賞与支払届の電子申請(e-Govやマイナポータル)を行うために必要な手続きについて

2023/11/27 10:00

社会保険の手続きを電子申請してみたいけれど、何から準備をしたらよいのかわからない。
そんな方にこの記事を読んで社会保険の電子申請のことを少しでも知っていただければと思います。

目次

電子申請は24時間申請できる便利なシステム!

「e-Gov申請」と「マイナポータル申請」の違い
Ⅰ.e-Gov申請
Ⅱ.マイナポータル申請(外部連携API利用)

電子申請をするために事前準備すること
~「電子証明書」または「GビズID」の取得~
■ 電子証明書でできること
■ 電子証明書:取得方法
■ GビズIDでできること
■ GビズID:取得方法

e-Gov申請で「健康保険・厚生年金保険被保険者 賞与支払届」を提出するための事前準備
~届書作成プログラムのインストール~
~e-Govの利用準備の設定~
~賞与支払届のCSVデータの作成~
~e-Govにログインをして実際に申請をしてみよう~

おわりに

 

電子申請は24時間申請できる便利なシステム!

電子申請は行政の手続きコスト削減のために作られたシステムであり、オンラインで24時間申請することができます。現在は、社会保険だけでなく、税金等さまざまな手続きが電子化されるようになりました。その一環として令和2年4月から資本金の額が1億円を超える等の※特定の法人が社会保険に関する一部の手続きを行う場合は電子申請することが義務化されています。

出典:日本年金機構PDF「2020年4月から特定の法人※について 電子申請の義務化が始まっています。」より(https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/denshishinsei/20210401.files/gimuka.pdf

現在義務化の手続きは以下の3つです。

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者 報酬月額算定基礎届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者 報酬月額変更届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者 賞与支払届


手続きを電子化することで企業側も、行政の窓口に直接出向く手間や、郵送代などのコスト削減になるため最近では電子申請を行う企業が増えています。
賞与支払届等の電子申請は、日本年金機構が提供する「届書作成プログラム」の他、「e-Gov」や「マイナポータル」でも行うことができます。この記事では「e-Gov」と「マイナポータル」の違いや、e-Govを利用した健康保険・厚生年金保険被保険者 賞与支払届の申請方法を紹介します。

 

「e-Gov申請」と「マイナポータル申請」の違い

Ⅰ.e-Gov申請

e-Govは総務省管轄の行政情報のポータルサイトで、「電子政府の総合窓口」とも呼ばれています。各府省がインターネットを通じて提供する行政情報の総合的な検索・案内サービスの提供や、オンライン申請・届出等の手続きの総合窓口です。e-Govの目的は、国の各府省の電子申請・届出などの案内・受付窓口を一元化することであり、法令や行政文書の確認や、さまざまな行政機関に対する電子申請や届出ができます。

≪参考≫
e-Govポータル(トップページ)

Ⅱ.マイナポータル申請(外部連携API利用)

マイナポータルはデジタル庁がインターネットのウェブサイトを通じて、個人の子育てや介護などの行政手続きの検索、オンラインでの申請などをワンストップのサービスで提供するオンライン窓口です。マイナポータルを利用した企業が行う社会保険の電子申請は、マイナポータルにアクセスするだけでは手続きすることができません。マイナポータル申請ができる人事・給与システムとマイナポータルのAPI連携が必要になります。
また健康保険組合の一部はマイナポータル申請に対応しています。

≪参考≫
マイナポータル(トップページ)
マイナポータルで使用できる外部連携API(社会保険・税手続申請API サービス一覧)

出典:マイナポータルAPI 仕様公開サイトより(https://myna.go.jp/html/api/tetsuzukishinsei/index.html


マイナポータル申請ではシステム同士がAPI連携していることが前提のため、人事・給与システムを導入していない場合はe-Govにて申請を行います。
また、どちらの申請であっても「電子証明書」または「GビズID」の取得が必要です。
これらの取得方法も確認しましょう。

 

電子申請をするために事前準備すること

~「電子証明書」または「GビズID」の取得~

社会保険の手続を電子申請で行うためには会社(個人事業主の場合は個人)の証明書である「電子証明書」または「GビズID」の取得をします。どちらであっても、e-Gov申請、マイナポータル申請は可能です。それぞれでできることと、取得の方法について見ていきましょう。

■ 電子証明書でできること

電子証明書とは、電子申請の際、申請者が送信する電子データが原本であること、改変されていないことを証明するためのもので、実印に相当するものです。社会保険の手続きは、賞与支払届のほか、数多くの手続きを行うことができます。

