今さら聞けない旬ワード「エシカル消費」

2023/12/05 10:00

新聞やニュース、ウェブサイトなどで当たり前のように使われているけれど、じつは正確な意味を知らない言葉。そんな「旬ワード」をご紹介するコラムです。SDGsや地球環境保護といった、大きなテーマと関連付けて目にする機会も多い「エシカル消費」について解説します。

【問い】あなたのエシカルな買い物はなんですか?

【ヒント】商品についている生産国やエコマークなどの表示を見てみましょう

SDGsとの親和性も高い、世界を視野に入れた行動原理

エシカル(倫理的・道徳的)消費とは、人や社会、地域、環境などに配慮した消費行動のこと。消費者庁では、「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと」と定義しています。

その源流となったのは、消費者の行動によって企業にエシカルな経営と製品の生産、提供をさせることを目指して、1989年に英国で創刊された「ethical consumer」という雑誌と言われています。

それを世界的なトレンドへと押し上げるきっかけとなったのが、2015年9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)です。2030年の達成を目指す17の目標の中でも、エシカル消費は12番目の「持続可能な生産・消費形態の確保(つくる責任 つかう責任)」の内容に近く、誰もが参加できて分かりやすいアクションとして、注目されることになりました。

じつは日本の行政のエシカル消費への取り組みはそれより早く、2015年5月には消費者庁が「倫理的消費」調査研究会を立ち上げて、エシカル消費を推進する枠組みをはじめとする、様々な検討を始めています。同庁の2016年の消費者意識調査では、日本の消費者の約6割が「エシカルな製品を購入したい」と考えていることが明らかにされています。

手にした商品の背景に思いを馳せる

そうは言っても、自分がエシカルな消費をするにはどうすればいいのか、よくわからない人もいるかもしれませんね。じつは難しいことではありません。

デパートや商店街であれこれ品定めしながらのショッピングは、誰でも楽しいもの。欲しかったモノをついに手に入れた喜びはひとしおだし、思いもかけない掘り出し物に出会えた偶然には、感謝したくなります。

その時あなたはどのような基準で商品を選んでいるでしょうか。価格や品質、性能に経済性、デザインや味、資産価値や希少性……。人それぞれに、重視するポイントは違うでしょう。個人的な買い物は、百人いれば百通りの価値観が許される、自由な表現の場でもあります。自身の価値観を商品によって肯定することで、心を満たす行為でもあるかもしれません。

しかし、もしも自身の選んだ商品が誰かの犠牲や、社会や地球環境の悪化や劣化と引き換えに生まれたモノだとしたらどうでしょう。あなたは喜んで、それを使ったり人に見せびらかしたりできるでしょうか。

自分ごととしてのエシカル消費とは、ふだんの買い物でもそんな風に、自分が手にした商品の背景に、ちょっとだけでも思いを馳せてみることなのです。

安価を実現するために、貧しくて学校に通うこともできない子供たちの手で収穫された原材料で作られた輸入食品や衣料品ではないか気にしてみる。遠い産地より、生産者の顔が見える地元産の野菜を選ぶ。無駄な買い物をしないように、冷蔵庫の中にある、まだ賞味期限を迎えていない食品を確かめてからお店に向かうのも、れっきとしたエシカル消費です。

そうした消費行動を、日本人は昔から実践してきました。外国語にはない「もったいない」という言葉は、その証明のひとつです。食品は旬を新鮮に味わう生食から漬物や肥料まで、調理や保存方法を工夫しながら、最後まで食べ・使いつくす。衣料品はよそ行きから普段着、おむつや雑巾まで、繕いながら形を変えて使い切る。どちらも、世界に誇れるエシカル消費の伝統です。

商品を提供する企業においても、日本には昔からエシカルな姿勢がありました。江戸時代の近江商人が掲げていた「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の考え方がまさにそれです。

素材を無駄にせず、いいものを作り、客に喜ばれることで、自分が儲かる。関わる全員が幸せになれる、立派なエシカル消費のロールモデルだったのです。

原料から製品の流通までがグローバル規模でなされる現代では、三方よしのビジネスはなかなか目に見えません。そこで現代の消費者が注目すべきは、商品にタグやラベルなどで表示された原産地や生産地などの情報や、フェアトレード認証、エコマークなどの公的な機関による表示です。

そうそう、その前に、マイバッグを持ち歩き、コンビニやスーパーで受け取るビニール袋を減らすところから始めましょう。エシカル消費は誰にでも、どこででも可能な、地球や社会への貢献なのです。

この記事の執筆者

横田 晃(よこた あきら)

ライター

アニメーション雑誌を皮切りに、自動車雑誌や男性誌の編集者として多くの新雑誌やヒット企画の立ち上げに参画。94 年に独立後も、芸能インタビューから政治経済まで、幅広いジャンルの企画・制作・執筆に携わる。