から一言

「高志会」は、意欲と熱い気持ちを持った社会保険労務士の集まりです。メンバー全員が能力と収入をアップさせて、令和の時代を勝ち抜いていきます。「できる(社会保険労務士業務・コンサルティング)」は当然として、「しゃべれる(講座 ・ 講演)」、「書ける(本や雑誌の原稿)」の3拍子そろった社会保険労務士を目指して日夜、スキルアップに励んでいます。

この記事の執筆者

社会保険労務士「高志会」

大野 剛一郎(おおの こういちろう):ちよだ中央経営労務管理事務所 代表
深田 康弘(ふかだ やすひろ):社会保険労務士法人オーバルブレイン 代表社員
木村 晃子(きむら あきこ):木村社会保険労務士事務所 代表
守屋 三枝(もりや みえ):守屋社会保険労務士事務所 代表

*本記事は上記4名による共同執筆となります。

<監修者>
橋本 敬司(はしもと けいじ):社会保険労務士法人CANAL 代表社員
飯野 正明(いいの まさあき):Be Ambitious社会保険労務士法人 代表社員