出典:法務省民事局PDF「商業登記電子証明書 は・じ・め・て ガイド」より(https://www.moj.go.jp/content/001364325.pdf

取得することで以下のような業務の電子申請が可能です。

手続き例)

  • 商業登記や法人登記などの登記申請手続き
  • e-Taxを利用した確定申告手続き
  • eLTAXを利用した地方税電子申告手続き
  • 社会保険・労働保険関係手続き
  • 特許のインターネット出願
  • 自動車保有関係のワンストップサービス
  • 総務省電波利用電子申請・届出サービス
  • 防衛装備庁電子入札開札システム
  • オンラインによる支払い督促手続き
  • 府省共通の電子調達システム
  • 電子自治体における各種の申請・届出システム など

≪参考≫
法務省 電子証明書取得のご案内
日本年金機構 電子申請対象申請書等一覧表

■ 電子証明書:取得方法

電子証明書を入手するためには、事前に認証局と呼ばれるところで電子証明書の発行を受ける必要があります。電子証明書の認証対象が「法人のみ」、「法人と個人」とありますので、取得する場合は法人として取得するか、個人事業主として取得するかを確認して認証局を選択します。
また、電子証明書を取得するためには、事前に用意する書類や申請費用が発生します。取得する予定の認証局のサイトでよく確認をしてから申し込みましょう。

≪参考≫
日本年金機構 【社会保険関係手続の電子申請で利用可能な電子証明書(認証局)一覧】

■ GビズIDでできること

GビズID(ジービズアイディー)は、法人・個人事業主向け共通認証システムです。ひとつのアカウント(ID・パスワード)で、複数の行政サービスにログインできます。GビズIDには、gBizIDプライム、gBizIDメンバー、gBizIDエントリーという3種類のアカウント(ID・パスワード)があり、サービスによって必要なアカウントが異なります。取得することで以下のような業務の電子申請が可能です。
ただしgBizIDエントリーでは利用できない行政サービスが多いため、ここではgBizIDプライムとgBizIDメンバーについてご紹介します。

≪参考≫
GビズID(トップページ)
GビズIDで利用できる行政サービス一覧(省庁・自治体)

出典:デジタル庁PDF「GビズID クイックマニュアル gBizIDメンバー編」より(https://gbiz-id.go.jp/top/manual/pdf/QuickManual_Member.pdf

■ GビズID:取得方法

GビズIDの取得はデジタル庁のホームページから行います。
「gBizIDプライム」は法人代表者もしくは個人事業主のアカウントです。「gBizIDメンバー」は総務部長等の企業の従業員(申請代理人)のアカウントであり、gBizIDプライムの利用者が自身のマイページより作成するアカウントとしてgBizIDプライムが許可したサービスのみ利用可能です。

出典:厚生労働省PDF「令和5年より電子申請の方法が変わります」より(https://www.mhlw.go.jp/content/001077131.pdf

どちらのアカウントも無料で取得できますが「gBizIDプライム」の発行申請には、印鑑証明書・印鑑登録証明書を取得し、郵送して審査を受ける必要があります。(申請書類がGビズID運用センターに到着した後、不備がなければ原則として2週間程度で発行されます。)

※電子証明書とGビズIDで電子申請が義務化された手続きは可能ですが、社会保険、労働保険ともに電子申請できる手続きの種類に違いがあります。会社で申請をする手続きが、取得した証明書等で対応することができるかを確認して取得するようにご注意ください。

 

e-Gov申請で「健康保険・厚生年金保険被保険者 賞与支払届」を提出するための事前準備

電子証明書またはGビズIDのどちらかを準備することができたら、いよいよ社会保険の電子申請が可能になります。
ここではe-Govを利用した「健康保険・厚生年金保険被保険者 賞与支払届」の電子申請の手順を紹介します。

~届書作成プログラムのインストール~

届書作成プログラムとは、その名の通り、届書を簡単に作成・申請できるプログラムです。日本年金機構のHPから無料でダウンロードすることができます。
主な機能は、届書の作成、届書の申請、申請状況の照会です。この届書作成プログラムからも電子申請はできますが、e-Gov申請やマイナポータル申請の場合は、CSVファイルの作成や、作成したCSVファイルに環境依存文字などのデータエラーがないかチェックするための利用も可能です。

