休憩だけじゃもったいない!
おもしろ系サービスエリアパーキングエリアの旅「東北自動車道・鬼平江戸処(羽生パーキングエリア上り線)」

2021/09/01 00:00

■PSS会報誌 2021年 秋号(2021.09.01発行)に掲載された記事です。現在の情報とは異なる場合があります■

新型コロナウイルスのワクチン接種も終えて、この秋のお出かけを楽しみにしている人も多いでしょう。
不安な日々をようやく終えた肩慣らしの行楽には遠出だけでなく、身近なスポット巡りもお勧め。
遊び心を盛り込んだ最近の高速道路のサービスエリア/パーキングエリアは想像のナナメ上を行く完成度であなたを迎えてくれますよ。

駐車場から数歩歩けば、そこは江戸の目抜き通り。店の屋号は「鬼平犯科帳」の作品中に登場する

「鬼平犯科帳」の世界観を忠実に再現して話題を呼んだ「鬼平江戸処」

時代小説ファンではなくとも、故・池波正太郎氏のベストセラー、「鬼平犯科帳」をご存じの方は多いでしょう。
江戸時代に実在した型破りな火付盗賊改方長官、鬼の平蔵こと長谷川平蔵の活躍を描いた作品は、1968 年に単行本第一巻が発売されて以来、シリーズ累計3000 万部を売り上げています。単行本化翌年の1969 年に早くもテレビドラマ化されて以降、舞台や映画、マンガやアニメ化もされてきました。

作者である池波氏の生誕90 周年となる2013 年に、その世界観を忠実に再現して話題を呼んだのが、東北自動車道羽生パーキングエリア(上り線)。その名も「鬼平江戸処」です。

所在地は埼玉県ですが、そこはまんま江戸の街。民俗学者の神崎宣武氏監修の元、アートディレクターの相羽高徳氏がデザインした日本橋大通りの街並みに立つと、鬼平が闊歩していた文化文政時代(1804 ~ 1829 年)にタイムトリップしたかのような気分が味わえます。

作中に登場する屋号の看板を掲げた建物はすべて新築ですが、しっくい壁のカビや雨だれの跡といった古い建物の特徴がリアルに再現され、気をつけて見ると物騒な刀傷が表現された柱もあります。

売店スペースは、江戸時代には庶民的な繁華街だった両国広小路をイメージ。パーキングエリアの本来の主役であるフードコートも、「鬼平犯科帳」に登場する軍鶏料理屋「五鉄」を再現しています。

日本橋人形町で1760 年から続く老舗鶏料理店「玉ひで」の監修により、特製の軍鶏鍋や開発に3 年を費やした一本うどんなど、ここでしか味わえないこだわりの料理を提供する「五鉄」のほか、池波氏がこよなく愛した1884年創業の老舗「神田まつや」の監修により、江戸のそばを現代に引き継ぐ「本所さなだや」など、作品の世界観を楽しめる飲食店がラインナップ。売店にも、作品にちなんだオリジナルのお土産や老舗の銘菓が並びます。

施設にほど近い埼玉県久喜市には、かつて栗橋関所とも呼ばれた房川渡中田関所があり、日光街道を往来する入り鉄砲と出女に目を光らせていたそうです。それにもちなんでこの地に設けられた「鬼平江戸処」は、池波ファンはもちろん、歴史好きにも楽しめることでしょう。

 

建物の中に出現するもうひとつの街並みは、江戸の庶民でにぎわった両国広小路を再現
土産物が売られる屋台連も、当時の繁華街のそれを細部まで表現している

この記事の執筆者

横田 晃(よこた あきら)

ライター

アニメーション雑誌を皮切りに、自動車雑誌や男性誌の編集者として多くの新雑誌やヒット企画の立ち上げに参画。94 年に独立後も、芸能インタビューから政治経済まで、幅広いジャンルの企画・制作・執筆に携わる。