2024年4月1日改正!裁量労働制導入の手続き
2024/03/21 10:00
裁量労働制とは、デザイナーやコピーライター等法令で指定された業種において、実際の労働時間にかかわらず労働者自らに労働時間や業務の段取りなどを決めさせることにより、労使協定等で定める時間数の労働をしたものとみなすことができる制度です。
裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制があり、2024年4月1日よりこれらの裁量労働制の導入の手続きが変更になります。最近では、専門業務型裁量労働制を採用している企業が多く見られますので、今回は、専門業務型裁量労働制(以下「専門型」という。)の導入の手続きの変更について記載していきます。
なお、専門型については、今回の改正で、指定業種として「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務」(いわゆるM&Aの業務)が新たに追加されますので、こちらも併せてご確認ください。
専門型の導入の手続きにつきまして、2024年4月1日からは、以下の事項を追加した労使協定の締結が必要になります。
1 本人の同意
2 同意しなかった場合の不利益取扱いの禁止
3 同意撤回の手続き
4 同意および同意の撤回の労働者ごとの記録の保存
上記内容について、細かい点を以下に記載していきます。
1 本人の同意
現行では、労働者の同意は必要ありませんが、今後は専門型の適用を受けることについての労働者本人の同意を得ることを協定しなければなりません。また、労働者本人の同意は、労働者ごとに、かつ労使協定の有効期間ごとに得られるものであることが必要であり、就業規則による包括的な同意は、「個別の同意」に当たらず認められません。
なお、労働者本人の同意については、口頭のみではなく、書面や磁気的記録など確実な方法で取得することが適切です。専門型の同意取得に際しての制度の概要などの説明についても、労働者が自身に適用される制度内容などを十分に理解、納得した上で同意を行うことが必要であり、口頭のみではなく、書面や電磁的記録を用いる方法により説明することが適切とされています。
以下に、厚生労働省が紹介している労使協定の記載例(一部)および各書面の記載例を掲載しますので参考にしてください。
■労使協定の記載例
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第○条 制度を適用するに当たっては、使用者は、事前に本人の同意を得なければならない。本人の同意を得るに当たっては、使用者は、専門業務型裁量労働制の制度の概要、制度の適用を受けることに同意した場合に適用される賃金・評価制度の内容並びに同意しなかった場合の配置及び処遇について、労働者に対し、明示した上で説明するものとする。
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■本人同意を得るに当たって労働者に明示する書面(説明書)の記載例
出典:厚生労働省PDF「専門業務型裁量労働制の解説」より(https://www.mhlw.go.jp/content/001166653.pdf)
※同意した場合または不同意の場合の賃金・評価制度の内容を記載することは義務ではありませんが、労働者の同意を得るためにも記載されることをお勧めいたします。
■専門型の適用に関する同意書面(同意書)の記載例
出典:厚生労働省PDF「専門業務型裁量労働制の解説」より(https://www.mhlw.go.jp/content/001166653.pdf)
2 同意しなかった場合の不利益取扱いの禁止
専門型の適用に同意をしなかった労働者に対して解雇その他不利益な取り扱い(賃金の減額、降格等の労働条件についての不利益な取り扱い)をしてはならないことを協定しなければなりません。
■労使協定の記載例
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第○条 使用者は、本人が同意をしなかった者に対して、同意をしなかったことを理由として、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない。
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3 同意撤回の手続き
適用労働者の同意の撤回に関する手続きを協定しなければなりません。労使協定に当たっては、撤回の申出先となる部署および担当者、撤回の申出の方法等その具体的内容を明らかにすることが必要です。
また、適用労働者が同意を撤回した場合の配置および処遇について、同意の撤回を理由として不利益に取り扱うもの(賃金の減額、降格等の労働条件についての不利益な取り扱い)であってはなりません。
■労使協定の記載例
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第○条 適用労働者の同意の撤回は、次の手続に従い、行うものとする。
(1)同意の撤回の申出先は次のとおりとする。
場所:総務部総務課
担当者:○○○○
(2)会社所定の撤回申出書に必要事項を記入の上、申し出ることとする。
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■同意の撤回書面の記載例
出典:厚生労働省PDF「専門業務型裁量労働制の解説」より(https://www.mhlw.go.jp/content/001166653.pdf)
4 同意および同意の撤回の労働者ごとの記録の保存
使用者は、同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を労使協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存することを協定し、作成・保存しなければなりません。なお、記録の保存については、「同意および同意の撤回」の他に以下の内容も求められています。
① 適用労働者の労働時間の状況
② 適用労働者の健康・福祉確保措置の実施状況
③ 適用労働者からの苦情処理に関する措置の実施状況
労使協定の追加事項は以上になりますが、現在、裁量労働制を導入している事業場については、2024年3月末までに新しい労使協定を締結の上労働基準監督署に労使協定届の届出を行う必要があります。労使協定届の様式(以下URLをご参照ください。)も変更になりますので早めに検討していきましょう。
≪労使協定届の参考サイト≫
厚生労働省「専門業務型裁量労働制に関する協定届」
https://www.mhlw.go.jp/content/001162906.pdf
高志会から一言
「高志会」は、意欲と熱い気持ちを持った社会保険労務士の集まりです。メンバー全員が能力と収入をアップさせて、令和の時代を勝ち抜いていきます。「できる(社会保険労務士業務・コンサルティング)」は当然として、「しゃべれる(講座 ・ 講演)」、「書ける(本や雑誌の原稿)」の3拍子そろった社会保険労務士を目指して日夜、スキルアップに励んでいます。
この記事の執筆者
荒 久美子(あら くみこ)
日比谷ステーション社労士事務所 代表
特定社会保険労務士
社労士「高志会」のメンバー
大学卒業後、大手電力会社に勤務
社会保険労務士の資格を取得後、都内社会保険労務士法人に勤務し、2014年に日比谷ステーション社労士事務所を開業
現在は、労働社会保険諸法令関係の手続きや給与計算を中心に、労務管理のサポートを行う。「常に丁寧に」を念頭に、あらゆる視点から様々なご提案ができるよう、アンテナを立て感覚を磨きながら日々を過ごしている
【事務所HP】https://www.lawcenter-sr.jp/
この記事の監修者
大畑 雅弘(おおはた まさひろ)
大畑社会保険労務士事務所 所長
有限会社マネジメント・ナビ 代表
特定社会保険労務士
社労士「高志会」のメンバー
1987年法政大学卒
金融会社、会計事務所、コンサルタント会社勤務後、1995年9月「大畑社会保険労務士事務所」開設
開設当初より、公的保険の手続き、給与計算事務、労務管理相談に携わっているが、現在は、組織の承認力向上を図ることによって、売上を倍増させて労使ともに笑顔になれる『いい会社』作りを支援中
【事務所HP】https://www.sr-ohata.com/
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