≪参考≫
日本年金機構 CSVファイル添付方式により申請できる届書について

~e-Govの利用準備の設定~

e-Govでの電子申請の利用準備は①→②→③の順に行います。

出典:e-Gov電子申請サイトより(https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation

①アカウントのうち、以下3つのいずれかでログインをします。電子証明書を取得した場合はe-Govアカウント(無料)を作成しましょう。
・e-Gov アカウント
・GビズID
・Microsoft アカウント

②ブラウザの設定ではポップアップブロックを解除や「信頼済みサイト」に登録等を行います。

③使用するパソコンがWindowsかMacか選択をして「e-Gov電子申請アプリケーション」をインストールします。

≪参考≫
e-Gov電子申請 利用準備

~賞与支払届のCSVデータの作成~

e-Govを利用した電子申請では賞与支払届のCSVデータを添付して申請を行うことができます。
給与ソフト等を利用している場合、ソフト内でCSVファイルの作成も可能ですが、データが正しく作成されているかチェックを行う必要があります。エラーが出ると、電子申請をしても「返戻」といい、データ不備で審査してもらえません。そのためデータを人事・給与ソフト等で作成した時は、必ず届書作成プログラムにて仕様チェックを行いましょう!

なお、『PCA 給与』でCSV添付方式用のデータを作成する方法は、こちらで確認できます。
賞与支払届を電子申請するにはどうすればいいですか。

~e-Govにログインをして実際に申請をしてみよう~

e-Govにアクセスし、取得したアカウントでログインをします。


次にアプリケーションを起動します。


次に手続検索で「賞与支払届」等と手続きしたい帳票の名称を入力します。


帳票の選択の後、申請者情報画面が出てきますので、アカウントに紐づく申請者情報を入力します。


申請者情報の次は、帳票のCSV形式届書総括票の入力を行います。(CSV形式届書総括票には、電子申請用ファイルにある届書毎の件数や作成年月日、事業所の名称、所在地等の情報を入れます。)


総括票の入力画面の下には添付書類追加欄がありますので、給与ソフトや届書作成プログラムで作成したCSVファイルをこの画面内に添付します。


最後に提出先の年金事務所を選択し、内容を確認して申請を行います。


申請が完了した後は、マイページにて審査状況(到達、審査中等)を確認することができます。
手続きが完了した後は、公文書のダウンロードが可能です。取得できる期限が決まっていますので、忘れずにダウンロードをして大切に保管しましょう。

 

おわりに

電子申請の手続きの方法として今回はe-Govでの申請手順をご紹介させていただきましたが、マイナポータル申請や届書作成プログラムを使用した場合には電子申請の方法が異なります。会社の使用する人事・給与システムを確認して自社に合った手続き方法で電子申請に是非チャレンジしてみてください。

 


高志会から一言

「高志会」は、意欲と熱い気持ちを持った社会保険労務士の集まりです。メンバー全員が能力と収入をアップさせて、令和の時代を勝ち抜いていきます。「できる(社会保険労務士業務・コンサルティング)」は当然として、「しゃべれる(講座 ・ 講演)」、「書ける(本や雑誌の原稿)」の3拍子そろった社会保険労務士を目指して日夜、スキルアップに励んでいます。

この記事の執筆者

吉留 紗由理(よしとめ さゆり)

YSR労務オフィス 代表
社会保険労務士
社労士「高志会」のメンバー

広告代理店の総務人事を経て平成22年社会保険労務士開業登録をしました。自身が子育てをしながら開業したこともあり、顧問先の企業に対しては、女性が長く働ける環境作りの提案をはじめ、パートタイム労働者の正規雇用化支援などを積極的に行っております。
また社労士を沢山の人に知ってもらいたいとの想いから学校教育にも力を入れており小学校~大学までの学生を対象に出前授業等も行っています。
【事務所HP】https://ysr-office.com

この記事の監修者

朝比奈 睦明(あさひな むつあき)

朝比奈・川﨑社会保険労務士法人 代表社員
特定社会保険労務士
社労士「高志会」のメンバー

大学を卒業後、社労士事務所に10年間勤務し、2000年4月に独立開業して現在に至る。開業後は、就業規則の作成業務を中心に賃金・退職金制度の構築などを通してIPO(新規株式公開)支援業務にも労務管理の専門家として携わる。
また、「労働集約型事業」のお客様が多く、労使紛争や労働災害など様々な労務管理に関する相談に応じる日々を過ごしている。
【事務所HP】https://sr-asahina.jp